投稿日:2022/06/22
更新日:2022/09/24
近年、広告代理店業界のM&A需要は高まっています。
広告代理店の種類は「総合広告代理店」や「専門広告代理店」や「ハウスエージェンシー」が挙げられます。
企業によってさまざまな媒体で広告を出していますが、その中でも注目を集めているのがWEB媒体を利用した「インターネット広告」です。
今後は、インターネット広告を中心としたM&Aが活発に行われていくでしょう。
この記事では、広告代理店のM&A動向や特徴、買収・売却のメリットなどを紹介します。
目次
広告代理店とは、クライアントから依頼された広告業を代理で行う企業の総称です。
広告を出す媒体は、テレビや看板、インターネットやラジオなど多岐に渡ります。
企業によって対応している業務が異なり、企画から制作までを自社で一貫して行っている場合や、特定分野でのサポートを行っている場合など、行っている業務の内容には幅があります。
広告代理店は、主に以下の3つに分類することが可能です。
広告代理店は業界全体の市場規模は縮小してきていますが、WEB媒体を利用したインターネット広告の市場規模が急激に拡大しています。
インターネット広告の規模拡大に伴い、大手企業を中心とした広告代理店のM&Aは頻繁に行われることが予測できます。
加えて、近年では海外市場への参入を図る企業が増えており、業界の規模は国内外問わず拡大していくでしょう。
ここでは、広告代理店の特徴やM&A動向について解説します。
経済産業省が発表してデータによると、広告代理店業界では、2016年のピークから徐々に市場規模が収縮しています。
特に、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、前年度から売上が約9.3%減少しました。
2021年度には売上推移が改善されていますが、業界全体の市場規模を拡大するのは難しい状況が続いています。
これらの原因は、「テレビ」「ラジオ」「雑誌」「新聞」の四大マスメディアでの広告売上が減少していることが挙げられます。
その中でもテレビ広告の減少は著しく、若者のテレビ離れなどの影響を大きく受けています。
広告業界は、テレビなどに変わる新たな媒体への参入が課題といえるでしょう。
業界全体の市場規模が下がり続ける中で、インターネット広告の市場は拡大を続けています。
2020年は新型コロナウイルスの影響により4大マスメディアでの広告売上は減少しましたが、インターネット広告の売上は約7.3%増加しました。
2021年度の売上も前年から約24.7%増加しており、来年度以降も市場規模が拡大することが予想されます。
インターネット広告の売上増加の理由は、you tubeなどの動画サービスや、インスタグラムといったSNSの普及が大きく影響していると考えられるでしょう。
これらの要因から、インターネット広告は4大マスメディアに代わる新たな広告媒体として注目を集めています。
広告業界は、インターネット広告事業への参入が事業拡大のカギになるといえるでしょう。
広告業界は、インターネット広告市場の拡大によって環境が大きく変化しました。
近年のM&A動向として、大手企業が技術を獲得するために、インターネット広告に強みを持つ企業の買収を図る時代になっています。
自社にない強みを獲得するためにも、M&Aによる買収は事業領域拡大の有効な手段といえるでしょう。
大手企業による買収が頻繁に行われていることにより、広告業界は大手企業と中小企業の格差が生じることが予想されています。
中小企業は、大手企業にはないインターネット広告での強みを持つことが、事業存続のポイントになるといえるでしょう。
また、4大マスメディアでの広告業を営んでいた企業は、インターネット業界への参入のために事業を売却し、傘下として事業を存続するケースも増えてきています。
M&Aが頻繁に行われている広告代理店業界ですが、近年では海外市場への参入を図るケースが増えてきています。
海外への参入を果たすことで、大手の広告代理店は今以上にシェアを獲得するでしょう。
日本の市場は少子化や不景気の影響から収縮することが予想されるため、広告代理店は海外への進出も事業拡大のカギになるかもしれません。
インターネット広告が主流ではない国に参入すれば、市場を独占することによって大幅な利益を獲得できることが予想できます。
実際に、広告代理店業界の大手である電通は、海外市場での売上が全体の約6割を締めています。
大手の広告代理店は、早い段階から海外での地盤を造り、他国での商売に関するノウハウを取得する動きが活発になるでしょう。
国内には、数多くの広告代理店があり、今後もシェアを拡大していくことが予想されます。
ここでは数多くある広告代理店の中で、代表的な企業を3社紹介します。
株式会社電通グループは、1901年に創業した業界最大手の広告代理店です。
国内160社・海外750社の合計900社が一つになって運営しており、国内外を問わず事業を行っています。
テレビCMや映画製作など活動は多岐に渡っており、広告業界の国内シェアは約24%と日本でもトップラスです。
また、売上総利益の約6割は海外事業であることから、海外市場でも圧倒的なシェアを誇っている広告代理店といえるでしょう。
資本金 | 746億981万円 |
売上 | 5.2兆円 |
代表取締役 | 社長執行役員 CEO 五十嵐 博 副社長執行役員CFO 曽我 有信 |
利益 | 9,765億円 |
時価総額 | 1,240,163百万円 |
従業員数 | 約65,000人 |
博報堂DYHDは、1895年に創業した広告代理店業界で2番目のシェアを誇る大手企業です。
業界の国内シェアは全体の約21%を締めており、電通に継ぐ大手広告代理店として有名です。
広告業以外にも、メディアの運営やコンサル事業なども行っており、幅広い事業を手掛けています。
歴史のある企業ですが、グループ会社の従業員からアイデアを募集して事業化を図るといった取り組みも行っており、新たな試みを実践する企業として有名です。
資本金 | 107億円 |
売上(連結) | 3806億2400万円 |
代表取締役 | 戸田 裕一 |
利益 | 212億6,600万円 |
時価総額 | 4670.82億 |
従業員数 | 25,522名 |
株式会社サイバーエージェントは、広告事業やメディア事業を手掛ける1988年に誕生した企業です。
サイバーエージェントはインターネット広告事業を中心に、ネット媒体にてさまざまな活躍をしています。
広告事業は数多く手掛けている事業の一つであり、アメーバブログやモバゲーなどメディア領域での活躍も目覚ましい企業です。
WEB媒体にノウハウを持った企業として、今後も発展していくことが予想されます。
資本金 | 6664億6000万円 |
売上 | 4786億円 |
代表取締役 | 藤田 晋 |
利益 | 1043億8100万円 |
時価総額 | 6528.67億 |
従業員数 | 5,282人 |
環境の変化が激しいネット広告業界ですが、抱えている課題や、将来的に期待されていることはどのようなものが挙げられるでしょうか?
ここでは、広告代理店の課題や将来性について解説します。
4大マスメディアでの広告業を中心に行ってた企業は、インターネット広告行への参入が課題といえるでしょう。
広告業界ではインターネット広告のシェアが伸び続けており、大手企業もIT技術の取得に力を入れ始めています。
従来のやり方ではシェアを伸ばすことが難しくなるため、参入資金がない中小企業は資本の獲得も課題といえるでしょう。
M&Aによる子会社化や業務提携によって、インターネット広告業への参入を図っている企業も増えています。
インターネット広告業への参入を目的としたM&Aは、今後も増え続けることが予測できます。
近年の広告業界はインターネット広告での売上が上昇しているため、通信技術の進化によってさらなる市場拡大が期待できます。
近年では、5Gの普及によって市場規模が拡大することが予測できるでしょう。
5Gとは5世代目の移動通信システムのことであり、4Gと比較すると約20倍の通信速度といわれています。
加えて、データを受け取るときの遅延が少ないという特徴もあり、スマートフォンが普及している現在において大きな技術革命といえるでしょう。
動画広告など容量の大きいインターネット広告が、5Gによって更に普及する可能性があります。
環境の変化が激しい広告代理店ですが、M&Aを行うことは具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここからは、売り手企業と買い手企業に分けて、M&Aを行うメリットについて解説します。
広告代理店を売却するメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
1つ目のメリットは、M&Aによって大手企業の傘下に加われる可能性があるという点です。
国内シェアの大半を大手企業が締めている広告代理店業界では、大手グループへの参入による事業存続を図る企業が増えています。
環境の変化によって売上が落ちたが、新規事業への参入を図る資金がない場合は、M&Aによる子会社化は有効な手段といえるでしょう。
大手企業から資金の援助を受けることで、事業の立て直しが期待できます。
2つ目のメリットは、M&Aによって事業の存続を図れるという点です。
事業を引き継ごうと考えていても、後継者がいないことによって廃業という選択肢を取る企業は増え続けています。
廃業をしてしまった場合、従業員は新たな働き口を見つけなければなりません。
後継者がいない場合、事業存続の手段としてM&Aは有効です。
後継者を見つけるためのM&Aは、広告代理店に限らず多くの業界で行われています。
また、資金不足による廃業を迫られていた場合にも有効な手段といえるでしょう。
3つ目のメリットは、M&Aによって事業を売却すると、企業価値に応じた売却益を獲得できるという点です。
自社の事業の一つとして広告代理店を経営していた場合、売却益を他の事業に回すことで利益の拡大を図ることができます。
運営する事業が減ることで、他の事業に避ける人員や時間も増えるでしょう。
また、売却によって獲得した資金を老後の資金に当てることも可能です。
老後の資金がないことによって事業を続けている場合には、M&Aによって事業運営から退くことができます。
事業売却による資金の獲得は、M&Aによる大きなメリットといえるでしょう。
4つ目のメリットは、M&Aによって事業領域を拡大できるという点です。
4大マスメディアでの広告代理店を運営していた場合は、インターネット広告への参入が今後の課題と考えられています。
しかし、新規にインターネット広告への参入を図るには、多くの時間や資金が必要になります。
環境の変化が激しい広告代理店業界では、参入にかかるコストや時間はできるだけ抑えたいと考えるのは当然のことでしょう。
M&Aによってインターネット広告を運営している企業に加われば、それらの問題を解決することができます。
自社が持つノウハウを利用してシナジーを発揮できれば、広告代理店業界でもさらなる利益の拡大が期待できます。
広告代理店を買収するメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
1つ目のメリットは、自社が所有していない技術をスムーズに獲得できるという点です。
インターネット広告での利益拡大が望まれている広告業界は、新たなIT技術の獲得が収益拡大のカギとなるでしょう。
しかし、技術を開発するための資金や、ITに詳しい人材を新たに育成することは容易ではありません。
そのような問題の解決手段として、M&Aによる企業買収が挙げられます。
他社が自社にない技術を所有している場合は、買収によってスムーズに技術を獲得することが可能です。
ITに詳しい人材がいる企業を買収すれば、育成にかかる時間やコストを抑えることができるでしょう。
広告代理店業界では、大手企業がサービスの多様化を目的とたM&Aを実施するケースが増えてきており、今後もこのような買収事例が増えることが予想されます。
2つ目のメリットは、インターネット広告業界への参入を図れるという点です。
自社が4大マスメディアを中心とした広告代理店を運営していた場合、インターネット広告業を新たに始めることは容易ではありません。
新たにインターネット広告業を始める場合は、M&Aによる買収は効率的な手段です。
また、自社が広告業と異なる事業を運営していた場合も同様です。
ハウスエージェンシーと呼ばれる自社専門の広告代理店を持つことで、効率的に自社の宣伝をすることができます。
3つ目のメリットは、海外市場への参入ができるという点です。
日本は経済不況や少子化によって、市場規模が収縮していくことが予想できます。
買収によって海外市場への参入ができれば、市場規模は安定して拡大していく可能性があるでしょう。
大手企業を中心に、海外での事業拡大を図るM&Aは頻繁に行われています。
4つ目のメリットは、広告代理店業界に専門的な知識をもつ人材を確保できるという点です。
自社の利益を増幅させるためには、事業に関するノウハウを持つ人材の確保はかかせません。
しかし、自社で優秀な人材を育成するにはある程度の時間がかかります。
そのような人材不足を解消する手段として、M&Aを行う企業は増えています。
少子化による人材不足が懸念されている現代では、今後も人材獲得を目的としたM&Aが活発に行われるでしょう。
広告代理店業界では、さまざまな要因から今後もM&Aが頻繁に行われることが予測できます。
買収・売却を成功させるためにも、以下のポイントは抑えておきましょう。
M&A全般において、売り手企業の強みを理解しておくことは売却・買収を成功させるための大事な要素です。
自社が売り手企業側の場合は、自社の強みを買い手にアピールできれば、M&Aが成立する可能性も上がるでしょう。
企業の強みは売却価格にも影響するため、より多くの売却益を獲得できる可能性もあります。
自社が買い手企業の場合は、売り手企業の強みを理解できれば、シナジーを生み出せる可能性が高い企業を見つけやすくなるでしょう。
買い手・売り手ともに、売り手企業の強みを理解しておくことが大切です。
環境の変化が早い広告業界は、スムーズにM&Aを行うことも重要なポイントです。
M&Aに関して時間をかけすぎてしまうことは、買い手企業・売り手企業にとっても負担になるでしょう。
M&Aを行う負担を減らすためにも、事前準備を入念に行いスムーズに終わらせることは大切です。
注意点として、買収・売却企業を焦って決めれば良いという訳ではありません。
マッチング候補が見つかったからと行ってすぐにM&Aを行うと、望んでいた利益が得られずに可能性もあります。
大切なのは、相手企業に求める事項や、自社の強みを見つけておくなどの事前準備です。
M&Aの目的を明確にすれば、条件に合う相手とスムーズにマッチングできるでしょう。
広告代理店のM&Aを実施するためには、さまざまな専門知識が必要です。
M&Aを成功させるためにも、仲介会社にサポートを依頼することをおすすめします。
M&A仲介会社によって手数料やサービス内容はことなるため、違いを把握して自分にあった仲介会社を選びましょう。
ACコンサルティングでは、着手金無料でM&Aをサポートしております。
電話での相談にも無料で対応していますので、不明点があればお気軽にお電話ください。
広告代理店の売却価格は、年間の売り上げや資産額などによって決められます。
M&Aの取引金額は公開されていないケースが多いため、相場となる金額を把握することは困難であるといえるでしょう。
一般的に、中小企業がM&Aによって自社を売却する場合は、時価純資産に2〜5年分の営業利益を足した金額が目安であるといわれています。
ただし、他の算出方法も組み合わせて基準額を求めるため、実際の売却価格は異なることも考えられます。
また、広告代理店はM&Aの需要が高いことから、他業種よりも売値が高くなる可能性もあるでしょう。
【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
ここからは、広告代理店業界で行われたM&Aの事例を3つ紹介します。
2022年5月、大手広告代理店である株式会社電通グループは、デジタル広告事業のパートナーである株式会社ディグ・イントゥを子会社化することを発表しました。
ディグ・イントゥの子会社化に伴い、デジタルマーケティング領域での成長を図りました。
2016年9月、インターネット広告事業を運営する株式会社セプテーニ・ホールディングスは、シンガポールの子会社を通じて、東南アジアで広告代理事業を手掛けているLion Digital Globalの株式を子会社化することを発表しました。
子会社化によって、東南アジア地域における事業拡大を図りました。
2015年8月、人材派遣業などを事業とする株式会社ウィルグループは、ソフトバンクグループの子会社であるクリエイティブバンクの株式を取得し子会社化することを発表しました。
クリエイティブバンクは広告代理店として実績を残しており、子会社化によって人材ソリューションとのシナジー効果の発揮を図りました。
広告代理店業界は、「テレビ」「ラジオ」「雑誌」「新聞」での広告売上が減少しています。
反対に、インターネット広告での売上はコロナなどの影響を受けずに売上は増加し続けています。
今後は、インターネット広告を中心とした事業拡大が課題といえるでしょう。
それらの要因から、広告代理店業界は頻繁にM&Aが行われることが予測されます。