投稿日:2022/05/03
更新日:2022/09/26
飲食業界は参入しやすい反面、競争が激しく生き残るためには大変です。
そこでM&Aで企業経営の安定を検討する人も多いでしょう。
そこで本記事では、飲食業のM&A動向やメリット、注意点について解説します。
ぜひ飲食業のM&Aに興味ある方は、参考にしてください。
目次
飲食業界は、加工や調理した飲食品を提供する仕事をしており、代表的なものに外食産業があります。
企業形態は幅広く、全国規模でチェーン展開している大企業から個人経営の店舗まである点は大きな特徴です。
人が生きていく上で欠かせない食品を提供している業界なので、比較的わかりやすい事業ともいえるでしょう。
そのため、参入している企業も多く競争が激しく撤退や事業廃止なども頻繁に起こる業界でもあります。
総務省が定める日本標準産業分類表では飲食業界は、「宿泊業、飲食サービス業」に分類されますが、これは外食と中食と呼ばれるものなのでイメージしやすいかもしれません。
外食は言葉の通り、家の外で食事を提供する企業となります。
中食は、テイクアウトなどの弁当屋をイメージするとわかりやすいでしょう。
さらに飲食業界には内食と呼ばれる、いわゆる自炊も含まれます。
飲食業界というと自炊は含まれなさそうですが、この内食が飲食業界においては市場規模としては大きいので忘れてはいけません。
このように食に関する業界なので、生活に不可欠な存在で、いきなり市場がなくなる心配はありませんが、参入もしやすい業界なので競争が激しいです。
引用元:日本標準産業分類表
ゼンショーHDは、日本国内店舗数一位の「すき家」をはじめ、ファミリーレストラン「ココス」「ビッグボーイ」「ジョリーパスタ」などを店舗展開している企業です。
国内だけでなく海外展開も行っており、東南アジアを中心に市場を広げています。
資本金 | 269億9,600万円 |
売上 | 5,950億4,800万円 |
代表取締役 | 小川賢太郎 |
利益 | 120億8,800万円 |
時価総額 | 4,600億9,700万円 |
従業員数 | 145,932人 |
すかいらーくHDは、「ガスト」や「バーミヤン」「ジョナサン」などのファミリーレストランを店舗展開している企業です。
外食だけでなく、洋菓子・洋惣菜専門店などもあり、多様性を活かした事業展開を特徴としています。
資本金 | 251億3,400万円 |
売上 | 2,884億3,400万円 |
代表取締役 | 谷真 |
利益 | △230億3,100万円 |
時価総額 | 3,485億3,300万円 |
従業員数 | 5,984名 |
日本マクドナルドHDは、アメリカのマクドナルド・コーポレーションの持分法適用関連会社です。
ハンバーガーチェーン店として有名な「マクドナルド」を店舗展開している日本マクドナルド株式会社が傘下にあります。
資本金 | 241億1,387万円 |
売上 | 2,722億5,700万円 |
代表取締役 | 日色保 |
利益 | 250億4,500万円 |
時価総額 | 6,834億1,400万円 |
従業員数 | 2,346名 |
飲食業界は人が生きていく上で必要な食を提供していることから、参入する企業も多く競争が激しいです。
そのため、生き残りをかけて低価格低利益で提供している企業もあり、店舗系は入れ替わりも多く見られます。
参入企業が多い理由には、食材を購入して提供する比較的事業を起こしやすい点も背景にあるでしょう。
とくに中小企業の場合、人気があっても長期に渡って維持できるケースは限られており、大企業でフランチャイズ展開をしている店舗との競争もあるため厳しい業界ともいえます。
飲食業界における顧客の多くは一般消費者です。
そのため、店舗やECサイト、配達などで営業を行い、食材を加工・調理したものを提供することが通常取引の流れとなります。
普段の生活でも当たり前の光景となっているし、BtoCの業界なので取引の流れは理解しやすいでしょう。
2020年の飲食業界の売上は、4兆9,860億円でした。
新型コロナウイルスの影響をダイレクトに受けており、この数年は売上が低迷しています。
「外食産業市場動向調査2022年3月度結果報告」によると、コロナ以前の2019年比では同月比で86.3%と外食全体の回復には至っていません。
飲食業界は生活に欠かせないものですが、まだ新型コロナウイルスへの対応がわからず、先行きは不透明です。
また、少子高齢化により国内マーケットはこれ以上大きく成長するとは考えられません。
すでに海外市場に進出している企業も数多くあるのが実情です。
引用元:業界動向SEARCH.COM
引用元:外食産業市場動向調査2022年3月度結果報告
飲食業界の課題を人、業務、未来の観点から見てみましょう。
コロナ禍により店舗休業や営業時間短縮などの関係で、アルバイトスタッフのシフトカットや解雇を進めた結果、従業員不足が回復していません。
少子化も進んでおり、若い従業員の確保がさらに難しくなることも予想されており、簡単に解決する問題ではないでしょう。
外国人の雇用も進んでいる業界ですが、こちらもコロナウイルスの影響で今後の見通しがわかりません。
少人数でも運営できる体制作りが求められます。
コロナ禍により一般消費者を顧客とする飲食業は、業務がやりづらくなりました。
感染対策のために店舗内の清掃や除菌にも気を配らなけれならず、通常業務に加えてやることが増えています。
煩雑な業務をうまくオペレーションに落とし込む必要が現場マネージャーに求められていますが、コロナウイルスの動向は不透明なので、経営者は柔軟に対応しなければなりません。
デジタルを活用したセルフオーダーやレジなどが出てきており、タスクを少しでも減らす動きが出てきているので、今後さらにDXを活用した業務改善が必要です。
少子化により食欲旺盛な若い世代が少なくなるため、業界全体の売上減につながると考えられます。
ただでさえ競争の激しい業界なので、今後は企業の統合や廃業も進んでいくでしょう。
大企業は国内マーケットでは十分な売上を立てられないため、さらに人口の多い東南アジアやインド、アフリカなどの海外市場を狙っていかなければなりません。
すでにその動きは出ており、タイやマレーシア、インドネシアなどの東南アジア諸国には日本の飲食業界が運営する店舗も見られ始めています。
飲食業界でM&Aを行うメリットを見てみましょう。
飲食業界同士のM&Aは、企業は違えど類似商品を扱っていることから、順応しやすい点が大きなメリットです。
経験ある業務となるため、従業員の摩擦も異業種間に比べると少なく済むため、早急に販路を拡大したい場合は飲食業界内でのM&Aを検討するといいでしょう。
また、経験あるスタッフの確保も可能なので、教育コストを減らせる点も同業種間によるM&Aのメリットです。
今後、飲食業界も人材確保が大きな課題となるため、M&Aで解決するのも一案かもしれません。
他業種から飲食業界の企業をM&Aする場合、新たなマーケットの創出に繋がります。
飲食業界は参入しやすいですが、競争も激しい業界なので、すでに実績ある企業を買収した方が黒字化もしやすいです。
また、とくにシナジー効果があるのは、飲食業界と隣接していると市場開拓が進むでしょう。
たとえば、農業を主な事業としている企業が飲食業に進出したい場合、自分たちで生産した農作物をそのまま飲食業に使えるので、企業価値を高めるM&Aになります。
売り手のメリットは、廃業を防げる点です。
せっかく続けてきた事業を廃業することに抵抗を感じる経営者も多いでしょう。
そんな時はM&Aで事業継承できれば解決できます。
買い手側のメリットは、販路の拡大と従業員の確保です。
飲食業での販路を手に入れたくても自社だけでは難しい場合、M&Aで企業買収すれば解決できます。
経験ある従業員がいるため、これまでの顧客を離すことなく事業継続可能なので、事業基盤を安泰させられるでしょう。
一方で飲食業界でM&Aを行うときの注意点にはどんなものがあるでしょうか。
飲食業界は店舗を構えている企業が多いため、不動産価値も事前に算定しておくといいでしょう。
M&Aで不動産も引き継ぐこととなるので、価値が低い場所ばかりに店舗があると、不採算につながる可能性もあります。
なるべく不動産価値の高い場所に出店している企業を買収した方が、事業拡大にもいいでしょう。
飲食業界は一般消費者が顧客となるため、もし不祥事を起こした企業を買収するとブランドイメージを下げてしまうかもしれません。
とくに消費者は安心や安全面を気にしており、少しでも問題が発覚するとSNSで炎上するリスクもあるため、買収先の選定には注意が必要です。
そのため、クリーンで大きな問題を起こしていない企業を買収先に選ぶといいでしょう。
学生アルバイトやフリーターも働くことの多い飲食業界は、労務リスクにも注意しなくてはなりません。
そのため、買収先の従業員の働き方も事前に確認しておきましょう。
いくら買収先だからといって、自社が問題なかったからといって長時間労働などをさせると、最悪訴訟となるケースもあるからです。
上手に融和できるように従業員に対するケアを必ず行ってください。
飲食店の売却価格は規模によって異なりますが、おおよそ100〜250万円程度が相場であるといわれています。
新規に開業する際の相場が500〜600万円程度であるといわれていることを考えると、買収によって得られるメリットは大きいといえるでしょう。
ただし、飲食店のM&Aの相場は、店舗の面積や立地によって大きく変動します。
条件によって相場となる金額は大きく変わるため、類似した店舗の取引事例などを参考にしておおよその目安を定めることが大切です。
また、より正確な買収価格を知りたい際は、M&A仲介会社などの専門家に依頼することも一つの方法です。
【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
飲食業界には、どのようなM&Aの事例があるのでしょうか。
フードサービス事業を中心に経営を行っている株式会社コロワイドは、「FRESHNESS BURGER」で有名な株式会社フレッシュネスの子会社化を実施しました。
子会社化によってFRESHNESS BURGERのエリア展開を行い、さらなる事業成長を目指しました。
株式会社レンブラントホールディングスは2017年5月に、ドムドムハンバーガーで有名な株式会社オレンジフードコートの事業を譲り受けることを発表しました。
レンブラントホールディングスによる事業支援を受けることで、収益向上を図っています。
2019年、株式会社クリエイト レストランツ ホールディングスは、からあげセンターなどを運営している株式会社クルークダイニングの株式を取得し、子会社化する動きを発表しました。
居酒屋の経営ノウハウを取り入れることで、居酒屋文化の発展を目指しています。
2018年、テイクアウト型の寿司屋である小僧寿しを運営している株式会社小僧寿しが、フードデリバリー事業を運営する株式会社デリズの子会社化を実施することを発表しました。
宅配事業のノウハウを獲得することによって、事業の拡大を目指す取り組みが行われました。
2016年11月、株式会社 ホットランドは、フランチャイズパートナーである株式会社タコプランニングに、築地銀だこの事業を譲渡することを発表しました。
事業の譲渡を行うことによって、他事業の集中化を図る取り組みとなりました。
本記事をまとめると、
飲食業界は参入しやすいので競争が激しいため、M&Aによる企業統合で経営を盤石にすることは、1つの解決策と考えられます。