投稿日:2022/07/15
更新日:2022/07/16
近年、後継者不足などの理由から、会社譲渡を検討する経営者が増えています。
会社譲渡には売却益を獲得できると言ったメリットもありますが、譲渡後もしばらくは経営に携わる可能性があるといったデメリットもあります。
長所と短所を理解して、適切な方法で会社譲渡を行いましょう。
この記事では、メリット・デメリット・流れ・相場など、会社譲渡を行う上で知っておくべき項目を解説します。
目次
会社譲渡とは、従業員などを除いた第三者に保有している株式を譲渡することです。
株式の譲渡によって、会社の経営権は第三者に移されます。
株式を譲渡して経営権を移すため、顧客や取引先との関係性、資産などに変化はありません。
会社譲渡は、従業員への負担も少なくスムーズな事業譲渡が可能です。
会社譲渡と似たような用語の中に、株式譲渡というものがあります。
株式譲渡とは、株式の譲渡によって経営権を移行するM&A手法の一つであり、会社譲渡と同じ意味で使用されることが多いです。
経営権を移行するためには、決議権のある株式を過半数所有している必要があります。
ほとんどの場合、中小企業が第三者へ事業を譲渡する際は、自社の全株式を譲受企業に譲渡して経営権を承継します。
会社譲渡を行う目的は、主に以下の4つが挙げられます。
近年では、後継者がいないことで廃業を検討している企業が増えています。
子供や従業員への承継を検討していた場合でも、本人が望んでいなかったことによって断られてしまうこともあるでしょう。
後継者がいない場合の対処法として、会社譲渡による事業承継は有効です。
後継者がいない中小企業などでは、会社譲渡によって事業の存続を図るケースが多く見られています。
会社譲渡によって事業を第三者へ譲渡すると、対価として創業者利益を獲得することができます。
獲得した利益を元手に資産を運用すれば、早期退職を図ることも可能です。
経営者の立場で企業運営を行っている場合、従業員や取引先へ迷惑をかけることを気にかけてしまい、離職という選択が取れないこともあるでしょう。
会社譲渡では、第三者へ経営権を譲渡できるため、それらを維持しつつ早期退職を図ることができます。
新たに事業を立ち上げるためには、多額の資金が必要になることがあります。
新規事業を立ち上げるための資金調達法として、会社譲渡による資金獲得は有効です。
会社譲渡では、企業の価値に見合った売却益を獲得できるため、新たな事業を立ち上げるための一助になるでしょう。
新規事業を始める資金がないため、既存の企業を売却するのも一つの方法です。
近年では、少子化の影響によって労働者の数は減少傾向にあります。
とくに地方などでは労働者の減少が顕著なため、人材不足によって事業が存続できないこともあるでしょう。
人材不足によって事業経営が難しくなり、第三者へ会社譲渡するケースも増えています。
また、譲受側の企業が、人材不足の解消を目的に株式取得を図ることもあります。
会社譲渡を行うことは、主に以下のメリットがあります。
会社譲渡で第三者へ事業を譲渡することによって、後継者問題を迅速に解決することができます。
通常、自社内の従業員へ承継する場合は、経営を任せられるように教育する時間や手間がかかります。
会社譲渡によって事業承継を行えば、教育に関する時間を抑えて後継者問題をスムーズに解決することが可能です。
経営者が体調不良などによって突然事業を行えなくなった場合でも、第三者へ承継することで廃業せずに済むというのは大きなメリットといえるでしょう。
経営不振などの理由で事業の運営が難しくなったことにより、廃業せざるおえないこともあるでしょう。
廃業した場合、従業員は新たな仕事を探さなければなりません。
長年ともに仕事をしてきた従業員の生活を脅かすことは、経営者にとっても避けたい出来事でしょう。
会社譲渡によって大手企業の傘下として事業を運営すれば、安定した資本のもと経営を行うことができます。
また、企業同士のノウハウを共有することで、事業の拡大を図ることもできます。
通常、廃業する場合には、各種手続きや資材の破棄などにコストが発生します。
会社譲渡では資材なども承継するため、廃棄コストが掛からない上に利益を獲得できます。
獲得した利益を元に、アーリーリタイアや新規事業の立ち上げを図ってもよいでしょう。
会社譲渡は廃業と比較するとメリットが多いため、事業の継続が難しい方は一度検討してみるのがおすすめです。
中小企業などの場合は、金融機関から資金援助を受けるために、個人保証を行っていたり、個人資産を担保にしていることもあるでしょう。
経営状況が生活と大きく結びついているため、精神的な負担になっていることも少なくありません。
会社譲渡及び株式譲渡では、譲渡企業が抱えている負債なども合わせて承継することもできます。
個人保証などからの開放を目的としている場合は、譲受企業との交渉時に条件として提示しましょう。
会社譲渡によって生じるデメリットは、以下の4つが挙げられます。
株式譲渡が完了した後でも、すぐに経営から退くことができるとは限りません。
第三者が社長などになった後は、しばらく会長などのポジションに就き、経営を支えるために拘束されることもあります。
これは、統合後に事業が回らなくなるのを防ぐ目的として行われます。
拘束される期間は契約によってさまざまですが、定められた間は会社をやめることができないため注意が必要です。
会社譲渡を検討していた場合でも、希望している条件で譲り受けてもらえる企業がすぐに見つかるとは限りません。
会社譲渡にかける時間が長ければ、それだけ負担も増えるでしょう。
買収してくれる企業が見つからない場合、希望条件等を変更するといった対処が必要になります。
また、会社譲渡にかける時間をあらかじめ長めに設けておくという対処も有効です。
基本的に、会社譲渡を行う際は、情報が外部に漏れないように行います。
これは、外部に広まる事によって生じるリスクを回避するためです。
例えば、従業員に会社を譲渡する噂が広まれば、社内に混乱が起きて集団離職が発生するかもしれません。
取引先や顧客などに広まった場合は、経営がうまく言ってないと思われてしまい、不信感を抱かせてしまうこともあります。
情報漏洩による損害を受けないためにも、M&Aに関する情報の取り扱いには充分に注意しましょう。
会社譲渡によって事業を承継する場合、譲渡企業側が抱えている債務は譲受企業側に引き継がれます。
そのため、譲受企業は賃借対照表に記載されていない債務である「簿外債務」を引き継ぐ恐れがあります。
譲受企業は、簿外債務がないかを把握するためにも、企業監査であるデューデリジェンスは入念に行いましょう。
また、譲渡企業側は、簿外債務を譲受企業に伝えていない場合は賠償請求を求めれることもあります。
賠償請求されるリスクを無くすためにも、自社の調査は徹底的に行い、適切な情報を開示しましょう。
会社譲渡を行ったあとは、会社を取り巻く環境にどのような変化があるのでしょうか?
ここからは、会社譲渡をした後の処遇に関して解説していきます。
会社譲渡を行った後は、譲受企業に経営権が譲渡されます。
経営権の譲渡後、代表者のポジションには、譲受企業から派遣された人材が着くことが一般的です。
退任する前代表者は、すぐに事業から撤退するケースと、一定期間会社に留まって引き続き事業を行うケースがあります。
基本的に、代表者の処遇に関しては交渉時に決定するため、早めに事業から退きたい場合などは事前に伝えておきましょう。
譲渡側の従業員に関しては、譲受側の企業に全て引き継がれます。
給料面などの処遇に関しては、以前と変わらないケースや、改善されるケースが多く見られます。
これは、買収によって従業員の士気の低下を招き、離職するリスクを抑えるためです。
注意点として、給与面などは悪化しない可能性は高いですが、処遇に関しては譲受企業ときちんと話し合っておきましょう。
最低給与額などを設定しておくことで、万が一のトラブルを回避できる可能性が高まります。
多くの場合、譲渡後も企業名はそのまま使用されます。
そのまま使用されることが多い理由は、顧客や取引先、従業員の混乱を避けるためです。
ただし、譲受企業のグループであることが分かることによってメリットがある場合は、企業名が変更されることもあります。
希望している処遇がある場合は、譲受企業との交渉の際に話し合っておきましょう。
既存顧客や取引先との契約は、譲受企業へと譲渡されます。
一般的に、名義のみの変更を行い、契約内容を変えるといったことは行いません。
注意点として、中小企業などの場合は、前代表者の人間性によって取引先との関係性を構築していることがあります。
代表者が変わってしまうことによって、提携を打ち切られてしまうといったことも考えられます。
顧客や取引先に不信感を与えないためにも、会社譲渡について説明する際は、前任の代表者もサポートをしましょう。
会社譲渡は、主に上記の流れで進めていきます。
それぞれの項目を理解して、会社譲渡をスムーズに進めていきましょう。
ここからは、譲渡側企業の目線から、会社譲渡を行うための手順を解説していきます。
まずは、会社譲渡を行う理由などを明確にしておきます。
会社譲渡を行うことは自社にとって最適な判断なのか、会社譲渡によってどういった目的を達成したいのかなどをあらかじめ考えることが大切です。
それらを考えておくことで、譲受企業の選定時に最適な相手企業を選ぶ基準が生まれます。
交渉の際も、自分が譲れない点や折れても良いポイントが明確になるため、希望に合う条件で話を進めることができるでしょう。
また、会社譲渡を行う際のスケジュールを建てておくことで、効率よく計画的に進めていくことができます。
会社譲渡を行う目的を明確にした後は、M&A仲介会社へ依頼しましょう。
会社譲渡を行うためには、財務に関する手続きや契約書の締結などを行う必要があるため、専門的な知識を要します。
自社内だけで進めていくことは容易ではないため、仲介会社などの専門家からサポートを受けるケースが一般的です。
M&A仲介会社は、中小企業などの会社承継に関してノウハウを持っているため、それらの手続きをスムーズに進めることができます。
仲介会社などの専門家に依頼した後は、会社譲渡を行う相手企業の選定を行います。
個人で会社譲渡を行っている場合は、関わりのある企業から選ぶこともありますが、適切な相手が身近にいるとは限りません。
仲介会社に依頼していた場合は、買い手となる企業を紹介してもらうことができます。
自社が会社譲渡によって何を実現したいかというのを伝えて、最適な買い手候補を選択してもらいましょう。
希望している条件を満たす企業が見つかったら、秘密保持契約を結んでトップ面談を行います。
トップ面談とは、会社を譲渡する側の企業と譲り受ける側の企業の経営者同士が、直接顔を合わせて面談を行うことです。
トップ面談の目的は、相手側の人間性やビジネスに対する考え方を把握して、統合後にシナジーを生み出せるかを見極めることです。
また、仲介会社に依頼していた場合、買収価格などの条件交渉はアドバイザーが経験に基づいて行います。
金銭的な話をして相手に緊張感を与える心配が無いため、相手の人間性などの見極めに集中できるでしょう。
会社譲渡を行うことが決定した後は、基本合意契約書の締結を行います。
基本合意契約書とは、譲渡価格や今後の流れに関して、両企業が同意したことを証明するための書類です。
注意点として、基本合意書は基本事項に同意したことを示す書類であるため、法的な拘束力はありません。
後述するデューデリジェンスの結果次第では、譲渡価格が変わることもあります。
基本合意書の締結を行った後は、買い手企業が会社譲渡を行う企業に対してデューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスとは、対象となる企業の実態を把握することで、買収時のリスクや適切な買収価格を調査することです。
会社譲渡の際は、譲渡企業が所有している負債も譲受企業に引き継がれます。
買収によって想定外のリスクを負わないためにも、デューデリジェンスの実施は必要不可欠です。
また、デューデリジェンスの実施には譲渡企業の協力も必要であるため、スムーズに進めるためにも協力しましょう。
デューデリジェンスの実施が完了した後は、結果を元に再度交渉を行います。
交渉によって会社譲渡の条件を話し合い、両企業が同意した場合は最終合意契約を締結します。
最終合意書は基本合意契約書と異なり、法的な拘束力があるため注意が必要です。
従業員の雇用条件や譲渡後の統合プロセスなどについて、お互いが納得するように話し合いましょう。
最終合意契約の締結が完了した後は、適切なタイミングで会社譲渡が成立したことを公表します。
社内の人間に伝える際は、可能な限り全ての従業員に同時に伝えて、混乱を起こさないように対処しましょう。
買い手企業に対する疑問点なども生じることがあるため、相手の責任者からも説明をしてもらうと、従業員が感じる不安を抑えることができます。
また、大手企業の場合、マスコミなどのメディアにはこのタイミングで伝えます。
会社譲渡を実施した後は、会社譲渡を行うための手続きを進めて行きます。
各種手続きが終わったら、会社譲渡は完了です。
また、会社手続きの詳しい内容は、下記の項目にて解説します。
会社譲渡の手続きの方法は、株式に譲渡制限が設けられているかによって異なります。
譲渡制限とは、株式の売買に制限をかけることで、希望していない第三者へ株式が渡ることを防ぐために存在しています。
非上場会社の場合は、企業を乗っ取られる恐れがあるため、譲渡制限を設けられていることが一般的です。
譲渡制限が設けられた企業の株式を移転させるためには、会社からの承諾を得なければなりません。
ここからは、譲渡制限が設けられている企業が会社譲渡を行う方法を紹介していきます。
まず最初に、株式の譲渡行うために会社譲渡承認請求を実施します。
会社譲渡承認請求とは、譲渡制限が設けられている企業の株式を取得するために、対象となる企業から承認をもらう手続きのことです。
会社譲渡承認請求を行う際は、株式の枚数や譲渡相手の情報を載せた書類を提出します。
また、経営者と株式譲渡を行う人物が同一であった場合は、あらかじめ合意を得ることが可能です。
会社譲渡承認請求が完了した後は、株主総会を開催します。
取締役会設置会社である場合は、取締役会が承認機関となります。
株主総会または取締役会の開催によって、会社譲渡承認請求の承認・不承認を決定します。
株主総会または取締役会の開催によって承認された場合は、株式譲渡契約を締結します。
基本的に、締結時には株式数や対価などを記載した、株式譲渡契約書を作成するのが一般的です。
株式譲渡契約の締結が完了した後には、株主名簿の書き換えを行います。
株主名簿とは、株式を所有している相手の基本的な情報を記載した帳簿です。
また、株式を発行していない企業の場合は、書き換え請求を譲渡企業と譲受企業が共同に行う必要があります。
株式譲渡による事業承継は、株式の譲渡行うだけでは成立するわけではないので注意しましょう。
株主名簿の書き換えが終わったら、株主名簿記載事項証明書を交付して、名義が書き換えられているかを確認しましょう。
ここまでの手続きを済ませることで、会社譲渡を完了させることができます。
会社譲渡及び株式譲渡を行う際は、さまざまな書類の提出が求められます。
提出する書類の記載事項に不備が生じないように、仲介会社などの専門家にサポートを依頼しましょう。
会社譲渡で必要な書類は、以下の9つが挙げられます。
書類名 | 概要 |
株式譲渡承認請求書 | 株式を譲渡する際に発行会社に提出する書類 |
株式譲渡承認通知書 | 株主が譲渡企業から譲受企業に株式の譲渡を承認したことを通知する書類 |
株式譲渡契約書 | 株式譲渡に関する契約内容が記載された書類 |
株主名簿 | 株主に関する基本的な情報が記載されている帳簿 |
株式名義書換請求書 | 株主名簿の書き換えを依頼するための書類 |
株主名簿記載事項証明書 | 株主名簿の書き換えができているかを確認するための書類 |
株主名簿記載事項証明書交付請求書 | 株主名簿記載事項証明書を請求するための書類 |
株主総会(取締役会)招集通知 | 株主総会または取締役会を開催することを通知するための書類 |
株主総会(取締役会)議事録 | 株主総会または取締役会で決議した内容を記載した議事録 |
会社の譲渡価格は、企業が所有する資産価値や負債によって大きく異なります。
企業ごとに譲渡価格に幅があるため、相場というものは一概に決めることができません。
ただし、自社に対して企業価値評価を行うことで、おおよその売却価格を知ることができます。
企業価値評価とは、企業や株式の価値を算出するための手法の総称です。
会社の売却価格は、企業価値評価の結果を参照に、譲受企業との交渉によって決定します。
算出方法を把握して、適切な譲渡価格を見極めたうえで交渉を進めましょう。
算出するためのアプローチ方法は、「インカムアプローチ」「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」の3つに分類することができます。
ここからは、それぞれのアプローチ方法について個別に解説していきます。
また、企業価値評価について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
インカムアプローチとは、起業が将来的に獲得すると予想されている収益を元に、企業価値を算出する方法です。
将来的に生み出す利益は、収益から支出を引いて算出されるキャッシュ・フローなどを参照にして求めます。
インカムアプローチによる算出方法は、主に以下の3つが挙げられます。
DCF法 | フリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出する手法 |
収益還元法 | 事業計画書を参考に将来生み出す利益を算出する手法 |
配当還元法 | 将来的に予測される配当金額を参照に企業価値を算出する手法 |
コストアプローチとは、企業が所有している純資産額の値をベースに、企業価値を算出するアプローチ方法です。
コストアプローチは資産に基づいて計算するため、客観性が高い算出結果を求めることができます。
ただし、企業が生み出す将来的価値が、算出内容に含まれていないため注意が必要です。
コストアプローチによる算出方法は、主に以下の2つが挙げられます。
簿価純資産法 | 帳簿に記された純資産額を参照に企業価値を評価する手法 |
時価純資産法 | 企業が所有している資産を時価に直して企業価値を評価す手法 |
マーケットアプローチとは、株式市場や買収事例などを元に、企業価値を評価する方法です。
マーケットアプローチは公表されている情報が算出のベース金額となるため、他のアプローチ方法と比較すると容易に求めることができます。
ただし、手法によっては上場企業以外は使用できないものもあるので、自社にあった方法を選択しましょう。
マーケットアプローチによる算出方法は、以下の4つが挙げられます。
類似企業比較法 | 譲渡企業と類似した企業の株価をベースに企業価値を評価する手法 |
類似取引比較法 | 譲渡企業と類似した企業の取引事例を基準に算出する手法 |
市場株価法 | 株式市場に公開されている株価によって企業価値評価を行う手法 |
類似業種比較法 | 自社が非上場企業の場合、同業種の株価を参考にして企業価値を評価する手法 |
会社譲渡によって企業を高く売りたいと考えている場合は、どのようにして売却益を向上させることができるのでしょうか?
売却益を挙げるための大きなポイントは、譲受企業に買収するメリットを提示することです。
ここからは、自社を高く売却する方法について3つ紹介します。
自社を高く売りたいと考えている場合、自社の強みや独自性を把握しておくことは重要です。
自社の強みを譲受企業に伝えることができれば、譲渡価格を挙げてでも買収したいと考えるでしょう。
他社にはない強みがあれば、他の企業と比較するときに自社を選んで貰える確率が高まるかもしれません。
自社についての知識の深さは、M&Aを成功させるための大切な要素です。
会社の売却価格を決める企業価値評価は、企業が生み出す将来的価値を加味して算出を行います。
経営不振の状態で売却した場合は、将来的に生み出す利益が少ないと判断されることもあるでしょう。
売却益の獲得を目的として企業譲渡を行う場合は、最も利益を生み出しているタイミングで売却するのも有効です。
事業を行う上で利益が出ていることは、譲受企業への充分なアピールポイントになります。
会社譲渡による事業承継では、譲渡企業が抱えている負債も譲受企業に引き継がれます。
予想外の損失を産まないためにも、譲受企業は買収リスクの有無を徹底的に確認することでしょう。
自社の財務状況などを明確にして、買収リスクが無いことをアピールできれば、交渉もスムーズに進み企業を高く売れる可能性が高まります。
譲受企業からの信頼を得るためには、誠実な態度で会社譲渡を行うことが大切です。
また、自社の問題点が後から発覚した場合は、買収価格の低下だけではなく交渉の破綻が生じる可能性があるので注意が必要です。
会社譲渡を行う前には、以下の4点を確認しておきましょう。
ここからは、会社譲渡を行う際の注意点について個別に解説します。
企業を経営していく上で、融資を受けるために経営者が連帯保証人となっていることもあるでしょう。
会社譲渡によって経営者が変更される場合は、連帯保証人を新たな経営者に書き換える必要があります。
新たな経営者が借入金を引き継いだ後は、譲受企業が一括して返済するケースが多く見られます。
M&A後に生じるリスクを回避するためにも、連帯保証に関する内容は契約書に記載しておきましょう。
会社譲渡によって企業を売却した場合、獲得した売却益に応じて税金の支払義務が発生します。
発生する税金の額は、個人株主か法人株主なのかによって異なります。
個人株主に発生する税金は所得税と住民税であり、合計すると譲渡益に20.315%掛けた金額の支払いが必要です。
法人株主の場合は、獲得する利益に応じて、おおよそ30~40%程度の税金が発生します。
株式の移動を伴う会社譲渡には、状況に応じた税金が発生することを覚えておきましょう。
会社譲渡によって第三者に事業を譲渡した場合は、競業避止義務によって同事業を行うことができなくなります。
競業避止義務とは、譲渡企業が再度同じ事業を行うことによって、譲受企業に不利益が生じないようにすることを目的として定められている事項です。
会社譲渡後も同事業を行う可能性がある場合は、会社譲渡を行ってよいのかを充分に精査しておく必要があります。
会社譲渡を行う際には、全ての手続を個人で行うのは困難であるため、専門的な知識を要する仲介会社のサポートを受けることをおすすめします。
ここからは、仲介会社のサポート内容と、依頼するメリットについて紹介していきます。
M&A仲介会社の主なサポート内容は、以下の3つが挙げられます。
個人で会社譲渡を進めていく場合、企業の譲渡先を探すのは容易ではないでしょう。
M&A仲介会社は、企業の譲渡・譲受を希望しているさまざまな企業とのコネクションを有しています。
M&Aにおいて最も大切なことは、統合後のシナジー発揮による利益の獲得です。
M&A仲介会社では、専門的な知識を有するアドバイザーが、経験に基づいてシナジーを発揮できる相手企業を選定し紹介します。
会社譲渡を行うためには、作成する必要がある書類が複数存在します。
専門的な知識なども必要になるため、個人で作成を行うには負担が大きいでしょう。
M&A仲介会社では、書類の作成の承っているため、必要な手続きを過不足なく進めることができます。
会社譲渡を行う際には、相手企業との交渉は必要不可欠です。
譲渡企業・譲受企業ともに自社の利益を追求することは当然ですので、交渉が長引くことや、会社譲渡自体が流れることもあるでしょう。
M&A仲介会社は、譲渡企業・譲受企業のどちらもサポートするため、中立の立場から適切なアドバイスをもらうことができます。
どちらか一方が不利な状況にはならないため、M&Aに対する知識がない方でも安心です。
M&A仲介会社に依頼するメリットは、以下の3つが挙げられます。
個人で会社譲渡を行うためには、書類作成や交渉などを全て自分で行う必要があるため、事業と並行して行うことは困難です。
仲介会社に依頼することによって、それらにかける手間を抑えることができます。
また、仲介会社はM&Aに関する豊富な知識を有しているため、スピーディーに会社譲渡を行うことが可能です。
会社譲渡にかける時間を抑えて、スムーズな事業承継を実現できることは、仲介会社に依頼する大きなメリットです。
会社譲渡を行うためには、さまざまな手続きや準備が必要になります。
会社譲渡を個人で行う場合は、一部の手続きを忘れてしまうなどによってトラブルに発展する恐れがあります。
会社譲渡の流れを理解している仲介会社に依頼すれば、トラブルの発生を未然に防ぎやすくなるでしょう。
また、予想外のトラブルが発生した場合でも、ノウハウを有している仲介会社であれば、適切な対処方法をアドバイスしてもらえる可能性が高まります。
企業の売却価格は、企業価値評価を基準にして行われます。
個人でおおよその目安金額を算出することは可能ですが、より正確な値を算出したい場合は、仲介会社への依頼がおすすめです。
自分で算出した金額が相場より安かった場合は、当然ながら損をするでしょう。
反対に、相場より高かった場合は、譲受を希望する企業が現れにくくなるかもしれません。
適切な企業価値を算出してもらえることも、仲介会社に依頼するメリットとして挙げられます。
また、仲介会社は譲渡企業・譲受企業の間に挟まりサポートをするため、交渉によって譲渡価格が大きく下がらないという強みもあります。
ACコンサルティングでは、会社譲渡に関する仲介サービスを完全成功報酬型で提供しております。
会社譲渡に関するご相談を無料で承っているので、会社譲渡を検討している方は、ぜひ一度お問い合わせください。
会社譲渡及び株式譲渡には数多くの取引事例があり、今後も頻繁に行われることが予測できます。
ここからは、株式譲渡の事例を5つ紹介します。
2022年6月、ソフトウェア設計などを手掛けている株式会社ディ・アイ・システムは、ウイーズ・システムズの全株式を取得し完全子会社化したことを発表しました。
ウイーズ・システムズはソフトウェア開発などにおいて高い技術を有しており、子会社化によってシナジーの発揮を図りました。
2019年8月、中古商品の販売事業を手掛けるブックオフグループホールディングス株式会社は、株式会社ジュエリーアセットマネジャーズの全株式を取得することを発表しました。
ジュエリーアセットマネジャーズは貴金属の買取事業などを手掛けており、子会社化によって新たな顧客基盤の取得を図りました。
2019年5月、化学品を取り扱う商社である三洋貿易株式会社は、新東洋機械工業株式会社の株式を全株式を取得し子会社化することを発表しました。
工業用ポンプを取り扱う新東洋機械工業を子会社化することで、三洋貿易の子会社が行っているマイクロポンプ事業とのシナジー発揮を図りました。
2019年5月、ファッション事業やタイヤ事業など幅広く手掛けている株式会社コメ兵は、株式会社フォーバイフォーエンジニアリングサービスを子会社化することを発表しました。
フォーバイフォーエンジニアリングサービスはホイールの企画販売などを手掛けており、グループ化によってタイヤ事業の強化を図りました。
2018年12月、個別指導塾運営を展開している株式会社スプリックスは、株式会社エデュカの全株式を取得し完全子会社することを発表しました。
エデュカはフランチャイジーとして学習塾の運営に携わっており、子会社化によって営業基盤の拡大及び強化を図りました。
会社譲渡によって事業承継を行うことで、後継者問題の解決だけではなく、売却益を獲得することができます。
従業員の雇用も守ることができるため、廃業と比較すると大きなメリットがあります。
承継者がいないなどの理由で廃業を検討している方は、是非一度会社譲渡を検討してみてはいかがでしょうか。
会社譲渡を行う際は、専門知識が必要な手続きがあるため、仲介会社などへの依頼がおすすめです。