投稿日:2022/04/22
更新日:2022/09/26
IT・通信業では、M&Aが積極的に行われています。
生活様式が変わる中でもIT・通信業界はポジティブな見通しで、さらにM&Aも盛り上がると予想する声も少なくありません。
IT・通信業のM&Aのメリットや注意点と共に、業界の動向を確認していきましょう。
目次
IT・通信業界は、情報技術に関係する業界です。
IT化が進む私たちを支えている業界といえるでしょう。
例えば、スマホで買い物するとすると
などをIT・通信業界が支えています。
総務省では、
が分類されると定義しています。
引用元:大分類G-情報通信業
さらに大きく5つに分類することが可能です。
主な事業内容をまとめると
が挙げられます。
IT・通信業界に興味がある方は、どの事業に分類される会社なのかに注目するといいでしょう。
IT・通信業界を代表する大手3社をみていきましょう。
NTTドコモは、日本最大手の移動体通信事業者です。
日本電信電話の子会社として知られていて、大きな影響力がある会社の一つといえるでしょう。
商品を取り扱うドコモショップは全国各地にあり、無料でスマホの使い方を教える教室が評判です。
資本金 | 9,496億7,900万円 |
売上 | 4兆8,408億4,900万円(2019年3月期) |
代表取締役 | 井伊基之 |
利益 | 連結:1兆136億4,500万円(2019年3月期) |
時価総額 | 12,527,082百万円 |
従業員数 | 連結:26,564人 |
日本電信電話はNTTグループの持株会社で、ITや通信に関する研究所もあります。
1985年に日本電信電話株式会社法に基づき、誕生しました。
日本のIT/通信業界をけん引する存在で、国際電気通信連合のセクターメンバーにも選ばれている企業です。
資本金 | 9,380億円 |
売上 | 11兆9,439億円(国際会計基準営業収益)(2021年3月期) |
代表取締役 | 澤田純 |
利益 | 連結:1兆6,713億円(2021年3月期) |
時価総額 | 13,520,973百万円 |
従業員数 | 連結:32万4,650名 |
ソフトバンクグループは、電気通信事業者やネット関連事業を行う会社を傘下に置いています。
実際にインターネット事業をする子会社を管理するだけでなく、最先端のIT事業に投資をするファンドも立ち上げて応援することも少なくありません。
代表者の孫正義氏は、日本を代表とする経営者としても有名です。
資本金 | 2387億7200万円 |
売上 | 連結:5兆6281億6700万円(2021年3月期) |
代表取締役 | 孫正義 |
利益 | 連結:5兆6704億5600万円(2021年3月期) |
時価総額 | 9,636,480百万円 |
従業員数 | 連結:80,909名 |
一口にIT・通信業界の特性といっても、それぞれのビジネスモデルで対応が異なります。
例えば
などが特性といえるでしょう。
M&Aが実施される場合は、それぞれの特性に注目して行われることも少なくありません。
気になる企業があった場合は、大まかな業種を確認の上、特性をチェックしてみてください。
IT・通信業界の取引の流れは、事業内容によって異なります。
事業内容は、大きく
に分類可能です。
企業向けの場合は企業や自治体に向けて営業を行い、契約を取り付けていきます。
契約内容によっては、メンテナンスやセキュリティのサポートを行うケースも少なくありません。
一方、個人向けサービスの場合はCMや個人向け営業を行い、取引します。
契約内容に従い、個人に商品やサービスを提供します。
IT・通信業界の市場規模は、29兆9,598億円です。
引用元:業界動向
市場規模は2018年頃からはやや縮小や横ばい傾向にあります。
また細かく業界を見ていくと縮小している分野と拡大している分野があることが特徴的です。
例えばテレビの広告収入は縮小する一方、ネット広告は盛り上がりを見せています。
また携帯電話業界は、菅政権の料金引き下げ政策の影響を受けて大幅に収益が下がっている状態です。
携帯電話業界の市場規模が縮小すれば、他の業界も影響を受けて縮小する可能性があります。
一口にIT・通信業界の市場と見るのではなく、興味のある企業の事業が盛り上がっているかどうかに注目してみるといいでしょう。
IT・通信業界の課題を詳しく見ていきましょう。
IT・通信業界は、人手不足が続いています。
IT人材は増加傾向にあるものの、若い世代と男性中心という特徴が問題視されてきました。
IT・通信業界は35歳で定年といわれるほど、厳しい職場だと言われています。
少しずつ40歳以上のITエンジニアも増えていますが、より働きやすい現場作りが急務でしょう。
また女性が他の業界よりも少なく、女性の活用の必要性が叫ばれています。
IT技術を持っていても、事業所の種類によってはIT人材にカウントされないことも課題です。
例えば自動車のIT関連部分を担当している事業所は、自動車に分類されてしまいます。
優秀な人材を年齢や性別関係なく確保できるかが、大きな課題です。
業界全体で人材不足に対するアプローチが必要といえるでしょう。
業務の課題は、労働時間が長めである所です。
特に、繁忙期や納期前は残業が長期化することも少なくありません。
その結果体調を崩し、退職を決める人もいます。
さらにシステムの設計書やクライアントとの打ち合わせをする人は残業が少ないのですが、開発やテストなどの担当者は残業が長くなりがちです。
工程によって格差が大きいところも、業務の改善点といえるでしょう。
業務を改善できるように、人材の確保と共に効率化を求めていないといけません。
未来の課題は、ビジネスモデルの変化に対応できるかどうかです。
少子高齢化が進みスマホの普及率の高い日本では、今後契約者を大きく増やすことは難しいでしょう。
その代わりに
などの対策を取らないといけません。
未来の課題を解決していくには、さらなるIT人材の教育が必要といえるでしょう。
ここからは、IT・通信業界のM&Aを行うメリットをみていきましょう。
同業者の場合は、人材不足の解消や技術力の向上が大きなメリットです。
人手不足の企業にとっては、一から教育や採用するコストを抑えて人材を確保できます。
効率よく資格を持っている人材を集めることもできるでしょう。
これから大きな事業に挑戦しようと考えている場合は、大きな利点となるでしょう。
他業種間でのメリットは、それぞれにシナジー効果が期待できる所です。
他業種の中には、IT化が遅れている部門もあるでしょう。
IT・通信業界は新たなサービス開発のきっかけになり、他業種は業務の改善が期待できます。
それぞれに新たな可能性を見出すことができるでしょう。
売り手はコストを抑えて事業から撤退できるというメリットがあります。
IT・通信業界が事業から撤退する際、想像以上に資産除去費用が掛かるケースが少なくありません。
M&Aで事業を売却できれば、事業を止めるために手持ちの現金が減る心配は入りません。
別の事業に力を入れたい、会社を廃業するので現金を残しておきたい時に便利です。
買い手のメリットは、新しい技術の獲得が可能な所です。
IT・通信業界は驚異的なスピードで技術が誕生していて、常に新たな技術が求められます。
M&Aを行えば、最先端の技術を手間なく獲得できるでしょう。
自社の技術力に限界を感じている場合にもM&Aは大きなメリットといえます。
IT・通信業界のM&Aを行う際、注意しないといけない点も少なくありません。
IT・通信業界では、開発が成功しないと事業を収益化できません。
開発に時間が掛かると、資金が流出する一方です。
そのためM&Aを行う場合、非収益事業の収益化の道筋を考えないといけません。
特に、研究開発費など費用計上する際、ソフトウェア勘定になっていると改善されるので見方には注意です。
実際の事業内容をよく見極めた方がいいでしょう。
事業の継続性の評価に対しても注意が必要です。
IT・通信業界の事業は、すぐに結果が出るものばかりではありません。
赤字が続いていても将来大きな収益が出る可能性もあります。
投資家をはじめとする関係者の意向も確認しつつ、事業継続性を見極める必要があるでしょう。
場合によっては、M&Aの専門家と相談することをおすすめします。
買収後の各種免許の取り扱いには注意が必要です。
買収する企業が所有している免許によっては、再度許認可の取得が必要なケースも少なくありません。
各種免許について詳細を事前に調べておくといいでしょう。
また免許以外にも
などについて取り扱いに注意しないといけません。
業界知識に長けた専門家に相談して、スムーズにM&Aが行えるように努める必要があるでしょう。
IT・通信業界で見られるM&Aの売却価格は、需要の高さから他の業界よりも高い傾向があります。
ただし、実際の売却価格は企業価値評価を行ったのちに、両企業の交渉によって決まるため一概にはいえません。
したがって、IT・通信業を営んでいる企業の売却相場を求めることは困難であるといえるでしょう。
また、中小規模の企業を売却する際には、時価純資産に2〜5年分の営業利益を足した値を基準とすることもあります。
企業価値評価について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
ここでは、実際にあったIT・通信業界のM&Aの事例を紹介します。
2016年6月、インターネット会社であるヤフー株式会社は、電子書籍販売サイトなどを運営する株式会社イーブックイニシアティブジャパンの株式を取得することを発表しました。
自社で運営している電子書籍サイトとの連携により、多くのコンテンツの提供を図りました。
2018年11月、フリマアプリを運営する株式会社メルカリは、自動車SNSサービスを行うマイケル株式会社を連結子会社化しました。
マイケル株式会社の持つノウハウを組み合わせて、車関係のカテゴリの充実を図りました。
2021年3月、人材紹介サービスなどを手掛けている株式会社マイナビは、企業向けビデオ通話プラットフォームである「FACEHUB」を提供しているFacePeer株式会社を子会社化しました。
子会社化によって、オンラインコミュニケーションによるサビースの向上を目指しました。
2017年8月に、電気通信事業者であるKDDI株式会社は、IoTプラットフォームである「SORACOM」を提供している株式会社ソラコムの発行株式を習得することを発表しました。
両社が持つ技術力のシナジーを狙い、世界に通用するIoTプラットフォームの構築を目指しました。
2021年5月、電子通信事業などで有名なソフトバンク株式会社は、インターネット広告事業を手掛けている株式会社イーエムネットジャパンの株式を公開買付けをすることを発表しました
イーエムネットジャパンを子会社化することにより、インターネット広告運用のノウハウを得てさらなる事業の発展を目指しました。
この記事の結論をまとめると
常に新しい技術力が求められるIT・通信業界のM&Aは、今後さらに活発になると考えられます。