投稿日:2022/04/22
更新日:2022/09/26
土木・建築業のM&A動向は、近年活発な動きをみせています。
土木・建築業界のM&Aを行うメリットや注意点を確認することで、土木・建築業界についてより深く知るきっかけになるでしょう。
目次
土木・建築業界とは、建設業に分類される業界です。
建設の仕事は、大きく土木と建設に分けることができます。
両者の違いは、
と分類可能です。
大きく一括りされることもありますが、それぞれに専門性を持った職人が事業を担当します。
違いを理解したうえで、土木・建築業のM&A動向をチェックするとニュースも分かりやすいでしょう。
建設業法では、この法律において「建設業者」とは、第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者をいう。と定義されています。
引用元:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/common/001172145.pdf)
第3条第1項とは、建設工事の種類ごとに、特定建設業許可/一般建設業許可の別で許可が必要ということです。
引用元:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/common/001172145.pdf)
つまり許可を得てトンネル工事や家を建てる企業といえます。
土木・建築業界の業種は、全部で29種に分類可能です。
具体的には、
に分類できます。
さらに建築関連の企業は、
に分けることが可能です。
総合建設業の中には日本の土木・建築業界を引っ張る存在である単体売上高が1兆円を超えるスーパーゼネコンもあります。
スーパーゼネコンは
の5社です。
スーパーゼネコンの中には自社の強みをさらに活かす目的や事業を拡大しようと積極的にM&Aを行う企業もあります。
土木・建築業界のM&A動向をチェックする際、スーパーゼネコンの動きにも注目してみてください。
それでは土木・建築業界の大手3企業をみていきましょう。
清水建設は、大手総合建設会社です。
民間の建築工事を担うことが多く、数多くの建物を建設してきました。
代表例は、
などが挙げられます。
資本金 | 743億6500万円 |
売上 | 連結:1兆6982億9200万円(2020年3月期) |
代表取締役 | 井上和幸 |
利益 | 営業利益連結:1338億9400万円(2020年3月期) |
時価総額 | 576,404百万円 |
従業員数 | 15,616人 |
大林組は、1892年から続く総合建設会社です。
スーパーゼネコン5社の一つに数えられます。
手掛けた建築物は、
などが有名です。
資本金 | 577億5200万円 |
売上 | 連結:2兆396億8,500万円(2019年3月期) |
代表取締役 | 蓮輪賢治 |
利益 | 連結:1,554億8,000万円(2019年3月期) |
時価総額 | 651,523百万円 |
従業員数 | 9,125人 |
大成建設は、大倉財閥の流れを受け継いだ総合建築大手総合建設会社です。
スーパーゼネコンの中では珍しい非同族会社として知られています。
主な建築物は、
などです。
資本金 | 1,227億4,215万8,842円 |
売上 | 連結:1兆7,513億3,000万円(2020年3月期) |
代表取締役 | 相川善郎 |
利益 | 連結:1,677億5,500万円(2020年3月期) |
時価総額 | 708,836百万円 |
従業員数 | 8,572名 |
土木・建築業界の特性は受注があることで、初めて仕事ができるということです。
他の業界とは違い、仕事内容は受注に左右されます。
業界全体が大手の会社を元請けにし、工程を様々な会社で分担するケースが大半です。
例えば大手ゼネコンA社が受注した仕事を土木はB社、建築はC社という形で分担します。
B社がさらに孫請けのD社に対応を依頼するケースも少なくありません。
業界全体がピラミッド構造になっているところが、特徴的といえるでしょう。
土木・建築業界の取引の流れは、
というものが一般的です。
公共工事の多くは入札制度を導入していて、土木・建築業界の取引に大きく影響します。
入札制度を利用できるのは、
といった条件を満たした業者です。
建設業界でM&Aをする際は、相手企業が入札についてどのような対応を取っているのか調査した方がいいでしょう。
土木・建築業界の市場規模は、
です。
参考元:業界動向建築業界(https://gyokai-search.com/3-kensetu.htm)
業界は縮小傾向にありますが、その年の政府の財政や災害の発生状況に左右されています。
土木・建築業界には、多くの課題があります。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
土木・建築業界は、慢性的な人不足が続いています。
現状は若い世代の成り手が少なく、職人の高齢化が進んでいて、早急な対策が急務です。
後継者不足も深刻で、地方では廃業する会社も少なくありません。
高齢者の大量引退が起こる可能性も指摘されていて、人の課題は土木・建築業界の大きな問題といえるでしょう。
土木・建築業界の業務は、きついと言われることも少なくありません。
体力的にも厳しく、怪我や事故を0にすることも難しいものです。
そのため若い世代や女性が参入しにくく、人手不足に繋がっています。
優秀な人材をどのように確保するかは、業界全体の課題といえるでしょう。
日本では人口減少が進んでいて、住宅の建築数は少なくなる見込みです。
さらにオリンピックも終了し、建設投資は減少傾向にあります。
老朽化した社会インフラ整備や災害からの復旧は急務であり、今までとは違ったアプローチが必要でしょう。
それでは、土木・建築業界のM&Aを行うメリットをみていきましょう。
同業種間でのメリットは、経営資源の相互活用ができるところです。
施工力の強化が期待され、双方に良いシナジー効果が感じられます。
生産性を向上させることでコストを抑え、利益率を高めることが可能です。
他業種間でのメリットは、事業領域の拡大ができる所といえます。
それぞれの弱点を補うことも可能で、今までとは違ったプロジェクトに挑戦できるでしょう。
収益基盤の確立され、安定した企業経営が実現します。
売り手のメリットは、後継者問題を解決できる点です。
近年では、子供がいても親の土木・建築業を継がないケースも増えてきました。
後継者を探すことが難しい売り手にとっては、従業員の雇用を守れるM&Aはメリットが大きいものです。
買い手のメリットは、事業拡大をスムーズに行える所です。
地方進出を考えている場合一から会社を立ち上げるよりも、その地域で実績のある企業をM&Aした方がスムーズに事が運びます。
買い手にとって、M&Aは大きなメリットといえるでしょう。
土木・建築業界のM&Aを行う際には、注意しないといけない点があります。
それぞれを詳しく確認し、土木・建築業界のM&Aを慎重に考えないといけません。
進行中の案件の取り扱いをどうするのかは、売り手と買い手でよく話し合う必要があります。
長期の案件を担当している場合、M&Aも工事が進行中に実施しないといけないケースが少なくありません。
選択肢としては
が考えられます。
特に別の企業に案件を依頼する場合、トラブルにならないように費用負担を明確にしないといけません。
また案件の発注者にもM&Aが行われ、担当が別の企業になることを説明しておく必要があるでしょう。
発注者が納得できない場合は、M&Aもスムーズには進みにくいものです。
関係者が全員納得したうえで、M&Aを進める必要があるでしょう。
M&A手法によっては、建設業許可の引き継ぎ方法が異なります。
自分達が行おうとしているM&Aでは、建設業許可に変化がないか確認する必要があるでしょう。
具体的には
といった違いがあります。
事業譲渡の場合は、改正建設業法の第17条の2により買い手も売り手も都道府県知事または国土交通大臣等に事前に申請して許可を得ないといけません。
申請には詳しい知識や資料が必要です。
時間が掛かるケースもあるので、早くから対処するといいでしょう。
自分達では対応が難しそうであれば、建設業法に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。
SDGsとは、持続可能な開発目標のことです。
土木・建築業界のM&Aを行う場合、SDGsを意識した経営を行っている企業が望ましいでしょう。
具体的には、
などが挙げられます。
すでにSDGsなど次世代の経営を意識している企業も少なくありません。
M&Aを行う予定の会社の経営状況に加えて、SDGsの取り組みも注視すべきでしょう。
企業の売却価格は、企業が持つ純資産や将来性によって異なります。
売却価格には数百万から数百億円まで幅があるため、相場となる価格を求めることは困難であるといえるでしょう。
ただし、目安となる売却価格は、時価純資産に2〜5年分の営業利益を足すことで求めることができます。
例として、時価純資産が5000万円で年間の営業利益が1000万円の場合、目安となる売却価格は7000万〜1億円程度です。
自社がおおよそいくらで売却できるかを調べる際は、上記の計算によって求めると良いでしょう。
【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
土木業界のM&Aには、以下の事例があります。
新興プランテックは、2018年9月にJXエンジニアリング株式会社との経営統合に関する基本同意書を締結しました。
2019年7月にはレイズネクスト株式会社として発足し、さらなる事業拡大が期待されています。
ファースト住建株式会社は、関東エリアへの事業拡大を狙い、アオイ建設株式会社の株式を取得しました。
良好な財務体質を維持している地域に根づいた企業を子会社化することで、企業価値の向上を狙いました。
2017年11月、大手電機メーカーであるパナソニックは、ゼネコン会社である松村組を連結子会社化することを発表しました。
松村組の持つ高い技術力などを自社に取り込み、大きなシナジーを生み出し事業拡大を図っています。
2022年3月、道路舗装業界の企業である日本道路株式会社は、総合建設企業である清水建設の連結子会社になることを発表しました。
両社の事業領域の拡大によるシナジーを発揮することで、さらなる発展を図っています。
2017年11月、大手家電量販店であるヤマダ電機は、住宅リフォーム会社のナカヤマを完全子会社化することを発表しました。
ヤマダ電機は様々な事業を展開しており、そのうちの一つにスマートハウスやリフォーム事業があります。
この吸収合併により、ヤマダ電機はオリジナル商品の展開や提案力の強化を図りました。
この記事の結論をまとめると
土木・建築業界のM&Aはこれからも加速する重要な業界となる事は間違いありません。