投稿日:2022/06/04
更新日:2022/06/04
経営者の高齢化が進む現代では、事業承継に対する需要が高まってきています。
すぐに取り組みたいと考えていても、具体的にどのようなものなのかを把握している方は少ないでしょう。
この記事では、事業承継の種類や引き継ぐもの、失敗しないための対策などを解説します。
目次
事業承継とは、会社の経営を経営者から後継者へと引き継ぐことをいいます。
中小企業などは経営者の手腕が会社自体の強みになっていることが多いため、後継者に誰を選ぶか考えることは、会社の今後を決める重要な課題です。
しかし、事業承継は会社の経営を左右する大切な作業であるにも関わらず、先延ばしにされてしまうことも多いでしょう。
近年では後継者が不在な企業は減少傾向にありますが、おおよそ60%の企業は後継者問題に悩まされているといわれています。
また、事業承継に後継者の育成が必要な場合などは、5~10年程度の時間を要することもあります。
事前の対策を行わずに事業承継を焦って進めてしまうと、従業員からの信頼を失ってしまうというケースも考えられます。
加えて、中小企業の経営者の平均年齢は60歳以上とされており、高齢化が問題になっています。
突然経営者が突然亡くなってしまい、企業が倒産する可能性もあるでしょう。
事業承継の対策は、早めに進めておくに越したことはありません。
事業承継にかかる時間を逆算して早期に取り組むことが大切です。
事業を引き継ぐことは、事業継承ではなく、事業「承継」というのが一般的です。
これは、事業承継をする際に引く継ぐものには、形あるものだけでなく、企業の理念や思いも含まれているからという理由があります。
承継と継承という言葉には、以下の違いがあります。
承継:地位や事業、精神を先代から引き継ぐこと
継承:身分や財産、権利を引き継ぐこと
事業を引き継ぐ相手を選ぶ際は、株などの資産だけではなく、事業に対する心構えも引き継ぐことを忘れてはいけません。
経営のなかで生まれてきた伝統を引き継ぐことで、従業員からの信頼も生まれやすくなるでしょう。
事業承継をする際は、経営理念なども引き継ぐことが大切です。
事業承継の種類には、主に「親族内での事業承継」「社内での事業承継」「M&Aによる事業承継」があります。
ここでは、事業承継の種類について個別に解説します。
親族内での事業承継とは、経営者の子供や親せきに事業を引き継ぐことです。
親族内で事業を承継することは、従業員や取引先からも受け入れてもらいやすく、スムーズに承継を行なえます。
早い段階から後継者の育成も行えるので、長期的な教育期間を確保できるというのも大きな利点です。
株式などの資産を相続などで渡すこともできるため、資金面でのトラブルが起きるリスクを減らすこともできるといったメリットもあります。
実際に90年代では、事業承継といえば親族内での承継が一般的でした。
しかし、近年では親族内承継を選ぶ企業は減少傾向にあり、90年代では約95%程度であったのに対し、近年では80%程度に落ち着いています。
また、親族内承継のデメリットとして、親族側が事業を承継する意思を持っているとは限らないということが挙げられます。
子供に事業を承継しようと考えていても、苦労を身近で見てきたなどの理由で希望しないこともあるでしょう。
加えて、相続での事業承継を行う際は、他の親族との差が生じないように配慮する必要もあります。
社内での事業承継とは、従業員や役員といった社内の人材から、優秀な人物に会社を引き継ぐことです。
仕事に対する能力を把握した上で後継者として選べることや、教育にかかる手間を抑えることができるといったメリットがあります。
長期間勤務を継続している従業員に承継する場合であれば、他の従業員と揉めることも少ないでしょう。
一方で、自社の株を引き継ぐ方法が限られているといったデメリットもあります。
相続として引き継ぐことができないため、後継者が株式を買い取る際は資金の問題が生じる可能性があります。
資金面の問題が、社内での事業承継を行なう際の大きな課題です。
また、後継者に事業を行う能力が備わっているとは限りません。
金銭的な問題とも合わせて、後継者として選ぼうとしていた従業員に事業を承継してもらえないといったケースも考えられます。
M&Aによる事業承継とは、親族や従業員といった関係者ではなく、第三者に事業を引き継ぐことです。
M&Aの大きなメリットとして、買い手側や内手側が培ってきたノウハウを共有することができるため、シナジーを生み事業の発展につなげられるというのが挙げられます。
異なる分野の企業が買い手側の場合は、事業の多角化も狙えるでしょう。
関係者から後継者が見つからない場合でも事業を残せるため、従業員の生活を心配する必要はありません。
後継者を育てておく必要もないため、教育にかかる手間も抑えることができます。
また、M&Aで事業承継をした際は、売却資金として利益を得る事も可能です。
廃業をすることなく大きな利益を受け取れるため、近年ではM&Aという選択を取る経営者も増えてきています。
M&Aが広く知れ渡った現代では、珍しくない選択肢の一つとして挙げられます。
デメリットとして、買い手側との交渉が重要になるため、他の方法と比較すると時間がかかります。
加えて、買い手がすぐに見つからないといったこともあるでしょう。
M&Aを検討している場合は、自社を買収するメリットを明確にした上で、早い段階から動き出すことが大切です。
後継者に引き継ぐ要素は、主に「経営権」「資産」「知的財産」の3つに分けられます。
ここでは、M&Aで引き継ぐ要素について解説します。
事業承継をする際には、後継者は前任者から経営権を引き継ぐ必要があります。
株式会社の場合には、半数以上の株を後継者が保有すれば経営権が移ります。
経営権を与えられた後継者は、従業員を指揮する権利や財務等に関する決定権などを得ることができます。
つまり、経営権を与えられた後継者は、事業に対する充分な知識や能力が求められます。
親族や従業員などに経営権を与える際は、充分な教育を行うためにも長期的な時間を確保する必要があります。
事業承継を行う際は、運営資金や設備・不動産といった有形資産の引き継ぎも必要です。
経営権の承継に必要な株式も、資産の承継の要素に含まれます。
資産の承継がきちんと行われていないと、資産が分散することによって、経営権が分散するといったことになる可能性があります。
経営権の分散を防ぐためにも、後継者に株式を集中して承継するといった生前の対策が求められます。
遺言の作成も、事業資産の分散を防ぐ一つの手段です。
また、資産を承継する際は、贈与税や相続税が発生する事があるため、税負担に対する配慮が必要です。
贈与税の控除などの対策が必要になるため、経営権の分散を防ぐ場合と同じく生前に行なうことが理想的とされています。
資産の承継に関しては考慮するべきポイントが複数あるため、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
知的財産とは、会社を運営していくために必要な技術や、ブランド・ノウハウといった形のない資産のことを指します。
特許や技術といった事業経営に必要な要素も知的財産に含まれます。
事業を承継する際は、資産といった目に見えるものだけではなく、企業が培ってきたスキルを引き継ぐことも大切な要素です。
知的財産の承継は、会社の強みを引き継ぐことを意味します。
知的財産がきちんと承継されていない場合は、権利者が会社からいなくなった場合に権利を使用できなくなるといったリスクがあります。
最悪の場合、特許の侵害などによる損害賠償を求められるケースも考えられます。
知的財産をきちんと承継するためにも、特許などの知的財産は誰のものなのかを明確にしておきましょう。
また、技術力などの自社がもっている強みを理解した上で、後継者に事業を引き継ぐことも大切です。
今まで培ってきたノウハウが後継者に承継されていないと、従業員との信頼関係が生まれずに不信感が積もる可能性もあるでしょう。
承継した後の事業をスムーズに進めるためにも、後継者への充分な引き継ぎが必要です。
事業承継を失敗しないためには、どのような対策が必要になるのでしょうか。
ここでは、事業承継を失敗しないための方法を2つ紹介します。
事業承継計画書とは、経営計画や事業承継の時期、企業の課題などを記入した書類です。
計画をあらかじめ立てておくことによって、事業承継をスムーズに行いやすくなります。
後継者と事業承継の話を進める際にも、話し合いをするためのきっかけになるでしょう。
後継者との認識の違いが生じるリスクを減らせるといったメリットもあります。
加えて、事業承継に対する計画がきちんと立てられていれば、従業員などから承継に対する理解を得やすくなるでしょう。
周囲からの理解を得ることで、事業承継をスムーズに進めやすくなります。
また、事業承継計画書には、決まった形式が存在しません。
事業承継計画書を作成する際は、中小企業庁が上げている記入例などを参考にすると良いでしょう。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/download/q18.pdf
経営者の子供や従業員などに事業を承継しようと考えていても、本人が承継を希望しているとは限りません。
後から承継者を焦って探すことにならないためにも、事前に後継者の候補とは話をしておきましょう。
後継者候補が承継を希望していなかった場合は、第三者に事業を引き継ぐM&Aも一つの方法です。
M&Aの実施を検討している際は、仲介サービス業者への相談がおすすめです。
専属のスタッフがサポートを行うので、不明点などがあれば質問してみると良いでしょう。
事業の承継は経営者にとって、企業の行く末を決める最後の仕事です。
失敗しないためにも、わからないことは明確にして置く必要があります。
不明な点は自分自身で調べることも大切ですが、税理士などの専門家に相談してもよいでしょう。
M&Aの実施を検討している方は、ぜひ一度ACコンサルティングにご相談ください。