太陽光発電業界のM&A動向!課題や売却・買収事例も紹介

投稿日:2022/06/13

更新日:2022/09/26

国内外を問わず、CO2を排出しないための方法として再生可能エネルギーの普及が望まれています。

風力発電や水力発電といった再生可能エネルギーの中でも、特に注目を集めているのが太陽光発電です。

2020年時点では、日本国内での太陽光発電普及率は約9%となっており、地球温暖化防止への取り組みに大きく貢献しているといえるでしょう。

現在、そんな太陽光発電を事業とする企業のM&Aが活発に行われています。

この記事では、太陽光発電業界のM&A動向や課題、買収の事例などを解説します。

太陽光発電業界とは

太陽光発電業界とは、太陽光発電に関する事業を展開している企業の種類です。

太陽光発電事業者は、主に以下の3種類に分けられます。

  • 売電事業・・・自らが発電した電気の余剰分を、電気会社に売却する事業
  • 施工事業・・・ビルやマンションなどに太陽光発電システムを設置する事業
  • メンテナンス事業・・・導入した太陽光発電システムのメンテナンスや保守、発電量の計測などを行なう事業

太陽光発電業の特徴

太陽光発電業は、2012年に新規参入企業が急激に増加しました。

しかし、近年では倒産する事業者が増えており、M&Aの需要が増加しています。

ここでは、太陽光発電業の特徴について解説します。

FIT制度の導入によって新規参入企業が増えた

2012年7月1日に、FIT制度が導入されました。

FIT制度とは、太陽光や風力、水力などを利用して発電された再生可能エネルギーを電気事業者が買い取る制度です。

FIT制度で電気を売却する場合は、国が定めた金額での買取になるため、安定した利益を獲得することができます。

太陽光発電を行なうためには高い建設コストがかかりますが、FIT制度の導入により投資額の回収をしやすくなったため、多くの企業が太陽光発電事業の参入に手を伸ばしました。

近年M&A需要が増加している

FIT制度の導入によって、太陽光発電事業を行なう企業は増えましたが、2017年に改正が行われました。

改正が行われた理由は、売電価格を確定させた上で、太陽光発電設備を導入せずに運転を行わないという事例が多発したことが影響しています。

FIT制度が導入されたときの売電価格は、権利の取得を行ったタイミングによって決められます。

売電価格は年々下がっていることから、高い価格で売る権利を保有したまま、太陽光発電システムの導入はコストが下がってから行おうとする企業が増えたのです。

高額で売却する権利を保有して、設備導入は行わないという問題を解決するために、FIT制度の改正は行われました。

改正によって、権利の保有後は3年以内に運転を行なうように制限が設けられました。

しかし、太陽光発電システムを導入するためには多額のコストが必要になるため、導入に踏み出せないという事業者も存在するでしょう。

施工事業やO&M事業の需要も急激に増加したため、競争の激化によって廃業を止む終えないという事業者も増加しました。

これらの影響によって、太陽光発電業界のM&A需要は増加したものと考えられます。

太陽光発電業界の市場動向

FIT制度の導入によって、稼働している太陽光パネルの数が増加したことにより、太陽光発電の市場は拡大し続けています。

特に、メンテナンスや保守を行なうO&M事業は、導入された太陽光発電システムを維持するために需要が高まっています。

新規に参入する事業も増えてきているため、メンテナンスを中心に行う企業の需要は高まり続けるでしょう。

反対に、太陽光パネルの施工事業に関しては落ち着いていくことが予想されます。

これは、電気の買取価格が年々低下していくことや、稼働台数が急激に増加したことによるものです。

太陽光発電業界の課題

太陽光発電業界は、以下の4つの課題を抱えています。

法改正による倒産リスクがある

FIT制度の改正に伴い、太陽光発電システムを導入した企業は大きく増え、市場規模は更に拡大しました。

しかし、導入を行えなかった企業多くの売電事業者が太陽光発電業界から撤退したという事例もあります。

太陽光発電システムの導入が増えたことにより、競合他社との競争に負けて撤退したメンテナンス事業者も存在します。

太陽光発電事業は法改正による影響を受けやすく、充分な資金や競争力がなければ倒産するリスクがあります。

また、太陽光発電業界は「売電事業」「施工事業」「メンテナンス事業」の3つによって成り立っています。

どれか一つの事業が大きく縮小すると、他の事業まで影響を受けることも考えられます。

電気売却価格が下がっている

FIT制度が導入された2012年、10kW以上の余剰電気の買取価格は1kWhあたり40円でした。

しかし、2013年には36円、2015年には33~35円と減少し続けています。

2022年には10kW以上50kWの売却価格は11円となっており、電気を売ることで得られる利益は大幅に下がっています。

今後も売却価格は減少していく可能性が高いため、参入が送れるほど利益は下がる可能性があります。

資金不足が問題になっている

電気の売却価格減少の影響によって、売電をメインとしている企業が得られる利益は減少しています。

太陽光発電システムを維持するためには、メンテナンスなどの費用がかかります。

加えて、2015年3月、太陽光発電設備導入にかかるコストを経費として計上できる即時償却が廃止されました。

これらの影響によって、太陽光発電事業者は充分な資金を獲得するのが困難な状況になりました。

資金不足を解消するために、M&Aによって事業を譲渡する事業者は増え続けています。

専門的な知識を持つ人材が不足している

太陽光発電事業は、ソーラーパネルを導入した後であれば人員をあまり必要としません。

ただし、太陽光発電事業の規模が大きい場合、主任技術者免状の交付を受けている人物の中から、電気主任技術者を選任する必要があります。

ソーラーパネルを管理するために必要な電気主任技術者は、将来的に不足することが予測されています。

電気主任技術者が不足している理由は、有資格者の高齢化や電気設備の増加といったものが挙げられます。

再生エネルギーへの関心は国内外問わず増加していますが、有資格者の不足問題は事業発展のための大きな課題といえるでしょう。

太陽光発電企業を買収するメリット

さまざまな課題を抱えている太陽光発電事業ですが、買収することによって生じるメリットも存在します。

ここでは、太陽光発電企業を買収するメリットを3つ紹介します。

事業の多角化が行える

1つ目は、効率的に新規参入が行えるという点です。

新たに事業を始めるためには、ノウハウの構築や技術者の確保、市場を開拓するための時間がかかります。

年々電気の売却価格が減少している太陽光発電業界にとって、新規参入時にかかる時間はなるべく抑えたいでしょう。

効率的に新規参入を行なうための有効手段として挙げられるのが、M&Aによる企業買収です。

企業を買収することによって、売り手企業が所有している知識やノウハウ、設備などをそのまま引き継ぐことができます。

現時点よりも高い価格で売電できる権利を取得できれば、新規参入するよりも大きな利益が期待できます。

事業規模を拡大できる

2つ目は、事業規模の拡大ができるという点です。

太陽光発電業のO&Mをメインとして行っている企業の場合、新規参入する競合他社が増えたことによって、人員が不足していることもあるでしょう。

競争が激化していることから、他社との差別化を図る必要もあります。

そのような問題点は、M&Aによって解決することができるでしょう。

同じ太陽光発電のO&Mを行っている企業を買収すれば、保守作業についての知識を持った人材を獲得することができます。

新たに技術を持つ人材を育成する必要はないため、効率的に他社との差別化を図ることが可能です。

両社が持つ技術を合わせることで、シナジー効果の発揮も期待できるでしょう。

導入コストを抑えられる

3つ目は、導入コストの削減ができるという点です。

ソーラーパネルを新たに設置するためには、多額のコストが発生します。

工事を依頼した後も、導入するための時間はかかるでしょう。

M&Aによって売り手企業が所有する設備を獲得すれば、導入コストを抑えられる上に、短期間で設備を導入することができます。

また、ソーラーパネルを新たに設置するためには、近隣住民への配慮を行う必要があります。

すでに導入されているソーラーパネルを獲得できれば、近隣トラブルに発展するリスクも抑えられるでしょう。

太陽光発電業のM&A相場

太陽光発電を営んでいる企業をM&Aによって売却する場合、売却価格は企業の将来性や資産によって決められます。

それらは企業によって異なるため、業界全体におけるM&Aの売却相場は一概にいえません。

ただし、中小規模の企業を売却する際の費用は、時価純資産に2〜5年分の営業利益を足した金額が目安になるといわれています。

注意点として、M&Aによる企業の売却価格は、他の方法によって求められた値も組み合わせて算出されるため、実際の売却価格は異なる可能性があります。

より正確な売却価格を知りたい場合は、M&A仲介会社などに算定を依頼しましょう。

【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!

太陽光発電業の売却・買収事例10選

太陽光発電業界では、実際にどのようなM&Aが行われてきたのでしょうか。

1.豊田通商によるユーラスエナジーホールディングスの完全子会社化

2022年05月、トヨタグループの総合商社である豊田通商株式会社は、株式会社東京電力ホールディングスが保有するユーラスエナジーホールディングスの株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。

株式会社ユーラスエナジーホールディングスは、風力及び太陽光発電を事業としています。

豊田通商グループは再生可能エネルギー事業に取り組んでおり、完全子会社化に伴い脱炭素化社会への貢献を目指しています。

2.Abalanceによる日本未来エナジー・J.MIRAIの孫会社化

2022年3月、IT事業を行っているAbalance株式会社は、連結子会社であるWWB株式会社などを通じて、

日本未来エナジー株式会社とJ.MIRAI 株式会社の2社を買収しました。

この買収によって、Abalanceは太陽光発電所を新たに獲得しました。

Abalanceは、買収を通じて脱炭素化社会の実現に貢献し、収益の安定化を図っています。

3.エナリスによる日本エネルギー建設の子会社化

2014年2月、電力事業者向けのサービスなどを展開している株式会社エナリスは、太陽光発電システムの販売及び施工を事業とする日本エネルギー建設株式会社の株式を取得し子会社化することを発表しました。

子会社化によって、エナリスは太陽光発電事業の個人向け顧客層の獲得を目指しました。

4.ジー・スリーホールディングスによる永旺能源の子会社化

2018年8月、再生可能エネルギー事業などを手掛ける株式会社ジー・スリーホールディングスは、永九能源株式会社の株式を取得し、子会社化を行いました。

この買収を通じて、太陽光発電設備の獲得に成功しました。

5.Abalanceによるカンパニオソーラーの子会社化

2021年10月、Abalanceの連結子会社である株式会社バローズは、株式会社カンパニオソーラーの買収を決議したことを発表しました。

カンパニオソーラーは太陽光発電事業を行っており、脱炭素化社会の実現及び収益の安定化を図りました。

6.エフティグループによるアローズコーポレーションの子会社化

2016年10月、情報通信サービス事業などを手掛ける株式会社エフティグループは、太陽光設備の販売や施工、保守などを事業とする株式会社アローズコーポレーションの買収を行いました。

買収に伴い、さらなる事業拡大を図っています。

7.JトラストによるLCレンディングの孫会社化

2020年11月、Jトラスト株式会社の連結子会社である株式会社プロスペクト・エナジー・マネジメントは、グローム・ホールディングス株式会社の全株式を取得したことを発表しました。

プロスペクト・エナジー・マネジメントは太陽光発電に関する事業を手掛けています。

孫会社化によって、シナジー発揮による収益拡大が期待されています。

8.スズキ太陽技術によるTAKグリーンサービスの子会社化

2015年11月、住宅向け太陽光発電などの販売を手掛けるスズキ太陽技術は、太陽光発電販売や設置工事などを手掛けるTAKグリーンサービス株式会社の子会社化を行いました。

子会社化に伴い、ノウハウの組み合わせによるシナジーの発揮や、事業領域の拡大を図りました。

9.NCホールディングスによる関西電機工業の孫会社化

2019年10月、NCホールディングス株式会社の子会社である日本コンベヤ株式会社は、関西電機工業株式会社を子会社化することを発表しました。

子会社化に伴い、太陽光発電設備の保守メンテナンス事業のシナジーを発揮することを目指しました。

10.タカラレーベンによるACAクリーンエナジーの子会社化

2021年4月、再生可能エネルギー発電事業を手掛ける株式会社タカラレーベンは、ACA クリーンエナジー株式会社の株式を取得しました。

子会社化によって、発電事業の強化及び展開を図りました。

まとめ

2012年頃には、FIT制度の導入によって新規参入企業は増加しました。

しかし、近年では撤退を図る企業が増えてきており、M&Aの需要は高まっています。

国内外でも再生可能エネルギーの需要は増え続けているため、買収する価値が充分にある業界といえるでしょう。

太陽光発電業への新規参入を考えている方は、ぜひ一度M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

M&Aに関する様々なご相談を無料で承っております。
お気軽にご相談ください。

M&Aの無料相談フォーム

無料の電話相談

(年中無休 9:00~19:00)