投稿日:2022/08/07
更新日:2022/08/07
M&Aを行う際は買収・売却の要素に目が行きがちですが、大切なのは実施後のシナジー発揮といえるでしょう。
M&Aによる恩恵を最大限に得るためにも、経営統合作業であるPMIを適切に行う必要があります。
しかし、PMIに関する知識を充分に所有している経営者はあまり多くありません。
そこで今回は、PMIに関する基本的な知識や実施するためのプロセス、成功・失敗の事例などを解説していきます。
目次
まずは、PMIに関する基本的な内容を解説していきます。
PMIとは、「Post Merger Integration」の略称であり、M&Aを実施した後の経営統合プロセスのことを指します。
M&Aを成功させるためには、企業同士の統合をスムーズに行い、想定していた利益を獲得しなければなりません。
想定していた利益を得るためには、企業同士の統合作業がもっとも重要であるといえるでしょう。
主な統合内容は、経営方針や企業文化、取引先や組織編成など多岐に渡ります。
それらを統合することによって生み出される恩恵を、M&Aでは「シナジー」といいます。
しかし、M&Aを行う際は買収・売却取引だけにリソースを割いてしまうことが多いため、適切なPMIが実施されることはあまり多くありません。
統合後の企業は不安定な環境にあることから、PMIが不十分だったことによってM&Aを失敗してしまった事例も多数存在します。
統合した時点での企業は、利益を大きく伸ばす充分な可能性と、損失を生み出す可能性のどちらの要素も含んでいます。
M&Aによるリスクを抑え、想定していた利益を生み出すためにも、PMIに関する知識を持って適切に実行しましょう。
PMIはM&Aの成功と失敗を決める大きな要素ですが、成否を決定する具体的なポイントはどういったものが挙げられるでしょうか?
ここでは、PMIに関する重要なポイントについて解説していきます。
M&Aを行う代表的な目的は、シナジー発揮による利益の拡大が挙げられます。
シナジーを充分に発揮するためにはPMIを適切に行う必要があることから、M&Aを成功させるための重要なポイントであるといえるでしょう。
そのため、PMIを行う際には、想定しているシナジーを得るための要素を把握して、計画性をもって行う必要があります。
計画的にPMIを行うことで、早い段階から動くことができるため、早急な利益の獲得を図れます。
近年、M&Aは徐々に浸透してきていますが、買収という要素を含むため良い印象を抱かない従業員もいるでしょう。
経営方針なども変わってしまうことから、環境の変化に耐えられなくなることも考えられます。
M&Aを成功させるためには、従業員の協力は必要不可欠です。
PMIを行う際には、従業員の離職を防ぐために、社員の不安や不満を解消することが重要なポイントであるといえるでしょう。
従業員の離職を防ぐためには、統合によるメリットや、M&Aを実施した理由などを経営者から具体的に説明する必要があります。
また、重要な人物の離職を防ぎたい場合は、一定期間会社に残る取り決めである「キーマン条項」を結ぶといった方法も有効です。
M&Aを実施した直後は、社内のシステムや内部の統制が不安定になることでしょう。
PMIが不十分な場合、それらを安定させることができずに、利益の獲得どころが損失を生み出してしまうかもしれません。
業務をまともに実施できなくなることも考えられるため、システム統合及び内部統制の構築は適切に行う必要があります。
また、売却した側の会社が中小企業の場合は、内部統制が十分に構築されていないことも考えられます。
一人の社員しか特定の業務を行えないケースもあるため、マニュアルなどが存在しないこともありえるでしょう。
スムーズに業務を行うためにも、買収した側の企業の方針に合わせて、素早く内部統制を構築する必要があります。
M&Aを実施した後の経営体制は、主に以下の3つがあります。
PMIに関する知識も大切ですが、事前知識としてそれらを把握しておくことも重要です。
ここでは、M&Aによる統合後の経営体制について個別に解説していきます。
1つ目は、M&A後も売り手企業の法人格を残し、子会社として存続させる経営体制です。
この経営体制を取る際には、企業の独自性を残すためにも、PMIや経営への関与を最小限に抑えます。
売り手企業の独自性を残す方針は、買い手企業と異なる事業を行っている場合や、売り手側の経営が安定している場合などに取ることがあります。
売り手企業の独自性を残すことは、統合後も環境が大きく変化しないことから、従業員からの反発が起きにくいというメリットがあります。
反面、統合する要素が少ないことから、シナジーが発揮されにくいというデメリットもあるため注意が必要です。
2つ目は、売り手企業の法人格を残しつつも、買い手企業側が経営に関与する経営体制です。
この経営方針では、売り手企業の代表や、大半の役員を買い手企業から派遣した従業員で構成します。
買い手企業に経営を委ねる方針は、売り手企業も同種の事業を行っている場合や、売り手企業の経営が不安定な場合などに用いられます。
この方針のメリットは、買い手企業が経営権を得ることから、シナジーが発揮されやすいという点が挙げられます。
一方で、従業員が会社を乗っ取られたと感じやすい方法であるため、離職を招きやすいというデメリットも存在します。
それらの特徴から、最初に紹介した「売り手企業を独立したまま残す」方針とは対になる経営体制であるといえるでしょう。
買い手企業が経営権を握る際は、独自性を残す場合よりもPMIを綿密に行う必要があります。
3つ目は、買い手企業が、売り手企業の法人格や事業を吸収する経営体制です。
この経営体制を取る際には、事業譲渡や吸収合併などのスキームを使用して行います。
経営方針や人事制度など、事業運営に関わる要素はすべて買い手側と同じものに統一されます。
法人格を一体化させる経営体制は、統合にかかるスピードが最も速いため、素早くシナジーを発揮しやすいというメリットがあります。
しかし、統合に作業を素早く行う必要があることから、最も負担が大きい方法であるともいえるでしょう。
従業員の離職や混乱を招く可能性があるので、この経営体制を取る際には専門家やコンサルタントに依頼することをおすすめします。
PMIの流れを把握しておくことは、早急にシナジーを発揮するためにも重要です。
M&Aを成功させるためにも、PMIを実施するための流れを把握しておきましょう。
ここからは、PMIを実施する際の手順について個別に解説していきます。
M&Aを成功させるためには、混乱などを防ぐためにも従業員や相手企業の現状を把握することが大切です。
売り手側の企業がどのような方法で利益を出していたのか、役割はどのように振り分けられていたのかなどを分析しましょう。
また、M&Aに対して感じている不安や、どのように成長していきたいかなどをヒアリングすることも大切です。
適切なコミュニケーションを取り、良好な関係性を築いていきましょう。
現状をある程度把握した後は、統合の方針を固めていきます。
最終契約の締結前に実施したデューデリジェンスの結果を元に、問題点を解決するよう方針を定めていきましょう。
基本的に、デューデリジェンスの際に見つかった問題点は契約書に記載して対応しますが、その段階で解決できなかったものはPMIにて解決します。
どのような流れや方針で進めていくのかを考えて、優先順位をつけていきましょう。
また、経営方針は統合後の経営体制によって異なります。
売り手企業を独立したまま残すのか、経営は買い手企業側が行うのかなども考慮して、方向性を決める必要があります。
統合後の経営方針が決定した後は、ランディングプランの策定に移ります。
ランディングプランとは、M&Aクロージング後の3~6ヶ月以内に取り組んでいく課題をまとめた計画のことです。
ランディングプランに導入する内容は、主に以下の項目が挙げられます。
また、ランディングプランを策定する際には、デューデリジェンスで発覚した問題点を解消するように行いましょう。
ランディングプランの策定が完了した後は、100日プランの策定に進みます。
100日プランとは、クロージング後の100日で取り組む中長期的な計画のことです。
100日プランは現場レベルで実施される内容となっており、今まで行うことができなかった課題などに対する改革を図れます。
会社の環境を大きく変えることができため、M&Aの成否を決める重要なポイントであるといえるでしょう。
ランディング及び100日プランの策定が完了したら、それらを元に統合作業を進めていきます。
統合作業は長期的な取り組みになるため、担当者のモチベーションを維持することも大切です。
会社が目指す将来などを伝えて、M&Aを成功させるという意識を引き出しましょう。
また、統合作業を進めていく際には、計画の進捗具合や効果が発揮されているかなどを把握する必要があります。
1週間や1ヶ月ごとに区切りを設けて、計画通りに作業が進んでいるかなどを確認しましょう。
進歩の遅れや新たな課題などが発覚した際には、それらを順次に対応していきます。
基本的に効果測定は各部署・部門ごとに進めていきますが、他の業務にも影響が出る課題を見つけた際には、全体にも共有して進めましょう。
先述した通り、100日プランの内容はM&Aを成功させるための重要な要素です。
では、具体的にどのような流れで進めていけば良いのでしょうか?
ここでは、100日プランを進めていく際の具体的な流れや、実施する際のポイントを解説していきます。
100日プランは、以下の流れで進めていきます。
100日プランを策定する際には、プロジェクトチームを作る必要があります。
統合は2社間で行われるため、プロジェクトチームの人員は買い手企業と売り手企業からそれぞれ選出しましょう。
買い手企業の人員のみで構成してしまった場合、売り手企業側の実態を効率的に把握することができません。
反対に、売り手企業側の人員のみで構成すると、従来と変化をつけることが難しいためシナジーを充分に発揮しにくくなります。
また、PMIの策定はデューデリジェンスと並行して進めていくため、M&Aを行うことを他の従業員より先に知ることになります。
M&Aを行うことが先んじて広まってしまうと、社内で混乱を招く可能性があります。
プロジェクトチームに選出する人員には、M&Aを行うことは機密情報であることを伝え、信頼できるメンバーで構成しましょう。
プロジェクトメンバーを構成したあとは、現状の課題を把握して、どのように対策していくかを話し合います。
基本的に、PMIは買い手企業側のシステムなどを基準にして統合していきます。
ただし、スムーズに統合していくためには、売り手企業に関する知識などが必要になるでしょう。
買い手企業の情報を売り手企業側の人材が知ることで、新たな課題を見つけることができるかも知れません。
状況によっては、売り手企業側が採用しているシステムを導入したほうが良いといったことも考えられます。
それらの課題に対応するためにも、プロジェクトメンバーは両社の人員から選出することが重要です。
課題の把握が完了した後は、どのような計画で進めていくかを決める必要があります。
この目標を達成するための具体的な計画のことを「アクションプラン」といいます。
アクションプランを決める際には、誰が何を担当するか、いつまでに完了させるかなどを具体的に決めていきましょう。
それぞれの課題に対して、一つ一つアクションプランを設けていくことが重要です。
アクションプランを設けていない場合、課題に対応できなくなってしまうため、シナジーが発揮されないことも考えられます。
M&Aを成功させるためにも、アクションプランの策定は慎重に行いましょう。
課題の把握やアクションプランの策定が完了したら、計画通りに統合作業を進めていきます。
100日プランの実行は各部門ごとに行いますが、並行して実施するため混乱を招く可能性があるかもしれません。
統合作業をスムーズに進めるためにも、可能であればPMO(Project Management Office)を設けておきましょう。
PMOとは、大規模なプロジェクトなどの進行を管理する、専門の部署などを指します。
PMOを設けておくことで、プロジェクトの全体像を把握できるため、問題が発生した際などにも柔軟に対応することができます。
100日プランを進めていく際は、以下のポイントを抑えておきましょう。
PMIの最終的な目標は、会社を理想としている状態に変貌させることです。
会社が目指している状態がなければ、認識に差が生じるため、シナジーが発揮されにくくなるでしょう。
100日プランを勧めていく際は、将来的にどのような企業にしたいかを見据えた上で計画を立てることが大切です。
目標とする会社の姿を明確にしておくことで、共通した認識のもとで統合作業を進めることができます。
100日プランを成功させるには、取り組みに対するモチベーションも重要です。
あえて成功しやすい内容を盛り込むことで、従業員のやる気を引き出すことができるでしょう。
取り組みに対して結果が出ることで、成果を上げたチームは自信が付き、周囲のチームも負けじとやる気を出すかもしれません。
成功体験を積み重ねることは、大きな成果をあげるための大切なステップです。
従業員のモチベーションを維持できれば、100日プランを成功しやすくなるでしょう。
PMIで行う作業は非常に多く、中には時間がかかるような項目もあります。
無理やり100日プランに盛り込んでしまうと、後から不備などが見つかるかもしれません。
100日プランに盛り込みたい作業が多い場合、作業内容に優先順位をつけて整理することが大切です。
100日以内に取り組むことが難しい作業は、100日プランが完了した後に取り組みましょう。
PMIを早めに終わらせることは理想的ですが、完了するまでに一年以上かかるケースも珍しくありません。
成果を出すことに焦らず、優先順位に従って作業を進めましょう。
PMIにて統合する内容は多岐に渡ります。
ここからは、PMIで統合する内容について解説していきます。
まず最初に、統合や整備を行うべきなのが経営体制です。
中小企業の場合などは、経営体制が充分に整備されていないこともあるので優先して統合や整備を行いましょう。
経営体制の統合で行う内容は、業績の管理方法などが挙げられます。
業績を把握するタイミングや目標値などは、企業によって大きく異なります。
売上に関しては確認していても、利益の部分は把握していないといったこともあるでしょう。
事業を継続して続けていくためには、売上だけでなく利益も把握しておくことが重要です。
決算時のみに利益を把握するといったこともありますが、それではスパンが長すぎるため、細かい対応などが取れないことも考えられます。
可能であれば、利益を毎月管理するといった対応を取ることが理想です。
また、経営体制の統合を行う際は、会議を行うタイミングなども定めましょう。
各部署の動きなどを定めるには、定期的に会議を行い運用スケジュールなどを決めることが大切です。
業務を行う際のシステムも、PMIで統合するべき重要な内容です。
売り手企業側も同じ業種であれば、買い手企業側と同じシステムを導入することで、業績の把握などがしやすくなるでしょう。
新たなシステムを構築することによって利益が見込める場合には、負担などを考慮した上で導入することも有効です。
業種が異なる場合には、買い手側のシステムを使用しても問題ないかを検討することが大切です。
売り手側のシステムをそのまま使用することもできますが、買い手企業側も状況を把握できるような構造にしましょう。
また、システムを統合する際には従業員の負担も増えるため、混乱やトラブルが生じる可能性もあります。
システムの統合を行う際には、従業員の反発を防ぐためにも目的を明確に伝えましょう。
可能な限り負担を抑えられるように統合作業を進めることも重要です。
中小企業などの場合は、人事制度が充分に整備されていないこともあります。
人事制度が適切な状態で設けられていない場合は、未払い賃金などを抱えているリスクもあるため、早い段階から整備や統合を行いましょう。
人事制度については、デューデリジェンスを実行した段階で把握することができるので、統合作業の準備段階で整備方法について考えることもできます。
また、M&Aを実施した後には、買い手企業から売り手企業側に従業員や役員が派遣されることもあります。
代表取締役も変更されることがあるため、状況に応じて組織編成などの統合作業も進めましょう。
売り手企業側の人員整理が不十分だった場合にも、あわせて組織編成の見直しを行います。
特定の部署のみに人員が集まりすぎていないか、組織の構造は充分に整備されているかなどを確認して、効率よく動けるように再配置しましょう。
社内文化や風土なども企業によって異なるため、それらを統合する必要があります。
中小企業などは経営者が中心となっていることが多く、独自の文化などが築かれていることも多いでしょう。
PMIによって文化や風土を統合する際には、買い手企業側に合わせていくことが一般的です。
ただし、それらを早急に変化させてしまうと従業員が混乱し反発を生む可能性もあります。
売り手企業側に良い文化があれば残し、時間をかけて統合を進めていきましょう。
また、PMIを行う際は、経営方針などを統一させることも大切です。
中小規模の企業は具体的な経営方針が設けられていないことが多いですが、大手企業などは明確な方針を設けて経営が行われています。
経営方針を統合させることで従業員の意識が統一されれば、M&Aによるシナジーも発揮しやすくなるでしょう。
PMIを実施するには、意識しておくべきポイントが多数あります。
PMIを成功させることはM&Aを成功させることにも繋がるため、重要なポイントを抑えておきましょう。
PMIを成功させるためのポイントは、主に以下の6つが挙げられます。
ここからは、PMIを成功させるためのポイントについて個別に解説していきます。
PMIを成功させるには、長期的な統合プランを具体的に設けておく必要があります。
初期の段階から統合作業を進められるように、ランディングプランや100日プランなどを作成しておきましょう。
統合計画を設けておけば、従業員への指示を具体的に出せるため、効率的に統合を進めることができます。
また、統合計画を策定する際のポイントは、実施する内容を具体的に決めておくことです。
統合計画が綿密に組まれていない場合、統合する内容に漏れが生じるかもしれません。
作業が順調に進んでいるかなども把握しにくくなるため、工数なども明確にしておくことが重要です。
統合計画に盛り込む内容は多岐に渡るので、M&A仲介会社などの専門家などに依頼してもよいでしょう。
PMI進めていく際には、達成したい目標なども明確にしておきましょう。
具体的な目標を設けておくことで、どのようなプロセスを踏んでいけば良いのかを決めやすくなります。
目標を従業員にも共有すれば、会社が目指すべき方向性が全体にも周知されるため、一体感をもって経営を進められるでしょう。
達成するべき内容が定まっていない場合、想定していた成果が得られない可能性もあるでしょう。
目標に合わせて解決するべき課題を設けて、シナジーを発揮できるように動くことが大切です。
売り手側の従業員は、M&Aによって自社を買収されたことに良い印象を抱いていない可能性もあります。
従業員からの理解が得られていない場合、統合後のシナジー発揮に悪影響を及ぼすかもしれません。
M&Aを成功させるためにも、売り手企業側の従業員とは適切なコミュニケーションを取りましょう。
PMIに関する理解を得ることができれば、統合作業もスムーズに進めることができます。
また、PMIのプランを作成する人物と実行する人物も、可能な限り連携やコミュニケーションを取ることが大切です。
充分な関係性を保つことで、PMIを円滑に進めやすくなるでしょう。
PMIを行う際の作業は多岐にわたるため、適切な判断ができる人材の確保が重要です。
売り手企業に人材を決める際は、どの人物を派遣するべきなのかを慎重に検討しましょう。
売り手側企業の従業員は、M&Aによって買収されたことでモチベーションが低下している可能性もあるため、それらをまとめられる人物を選ぶことが大切です。
また、PMIを実施した経験がなくても、知識や適正がある人物を実行者に選ぶことは、M&Aを成功させる要素になります。
企業に対する理解もある従業員であれば、課題解決をする際にも適切な判断ができるでしょう。
企業の統合は、労働環境などが大きく変化するため、従業員に混乱が生じることもあるでしょう。
不安を抱えたまま作業を進めてしまうと、意見の対立や衝突を招く可能性があります。
そのような不測の事態を起こさないためにも、経営者はリーダーシップをもって企業運営を行うことが大切です。
経営者がリーダーシップを持つことで、各部署の代表者などにも責任感が生まれ、統率の取れた経営ができるかもしれません。
責任者の立ち位置にいる人物は、従業員を引っ張っていくという意識を持つことが重要です。
M&Aを行うためには多額の資金がかかるため、投資した分を回収することは大切です。
注意点として、投資した資金を回収することに焦り、売り手企業を過度にコントロールするといったことは行わないようにしましょう。
買い手企業が過剰に動いてしまうと、売り手企業からの反発を招いてしまう可能性もあります。
企業同士で亀裂が生じている状態では、長期的に利益を出すことが困難になるでしょう。
M&Aを成功させるためには、実施してよかったと両社が感じられる状況を作ることも重要です。
PMIにおいて、失敗したといわれている事例を紹介していきます。
2002年、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行が合併したことによって、みずほ銀行は誕生しました。
金融業はシステムの構築が重要な業界ですが、みずほ銀行は2011年の3月14日にシステム障害を発生させています。
当時は東日本大震災が発生したばかりであったため、義援金を集めるためにテレビ局がみずほ銀行の口座を解説しました。
しかし、みずほ銀行は口座に振り込める容量の把握ができていなかったことによって、システム障害が発生してしまったのです。
誕生から長い年月が経っているみずほ銀行ですが、システム統合が不十分だったことによって、数年後にも影響が起きてしまいました。
リクルートは数々のM&Aを成功させている企業ですが、一部では経営に良い影響を与えなかった事例も存在します。
2013年、リクルートは海外で中古不動産情報サイトを運営しているMovoto LLCの買収を行いました。
しかし、2017年には同企業の売却お行っている事から、充分な利益を挙げられなかったことが考えられます。
海外で成功している事業が、国内でも成功するとは限らないことがわかった事例です。
2014年、スマートフォン用ゲームの開発などを手掛けているDeNAは、iemo社とペロリ社の2社を買収しました。
どちらもサイト運営を行っている企業であり、新規事業としてさらなる発展が期待されていました。
しかし、買収した企業に著作権侵害の疑惑が掛けられていたこともあり、最終的に企業イメージを損なう結果になりました。
この結果は、デューデリジェンスの不足などによって招いてしまった事例であると考えられます。
2011年、国内ビール業界で大きなシェアを誇るキリンホールディングスは、ブラジルの酒類メーカーであるスキンカリオールを買収しました。
スキンカリオールはブラジルのビール業界で2番目にシェアを握っていましたが、市場の激化によって充分な利益を出すことができませんでした。
結果的に赤字を生み出してしまい、オランダの企業に売却することによってブラジル市場からは撤退しています。
M&Aを失敗してしまった原因は、市場のリサーチ不足や買収を焦ってしまったことなどが考えられます。
2006年、東芝はアメリカで原子力発電事業を手掛けているウエスチングハウスを買収しました。
しかし、2011年の東日本大震災によって、世界中で原子力発電の安全性が問われる自体に発展します。
加えて、買収後にウエスチングハウスが多額の赤字を抱えていたことが発覚しました。
結果的に、この事例によって東芝は多額の損失を生み出したのです。
この失敗の原因は、PMIが不十分だったことなどが挙げられます。
反対に、PMIを成功させたM&Aの事例も紹介していきます。
2014年、大手飲料メーカーであるサントリーは、バーボンウイスキーで有名なビーム社を買収しました。
このM&Aは、両社が所有しているブランドの展開などを目的として行われました。
結果的に、サントリーは業績を大きく伸ばし、市場の拡大に成功しています。
成功した要因は、サントリーがビーム社に敬意を持ち、衝突せずにM&Aを進めていったことなどが挙げられます。
2014年、大手食品メーカーであるミツカンは、海外企業であるユニリーバの子会社が手掛けているパスタソース事業を買収しました。
ミツカンは海外での展開を図っている傾向があり、北米の食品会社なども買収している経歴があります。
このM&Aによって、ミツカンの海外売上は大きく上昇しています。
1999年、国内大手のタバコメーカーであるJTは、海外企業であるRJRインターナショナルのタバコ事業を買収しました。
この買収は、世界でのタバコシェアを獲得することによる事業の発展を目的として行われました。
結果的に、JTは海外でのタバコ市場で大きな利益を上げることに成功しています。
成功の要因は、海外とのM&Aに関する知見を深めていたことや、事業運営に必要な設備などをまとめて獲得したことなどが挙げられます。
2011年、DeNAは異業種である横浜ベイスターズという野球チームの買収を行いました。
当時の横浜ベイスターズは、テレビ局の傘下にて運営されていましたが、経営がうまく行っていない傾向にありました。
結果的に、DeNAは横浜ベイスターズの立て直しに成功しており、チームの業績も上がり続けています。
この買収を成功させた要因は、買収の話を持ちかけられた際に、異業種ながらノウハウを利用できるという適切な判断を行えたことなどが挙げられます。
2013年、大手広告代理店である電通は、イギリスで広告事業を手掛けているイージス社を買収しました。
イージスは海外でも強い事業基盤を築いており、今後も発展が予測されているデジタル領域で強みを持っている企業でした。
電通は海外展開も図っていたこともあり、イージス社は成長する企業であると判断した上でM&Aを実施しています。
結果的に、イージス社は電通の海外展開に大きく貢献し事業領域の拡大を成功させました。
PMIは、M&Aを成功させるために欠かせない重要な作業です。
やらなければいけないことは多岐にわたるため、それぞれに対する理解を充分に深めておきましょう。
アクションプランや100日プランなどを綿密に作成し、スムーズに統合を進めることが大切です。
成功事例や失敗事例なども抑えて、M&Aを成功させるように進めていきましょう。