投稿日:2022/06/17
更新日:2022/06/18
近年、飲食店の経営権を譲渡したいという経営者が増えています。
買い手は飲食店を譲り受けることで開業の初期費用を抑えられるため、売り手と買い手ともにニーズが高まっています。
では、飲食店の経営権を譲渡するためにはどのような方法があるのでしょうか?
この記事では、飲食店の経営権を譲渡する方法や成功させるポイント・高値で売却するコツなどを紹介します。
目次
飲食店の経営を第三者に承継する方法は、大きく分けて株式譲渡と事業譲渡に分けることが可能です。
加えて、頻繁に勘違いされるものとして、造作譲渡や居抜きなどが挙げられます。
まずは、それぞれの違いについて解説します。
経営権の譲渡は、買い手企業に株式を譲渡する事によって行います。
飲食店を運営している会社や、株式による運営を行っている企業にとっては、最も多い承継方法といえるでしょう。
株式会社ではない個人事業主などが事業を売却するには、事業譲渡による承継が一般的です。
運営方法や譲渡の目的に合わせて、適切な承継方法を選ぶことが大切です。
経営権の譲渡は株式の売買によって行なうため、事業譲渡と比較するとスムーズに行うことができます。
経営者が入れ替わるだけですので、企業自体に大きな変化が生じることはありません。
必要な手続きも事業譲渡より少ないため、時間が取れない経営者でも事業承継を行いやすいというメリットがあります。
株式を譲渡する場合は、自社が抱えている負債も買い手企業に引き継がれます。
買い手企業は買収によるリスクを抑えたいため、負債がある場合は承継が難航するでしょう。
経営権を譲渡する際は、自社が負債を抱えていても魅力的に感じるようなメリットを提供するのが大切です。
また、株式が分散している場合は、集約に大きな手間がかかります。
経営権を譲渡する場合は、事前に株主の情報をまとめておきましょう。
事業譲渡とは、会社が運営している事業を第三者に譲渡することをいいます。
株式譲渡は株式の売却を行うことで事業を承継しますが、事業承継は譲渡するものを選択するという違いがあります。
譲渡するものは、会社が所持している設備などの有形資産、人材やノウハウなどが挙げられます。
それぞれの売却価格を選定する必要があるため、買い手との詳細な交渉が必要です。
事業譲渡には、株式を用いて運営している企業ではなくても、譲渡が行えるというメリットがあります。
個人事業主として飲食店を経営している方にとって、事業承継は有効な手段といえるでしょう。
また、事業承継を行う際は、事業の一部を譲渡することも可能です。
複数の店舗を運営している場合、一部の店舗を売却することで事業の集中化を図ることができます。
飲食店と異なる事業を行っている場合であれば、飲食店運営を他企業に任せることで、核とする事業に資金を回すこともできるでしょう。
譲渡された企業に調理方法などの引き継ぎができていないと、売却後の経営が上手くいかず廃業してしまう恐れがあります。
売却後に飲食店を潰さないためにも、事業承継をする際は調理のノウハウを明確にしておきましょう。
買い手企業が買収後も運営しやすい環境を作っておくことで、交渉をスムーズに行える可能性も高まるかもしれません。
また、事業譲渡は株式譲渡と比較すると、手間や時間がかかるというデメリットもあります。
造作譲渡とは、設備を残したままテナントを引き継ぐ契約のことです。
設備や内装が残っている状態の物件は、居抜き物件と呼ばれています。
居抜き物件を売る側は撤去費用を抑えられ、購入する側は設備の投資額を抑えられるという利点があります。
飲食店では開業するために膨大な資金がかかるため、飲食店を新たに開業しようと考えている買い手にとっては大きなメリットといえるでしょう。
飲食店が経営権などを譲渡する理由は、主に以下の5つが挙げられます。
ここでは、株式譲渡や事業譲渡などが行われる理由について個別に解説します。
現在、後継者がいないことで事業の継続ができなくなり、廃業を行う企業が多く見られます
飲食店の経営は小規模でも行うことができるため、後継者がという方も多くいるでしょう。
身内や従業員が事象を承継できない場合は、株式譲渡や事業譲渡によって後継者を選定することが可能です。
近年では、第三者を後継者にすることで事業の存続を図るケースが増え続けています。
自分が積み上げてきたノウハウが無駄にならず、店舗が残り続けることは飲食店の経営者にとっては望ましいことだといえるでしょう。
飲食店を経営していく上で、いちばん大切なことは利益の確保です。
飲食店を経営するには、食材やテナント、従業員雇用などで多額の費用がかかります。
充分な利益が確保できなければ、廃業などの選択肢を取る必要もあるでしょう。
ただし、廃業をするにもさまざまな資金がかかるため、容易に行えることではありません。
そのような問題の解決方法として、株式譲渡や事業譲渡が挙げられます。
経営権や事業を譲渡することで、資金を獲得しながら運営を第三者に任せることができます。
利益の確保が望めない場合は、第三者への譲渡を検討してもよいでしょう。
飲食店が一定地域に密集してしまうと、顧客が別のお店に流れてしまうこともあるでしょう。
飲食店は参入障壁が低いこともあり、近隣に別のお店ができることで、顧客の数が減少することは頻繁にあると考えられます。
顧客の減少によって利益が得られなくなった場合は、店舗運営を第三者に譲渡することで、廃業から逃れることができます。
飲食に対してのノウハウがある企業に譲渡すれば、経営が安定する可能性もあります。
事業譲渡を行うと、経営者は売却利益を獲得することができます。
売却によって獲得した利益をもとに、新たな事業を立ち上げることもできるでしょう。
セミリタイアを狙っている場合、売却資金を運用して安定した生活を確保することもできます。
事業譲渡によって資金を獲得できることは、新たな生活をおくるための一助になるでしょう。
経営者が体調不良になった場合、休業をするか別の人物に運営を任せることになります。
飲食店の形態によっては、経営者がいなければ運営を行うのは困難でしょう。
一度体調が回復しても、原因によっては再度体調不良になることも考えられます。
経営が難しい場合は、後継者に事業を引き継ぐか事業譲渡によって後継者を見つける必要があります。
廃業と比較するとリスクが低いため、事情があり経営が難しくなった場合は、経営を別の人物に任せることを検討してもよいでしょう。
株式譲渡による経営権の譲渡と事業譲渡は、似ているようでさまざまな違いがあります。
状況や目的に合わせて、最適な方法を選びましょう。
ここでは、経営権の譲渡と事業譲渡の特徴について解説します。
経営権の譲渡は、株式を買い手に引き継ぐことで行うことができます。
必要な法的手続きも少ないため、譲渡にかかる時間や手間は事業譲渡よりも抑えることが可能です。
事業譲渡を行う際は、従業員や取引先との契約などが必要になるため、株式譲渡と比較すると時間がかかる傾向があります。
ただし、売り手と買い手の交渉によって譲渡にかかる時間は異なります。
必ずしも株式譲渡のほうが早いわけではないので注意しましょう。
株式を相手に譲渡する際は、売り手企業が抱えている負債も引き継ぐことになります。
買収後に負債が発覚したなどとならないように、買い手企業は慎重に株式を取得する必要があります。
事業譲渡では、引き継ぐ内容を選定できるため、買収する企業の負債を引き継ぐことはありません。
事業譲渡のほうが買い手側に生じるリスクが少ないため、買い手が見つかる可能性は高くなるでしょう。
事業譲渡を行う際は、買い手に事業の一部を引き渡すことができます。
一方、経営権の譲渡は事業の全てを引き渡すため、売却価格は事業譲渡よりも高くなる傾向があります。
ただし、売り手企業が負債を抱えている場合や交渉の内容によっては、事業譲渡の方が売却価格が高くなることがあるため、一概にはいえません。
状況によって売却価格は異なるということを覚えておきましょう。
株式譲渡は事業の全てを買い手に引き継ぐのに対して、事業譲渡は事業の一部のみを引き継ぐことが可能です。
自社が事業の一部として飲食店を経営しており、他の事業に集中したいと考えている場合は、事業譲渡は有効な手段といえるでしょう。
運営する事業を取捨選択することで、別の事業の売上を伸ばせる可能性があります。
ただし、株式譲渡と比較すると事業譲渡は時間や手間がかかります。
状況に合わせて、最適な方法を選びましょう。
飲食店を第三者に譲渡する際には、抑えておきたいポイントが複数あります。
譲渡に失敗しないためにも、以下のポイントを把握しておきましょう。
ここからは、経営権の譲渡・事業譲渡を成功させるポイントを紹介します。
買い手に事業を引き継いだ後は、飲食店の運営を任せることになります。
経営していた飲食店に思い入れがある場合は、譲渡後に廃業してしまうことは避けたいでしょう。
事業を第三者に引き継ぐ場合は、信頼できる買い手を選定することが大切です。
買い手を選ぶ基準は買い手企業の経済状況や実績などが挙げられます。
ただし、実績などの目に見える情報だけに囚われてはいけません。
買い手と話し合い、信頼できる相手であるか見極めましょう。
飲食店の譲渡を行う際は、なぜ譲渡を行うのかを明確にしておきましょう。
買い手が見つからず焦ってしまうと、譲渡を行おうとした理由を忘れてしまう可能性があります。
焦って売却をすることで「自分が望んでいた売却利益が得られなかった」「事業を引き継いだ後にすぐ廃業してしまった」といった結果になるかもしれません。
このような失敗をしないためにも、譲渡を行う理由はあらかじめ明確にしておくことが大切です。
また、譲渡を行う理由を明確にしておくことで、買い手企業との交渉も進めやすくなるでしょう。
株式譲渡によって経営権を渡す際は、買い手企業側にリスクが無いことを伝える必要があります。
株式譲渡は売却側が抱えている負債も引き継ぐので、買い手企業は情報を求めてくるでしょう。
買い手企業に不信感を与えてしまっては、交渉が破綻してしまう可能性があります。
基本合意が締結されたあとは、買い手企業が求めてくる情報は正確に開示することが大切です。
また、株式譲渡に限らず、事業譲渡においても買い手からの信用を得ることは大事な要素です。
交渉をスムーズに進めるためにも、必要な情報は開示しましょう。
事業を第三者に引き継ぐ際は、自分が妥協できる部分・妥協できない部分をあらかじめ明確にしておきましょう。
経営権の譲渡・事業譲渡において、売却価格などは買い手との交渉によって決まります。
交渉をする際にはある程度の妥協は求められますが、相手が提示する条件を全て受け入れてしまったら、自分が望んでいるものは得られないでしょう。
買い手との交渉で損をしないためにも、自分の中で明確なラインを決めておくことは大切です。
目先の欲には囚われず、売却後に後悔しないような条件で飲食店を譲渡しましょう。
経営権の譲渡・事業譲渡には、専門的な知識が求められます。
飲食店の売却を何回も経験していて、個人でも充分に事業譲渡などを進められる方はあまり多くないでしょう。
知識を持っていたとしても、個人で行うには膨大な時間や手間がかかります。
経営権の譲渡・事業譲渡を行う際には、専門的な知識を持っている相手に依頼しましょう。
相談する相手として、具体的な候補としては、金融機関や仲介会社などが挙げられます。
それぞれ依頼する際の手数料やサービス内容が異なるので、条件に合わせて最適な相手を選びましょう。
また、ACコンサルティングでは無料で相談を承っていますので、不明点などあればお気軽にご相談ください。
経営権や事業を高値で売却する方法は、主に以下の5つが挙げられます。
飲食店の売却価格は、その店舗が持つ強みによって異なります。
強みを理解することによって、買い手企業がその飲食店に価値を感じられる要素が増えれば、自然と売却価格は上がるでしょう。
自店舗の強みを理解しておけば、買い手との交渉もスムーズに行いやすくなります。
買い手が買収する価値を感じられるように、自店舗の強みを事前にリストなどでまとめておきましょう。
また、飲食店が持つ強みは、独自の仕入れルートや立地、料理の専門性などが挙げられます。
競合と比較して、どのような違いがあるかに注目すれば、自店舗が持つ強みを見つけることができるでしょう。
飲食店を運営するためには、優秀な人材の確保が必要です。
買い手企業が人材確保などを目的として買収を図っている際は、従業員の育成をしておくことで、企業の価値は上がるでしょう。
また、譲渡時に人材も引き継ぐ際は、従業員が離職しない状況を作っておくことも大切です。
譲渡によって労働環境が変わってしまう際は、不満に思った従業員が離職することも考えられます。
離職を防ぐためにも、買い手企業と労働条件について話し合っておくとよいでしょう。
事業の売却価格は、その企業が生み出す利益によって算出されます。
業績がよいタイミングで飲食店を売却すれば、より高い資金を獲得することができるでしょう。
反対に、業績が悪化しているタイミングで売却を検討すると、買い手が見つからないというリスクもあります。
買い手をスムーズに見つけて、高い価格で売却するためにも、経営権の譲渡や事業譲渡を行うタイミングは正確に見分けましょう。
飲食店の最終的な売却価格は、買い手企業との交渉によって決まります。
交渉の際に必要な情報を忘れてしまったら、買い手企業も不信感を抱くでしょう。
不信感を抱くことによって「売却価格が安くなってしまった」「譲渡自体が破綻してしまった」と後悔してしまう可能性もあります。
そのような損失を防ぐためにも、交渉を進める前には必要な情報をまとめておきましょう。
具体的には、自社の強みや経営状況、交渉に求める条件などが挙げられます。
企業価値の評価には、その事業が将来的に生み出すと予測される利益も含まれます。
買収によって利益の拡大を望めることを伝えれば、より高値で事業を売却することができるでしょう。
買い手が買収に魅力を感じられるように、将来予測される利益を買い手に伝えることが大切です。
企業価値の算定に不安がある場合は、専門家に相談するのがおすすめです。
飲食業界では、数多くのM&Aが行われてきた実績があります。
M&Aとは企業の買収や合併という意味があり、経営権の譲渡(株式譲渡)や事業譲渡も含まれます。
飲食店は他の業種と比較すると店舗が多いため、今後も積極的にM&Aが行われるでしょう。
ここでは、飲食業界で行われたM&A事例を5つ紹介します。
2022年6月、持ち帰り寿司で有名な「小僧寿し」やデリバリー専門店である「デリス」を運営している株式会社小僧寿しは、株式会社アスラポートの株式を取得して子会社化することを発表しました。
アスラポートは、北海道ラーメン「どさん子」やミルフィーユカツ専門店「キムカツ」などの運営を行っています。
子会社化に伴い、外食事業の拡大や強化を図っています。
2021年4月、健康食品の製造などを手掛けている株式会社AFC-HDアムスライフサイエンスは、株式会社なすびの株式を取得することによって完全子会社化することを発表しました。
なすびは静岡を中心に、飲食店の経営を行っています。
完全子会社化に伴い、日本国内はもちろん、海外での事業展開を図っています。
2020年4月、フードサービス事業などを手掛けている株式会社ありがとうサービスは、株式会社エージーワイの株式を取得することを発表しました。
株式会社エージーワイは、香川や大分、福岡県に飲食店を展開しています。
ありがとうサービスは福岡県と大分県に店舗を所有していなかったため、子会社化によって事業の拡大を図りました。
2019年1月、飲食事業や経営サポート事業を手掛けているG-FACTORY株式会社は、飲食店経営を事業としている株式会社 M.I.Tの全株式を取得し、子会社化することを発表しました。
G-FACTORYは子会社化に伴い、飲食店の拡充やノウハウの共有によって、グループ業績の拡大を図りました。
2017年1月、株式会社アクロディアは、株式会社渋谷肉横丁の株式を取得して子会社化することを発表しました。
アクロディアは、スマートフォンアプリなどのコンテンツサービス事業を行っています。
一方、渋谷肉横丁は、渋谷にて飲食店の経営などを手掛けています。
子会社化によって、渋谷センター街という立地を生かして、「肉横丁」と「インターネット」を結びつけることにより、シナジー発揮による事業展開を図りました。
飲食店では、経営権の譲渡や事業譲渡が頻繁に行われています。
事業を承継する相手がいない場合は、第三者への譲渡を行っても良いでしょう。
売却利益を獲得できるといったメリットがあるため、廃業を検討している方はぜひ一度お問い合わせください。
ACコンサルティングでは、M&Aに関する相談に無料で対応しております。