投稿日:2022/07/02
更新日:2022/07/02
M&Aの手法にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴があります。
目的とずれた手法を選択してしまうと、期待していた利益を得ることができません。
M&Aを行う際には、手法ごとの違いを理解して、最適な方法を選択しましょう。
この記事では、M&Aの手法や特性、メリットやデメリットなどを紹介します。
目次
M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略語であり、企業や事業そのものを売買取引を意味する言葉です。
狭義では、「合併」「買収」「会社分割」の3つがM&Aに該当します。
基本的に、M&Aは上記3つのことを指しますが、広義では株式の持ち合いや合弁会社の設立も含みます。
一般的に、買収といった言葉にはネガティブなイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、買い手企業・売り手企業ともにさまざまなメリットがあることから、近年ではM&Aを実施する企業が増えてきました。
買い手・売り手を問わず、M&Aを行う最大の目的はシナジーの発揮といえるでしょう。
企業同士の協力によって、別々に事業を行うよりも大きな利益を挙げられる可能性があります。
M&Aを行う際は、シナジーを発揮できる相手を選ぶことが大切です。
また、「買い手企業」「売り手企業」に分けた、M&Aを行う目的は以下の通りです。
買い手企業がM&Aを行う理由は、新規事業への効率的な参入や、事業領域の拡大などが挙げられます。
それらを自社の力で行う場合は準備に時間がかかるため、結果が出るまでに数年単位の時間を要するでしょう。
M&Aで企業を買収すれば、それらにかかる手間や時間、コストなどを抑えることができます。
買い手企業がM&Aを行う際は、自社に足りない部分を補填できる企業を選定する必要があります。
売り手企業がM&Aを行う目的は、後継者問題の解決などが挙げられます。
事業を継続的に行うためには、承継できる後継者を選定・育成しなければなりません。
M&Aによって第三者を承継者に選べば、後継者問題をスムーズに解決することが可能です。
売り手企業がM&Aを行う際には、事業を安心して引き継ぐことができる企業を選びましょう。
後継者問題の解決以外では、事業領域の拡大や資金不足の解消などを目的としてM&Aが行われることもあります。
M&Aの手法は、主に上記の種類があります。
一般的に、M&Aは資本のやり取りを行うものを指すものであるため、業務提携はM&Aに含まれません。
ここからは、以下のM&Aの手法について個別に解説します。
株式譲渡とは、売り手企業の株式を買い手企業側に売却することで、経営権を譲渡させる手法です。
株式を譲り受けた買い手企業は、代償として現金を売り手企業に渡します。
株式譲渡は株式を買い手企業側に移動するだけですので、切れ目なく事業を継続することが可能です。
また、株式譲渡は手続きが容易であることから、他の手法と比較すると時間がかかりません。
従業員の労働契約を結び直す必要もないため、M&Aにおいて最も多く使用されている手法です。
ただし、株式譲渡でM&Aを行った際は、売り手企業の負債もそのまま引き継ぐため注意が必要です。
株式交換とは、売り手企業を子会社化する前提で、株式を売り手企業に譲渡する手法です。
株式交換を行う際は、売り手企業の株式を買い手企業に譲渡し、代償として買い手企業の株式を一部受け取ります。
株式交換を行うことで、買い手側の企業は「親会社」になり、売り手側の企業は「子会社」となります。
買い手企業は、代償として現金ではなく株式を譲渡するため、買収を実施するための資金は必要ありません。
売り手企業は、買い手企業の株式を一部取得できることから、買収後の経営に参加することが可能です。
株式移転とは、新規に会社を設立し、売り手企業の株式を全て新設会社に譲渡することで承継する手法です。
対象となる売り手企業は2社以上となっており、合併に近い形の組織再編を図る際に使用されます。
新設した会社は、売り手企業の株式を全て取得するため、買い手企業とは完全親会社の関係になります。
買い手企業側は、買収の対価として新規株式を発行し譲渡するため、株式交換と同じく買収資金は必要ありません。
売り手企業側は、譲渡後も労働環境が大きく変化することがないといったメリットがあります。
第三者割当増資とは、新たに発行した株式や、すでに所有している株式を第三者に交付する手法です。
新たに発行した株式を第三者に引き渡すため、売り手企業は対価として資金を獲得することができます。
基本的には資金の調達を目的として行われる手法ですが、第三者が一定以上の株式を取得できることから、M&Aのために使用されることもあります。
売り手企業側は、第三者割当増資によって財政を安定化させることが可能です。
買い手企業側は100%増資と比較すると、資金を抑えて経営に参加することができるというメリットがあります。
TOBとは、買収する企業の名前を公表し、取引市場を介さずに株式を取得するM&A手法です。
Take Over Bidの略称であり、株式公開買い付けともいいます。
TOBを行う際は、事前に買取期間や価格、取得予定株式数を公表して既存の株主から株式を買い付けることを伝えます。
TOBは主に「友好的TOB」と「敵対的TOB」に分けることが可能です。
友好的TOBの場合は、売り手企業や株主からの同意を得ているため、成功率が高く買収後も良好な関係を築けるというメリットがあります。
一方、敵対的TOBの場合は、売り手企業の同意を得ずに株式を取得するため、対策を取られることが多く買収の成功率が低いという特徴があります。
成功率の低さなどの理由から、国内ではあまり敵対的TOBが行われた事例はありません。
TOBを行うメリットは、株式の買収価格を設定するため、設定した予算をオーバーすることはありません。
目標にしていた株式数を取得できなかった場合は、買い付けをキャンセルできるという特徴もあります。
MBOとは、既存の株主から株式を買い取って自社の社員に事業を承継する手法です。
MBOは「Management Buy out」を略したものであり、経営陣による買収という意味があります。
自社の社員に経営権が譲渡されるため、事業について知識のあるノウハウをもった相手に承継できるというメリットも存在します。
通常のM&Aは第三者に事業を譲渡することから、企業の特性が失われにくい手法であるといえるでしょう。
中小企業では、廃業を避けるための手段として、MBOによる事業承継が頻繁に行われています。
デメリットとして、MBOを行う際は経営陣が株式を買い取るための資金を調達する必要があります。
MBOを行うことが決定した場合は、資産を調達する方法を考えなければなりません。
経営陣に充分な資産がない場合は、自社を担保に入れることによって、金融機関からの融資などを受けるといったケースが多く見られます。
事業譲渡とは、企業が行っている一部または全ての事業を、第三者に売却する手法です。
譲渡する対象は、有形資産や無形資産、人材などが挙げられます。
事業譲渡は株式譲渡と異なり承継する範囲を指定できるため、事業の一部を譲渡し他の事業に集中できるというメリットがあります。
事業資金が足りない場合などは、事業承継によって獲得できる売却資金を元手にして、経営の立て直しを図ることが可能です。
買い手側も買収する事業の範囲を指定できることから、売り手企業が所有している債務を引き継がないという選択肢を取ることもできます。
デメリットとして、事業譲渡は承継する範囲を指定して譲渡するため、株式譲渡よりも手続きが複雑という特徴があります。
また、売り手企業は、譲渡した事業と同じ事業を行うことができなくなるので、事業譲渡は慎重に行わなければなりません。
買い手企業は、買収後に従業員が退職するリスクがあるため、期待していた利益が挙げられない可能性もあります。
事業譲渡を行う際は、買収後の雇用条件などを従業員と話し合い、離職を防ぐように対処しましょう。
会社分割とは、事業の一部または全てを切り離して第三者に承継する手法です。
切り離された事業が抱えている権利などは、承継先の企業が引き継ぐことになります。
事業譲渡と似ていますが、会社分割は消費税が掛からないため、承継時の経済的負担を抑えることが可能です。
加えて、会社分割は事業譲渡と異なり、資産や負債もまとめて譲渡できるため手続きが容易という特徴があります。
反面、買い手企業は負債を引き継いでしまうリスクがあるため、事前調査は入念に行わなければなりません。
事業承継をするか会社分割をするか迷った際は、それぞれの違いを理解して、自社の方針にあった手法を選択しましょう。
また、会社分割は「新設分割」と「吸収分割」に分けることができます。
新設分割とは、新しく設立した企業に分割した事業や資金などを承継する手法です。
新設分割を行うことによって、企業は倒産リスクを分散させたり、組織の再編成を図ることができます。
新設した企業は子会社となるため、事業を存続しつつ、経営権を保有したまま既存事業に集中することが可能です。
また、新設分割を行う際は、対価として現金ではなく株式を用いります。
吸収分割とは、既存の企業に事業や権利を承継する手法です。
新設分割とは異なり、譲渡対象が既存の企業であることから、手続きにかける時間やコストを抑えることができます。
吸収分割を行う際には、対価として現金だけではなく、株式を使用することも可能です。
対価を株式にすることで、買い手側の企業は買収にかかる資金を用意する必要はありません。
合併とは、複数の企業を一つに統合することで、M&Aの中では、最も企業の結合力が高い手法です。
合併はその結合力の高さから、早い段階でシナジーを発揮しやすい手法であるといえるでしょう。
財務状況が強化されることで、獲得できる利益の向上も期待できます。
使用する資材を共有することにより、仕入れにかかる単価などを抑えて事業を行うことも可能です。
対価を株式にすることもできるので、買い手企業が資金調達を行う必要はありません。
ただし、買収の対価を株式にする際は、新株の発行必要があるため株価が下落する可能性があります。
統合作業に時間を掛け過ぎでしまうと、事業活動が停滞してしまうといったデメリットも存在します。
合併を検討する際は、メリットとデメリットを理解しておくことが大切です。
また、合併は「吸収合併」と「新設合併」の2つに分けることができます。
吸収合併とは、一方の会社の法人を消滅させて、もう一方の企業に経営権を譲渡する合併の方法です。
吸収合併を行う際は、企業を統合させることから譲渡対象を選別する手間がかからないというメリットがあります。
消滅させる企業がもつ許認可を引き継ぐことができるため、新規事業への参入が図りやすいという特徴もあります。
また、双方の事業規模が大きく異なる場合は、簡易合併という制度を使用することが可能です。
簡易合併は株主総会による承認を要さないため、コストを削減してスムーズに合併を行うことができます。
新設合併とは、両企業の法人を消滅させた上で、新たに立ち上げた企業に権利を承継する合併の手法です。
吸収合併と比較すると対等なイメージが強いことから、合併によるネガティブなイメージを従業員に持たれにくいという特徴があります。
社内での格差が生まれにくいというのは、新設合併の最も大きいメリットといえるでしょう。
ただし、新設合併は統合するまでの手続きが多く、実現までに多大な時間を要するというデメリットもあります。
両企業が消滅することから、許認可を再度取得する必要もあります。
加えて、必要なコストも大きいことから、実際に合併を行う際は吸収合併を選択するケースが多く存在します。
株式の持ち合いとは、2つ以上の企業が相互的に株式を所有しあうことを指します。
資本による提携を行っているため、広義に捉えるとM&Aの手法に含まれます。
株式の持ち合いは、通常の株式売買を同じ方法で行うことができるため、特別な手続きは必要ありません。
株式の持ち合いは、相互的に株式を所有していることから、企業間の関係性を友好に保つこともできます。
市場に出回る株式も減少することから株価が下落しにくくなり、TOBによる買収を防ぎやすくなるといったメリットもあります。
しかし、近年では株式の持ち合いを解消する動きが広まっています。
理由としては、2015年に金融庁と東京証券取引所から「株式の持ち合いを行うには、合理的な理由を説明しなければならない」という取り決めが導入されたことが挙げられるでしょう。
解消する動きが広まり続けていることから、将来的に株式の持ち合い自体が行われなくなる可能性もあります。
合弁会社とは、2つ以上の企業が共同で出資を行って設立される企業のことであり、JV(ジョイントベンチャー)と呼ぶこともあります。
合弁会社の設立であれば、100%外資の出資による参入が認められていない国でも経営ができるため、加害事業を行う際に使用されることがあります。
合弁会社を設立する際は、基本的に株式の持分比率を平等に分配します。
2社で設立する場合は必要な資金を折半できるため、新規設立時のコストを抑えることが可能です。
廃業した場合でも失う資金は半分で済むので、リスクを抑えて新規に企業を設立できるというメリットもあります。
しかし、共同で出資するため、獲得できる利益も半分になるといったデメリットも存在します。
経営方針の違いによる衝突が発生することも考えられるため、合弁会社を設立する際は相手企業について入念に調べておく必要があるでしょう。
M&Aによって企業を買収することには、事業の拡大やシナジー発揮などさまざまなメリットがあります。
しかし、買収することによって生じるデメリットも存在するため、どちらの要素も抑えておく必要があるでしょう。
ここでは、企業を買収するメリットとデメリットを解説します。
買収することによって得られるメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
1つ目は、事業エリアの拡大をスムーズに行うことができるという点です。
新たな場所で事業を営む場合は、地域での営業活動を行うための時間やコストがかかります。
事業エリアの拡大に時間がかかりすぎてしまうと、競合に先を越されてしまう可能性もあるでしょう。
そのような場合の対処方法として、企業買収による事業エリアの拡大が挙げられます。
自社が事業を展開していない地域の企業を買収すれば、効率的に事業エリアを拡大することが可能です。
2つ目は、効率的に新たな事業を立ち上げることができるという点です。
事業を新たに立ち上げる際には、ノウハウの構築や人材の確保に膨大な時間がかかります。
事業が軌道に乗るまでは、大きな利益も期待できないでしょう。
効率的に新規事業を行いたい場合は、その分野で実績のある企業を買収することで、スムーズな新規事業への参入を図ることができます。
本来、技術を持った人材の確保には多大な時間を要するため、そのような仮定を短縮できるのは買収の大きなメリットであるといえます。
3つ目は、企業間のノウハウを共有することによるシナジーの発揮です。
M&Aを行うことによって、新たな人材や技術、顧客を獲得することができます。
自社にはない強みを持つ企業を買収すれば、相互作用によって事業を強化することができるでしょう。
自社を成長させる手段として、M&Aによる企業買収は有効な手段です。
4つ目は、企業の規模を拡大することによって、優位性を高められるという点です。
M&Aによって人員の数や認知度が向上すれば、企業が持つブランド力などを向上させることができるでしょう。
資材の共有もできるため、ボリュームディスカウントによって経費を抑えることも可能です。
企業の規模を効率よく拡大できるのは、M&Aの大きな利点です。
買収によるデメリットは以下の3つが挙げられます。
M&Aを行った後は、お互いの文化や社風の違いを無くしていく必要があります。
それらの壁を取り除くためには、一定の時間を要することが予想されます。
しかし、すり合わせに時間を掛けすぎてしまうと、シナジーを発揮するのが遅れてしまう可能性もあるでしょう。
期待していたシナジーを早急に生み出すためにも、企業統合後のプロセスについてしっかりと話し合っておく必要があります。
M&Aは成立までの流れに目が行きがちですが、統合後のことまでも入念に考えておくことが大切です。
M&Aを行うことによって、買収された企業は労働環境などが変化するでしょう。
買収以前とのギャップが大きすぎると、予期せぬ人材の流出が発生してしまう恐れがあります。
優秀な人材が流出してしまうと、M&Aによるシナジーの発揮が困難になるかもしれません。
人材の流出を防ぐためにも、買収企業の従業員の待遇について考え、流出を防ぐように対処する必要があります。
人材の流出を防ぐ手段として、評価基準の見直しや、売却後のプランの提示などが挙げられます。
株式譲渡などでM&Aを行った際は、売り手企業が抱えている負債を買い手企業が引き継ぐことになります。
帳簿などに記載されていない負債があった場合、予想外の支出が発生するリスクがあります。
売却後に負債が発覚しないためにも、買収する企業の調査はしっかりと行いましょう。
また、事業譲渡の場合は承継する範囲を指定できるため、負債を引き継ぐことはありません。
M&Aは、事業を売却する側にもさまざまなメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。
M&Aを成功させるためには、それぞれを把握しておくことが大切といえるでしょう。
ここでは、企業を売却するメリット・デメリットを紹介します。
企業を売却するメリットは、以下の4つが挙げられます。
近年では、経営者の高齢化や人材不足によって、廃業という選択肢を取る企業が増えています。
特に中小企業の場合は、事業を承継できる人材がいないということも多いでしょう。
事業を承継する後継者がいない場合は、M&Aで事業を譲渡することによって、後継者問題を解決することが可能です。
第三者に事業を承継することで、事業の存続を図れるだけでなく、廃業にかかる資金を抑えられるといったメリットも存在します。
事業を経営するためには、人材の雇用や資材の獲得などに多大な資金がかかるでしょう。
運営資金がなくなれば、事業を継続するのは困難になります。
事業を行う資金が不足している場合は、M&Aによって解決することが可能です。
大手企業の傘下に加わることができれば、財政面を安定して事業を続けることができます。
また、事業を複数行っている場合は、一部の事業を売却したことによる売却益を、他の事業の運営に資金を回すのもよいでしょう。
後継者の不在や資金不足などによって廃業してしまった場合、従業員は新たな働き口を探す必要があります。
廃業せざる負えない状況でも、従業員の雇用を失うことは避けたいと考える経営者もいるでしょう。
そのような場合は、M&Aによって事業を継承すれば従業員の雇用を守ることも可能です。
専門的な技術を必要とする事業の場合、培ってきたノウハウを絶やさずに済むというのも大きなメリットであるといえるでしょう。
また、売却後に雇用条件が悪化するといったことを起こさないためにも、買い手との交渉時は待遇について入念に話し合っておくことが大切です。
複数の事業を営んでいる場合は、事業譲渡や会社分割などの手法を用いることで、特定の事業のみを譲渡することが可能です。
自社が運営している事業のうち、充分な利益を生み出していない事業があれば、第三者に譲渡するのも一つも手段です。
運営する事業を絞ることによって、他の事業に人材や時間を割くことができます。
利益が出ていない事業を切り離し、他の事業に集中することによって、さらなる利益を獲得できるかもしれません。
事業を売却するデメリットは、以下の3つが挙げられます。
事業の売却を検討していても、譲り受けてくれる企業が見つからないケースがあります。
買い手企業が買収する企業を探す際は、M&Aによってシナジーを発揮できるかが重要視されています。
買収するメリットがないと感じれば、買い手企業が見つかることは無いでしょう。
事業を売却する際は、競合と比較してどのような強みがあるかを見つけてアピールすることが大切です。
また、どうしても買い手が見つからない場合は、希望する売却価格を見直すことも有効な手段です。
事業を売却する際には譲渡先を探す必要があるため、おおよそ半年~1年程度の時間を要します。
買い手企業の候補をスムーズに見つけたとしても、その後の交渉が長引けば、それ以上の時間がかかることもあるでしょう。
M&Aに割く負担を減らすためにも、事前の準備をしっかりと行い、スムーズに成立させる必要があります。
ただし、焦って事業を譲渡してしまうと、売却後に後悔してしまう恐れもあるので注意しましょう。
事前に売却条件などを考えて、適切な判断をスピーディに行うことが大切です。
M&Aによって事業を売却した場合、条件によっては労働環境が変化することがあります。
万が一雇用条件が悪化してしまったら、社員は流出してしまうでしょう。
人員の流出は、売り手企業・買い手企業ともに大きな損失であるといえます。
双方が損をしないためにも、M&A後の労働環境については入念に話し合っておくことが大切です。
M&Aを行う際は、主に下記の流れで進めていきます。
M&Aを行う際は、事前に目的を明確にしておくことが大切です。
M&Aが難航してしまった場合、交渉時に焦ってしまい譲歩しすぎてしまうこともあるでしょう。
交渉時には相手の条件を飲み込むことも大切ですが、譲れない条件などを決めておかないと望んでいた利益を得ることはできません。
買収・売却後のイメージを想像し、M&Aによって何を達成したいのかを具体的に考えましょう。
M&Aを行う目的を明確に洗い出した後は、自社の経営状況や強みを把握しましょう。
自社が把握していない簿外債務があった場合、M&A後に契約違反となり問題になる可能性があります。
トラブルを起こさないためにも、経営状況は一度見直すことが大切です。
また、自社の経済状況を洗い出す際には、並行して自社の強みを見つけ出しましょう。
自社が持つ強みを把握することで、相手企業との交渉をスムーズに進めることができます。
効率よく相手企業にアピールするためにも、競合と比較して、自社にはどのような強みがあるのかを明確にすることをおすすめします。
経営状況・強みを明確にしたら、アドバイザーの選定に進みます。
M&Aを行う際は仲介会社に依頼するケースが多く見られますが、銀行や証券会社、弁護士などに依頼することも可能です。
それぞれ異なるメリットやデメリットがありますが、初めてM&Aを行う際には、全般的なサポートを受けられる仲介会社への依頼がおすすめです。
アドバイザーの選定が完了したら、依頼相手とアドバイザー契約を締結しましょう。
M&Aは企業のあり方を左右する大事な取引ですので、アドバイザーは信頼のおける相手を選ぶことが大切です。
M&Aのサポートをどこに依頼するか迷っている場合は、ACコンサルティングへの依頼をご検討ください。
ACコンサルティングでは全国のネットワークを活用して、お客様へ最適なサポートを提供します。
M&Aに関するご相談を無料で承っているので、お気軽にお問い合わせください。
アドバイザーの選定が完了したら、ノンネームシートや企業概要書などの各種書類を準備しましょう。
ノンネームシートとは、売り手側の企業名が特定されない範囲で情報が記載された資料です。
ノンネームシートを作成することによって、情報漏洩のリスクを低減させながら買い手企業にアピールができます。
注意点として、記載する内容が少なすぎると、買い手企業に効率的なアピールができません。
しかし、具体的な内容を書きすぎると企業を特定される恐れがあります。
ノンネームシートの内容は、アドバイザーと相談して開示内容を選定しましょう。
また、企業概要書は売り手企業の詳細情報が記載された書類であり、買い手企業と面談を行う前に提出します。
企業概要書に綿密な情報を記載することで、交渉をスムーズに進めることが可能です。
作成したノンネームシートを元に、アドバイザーは買い手企業を選定します。
提示された企業が希望の条件を満たしていた場合は、秘密保持契約を結び情報を開示しましょう。
秘密保持契約を結ぶことによって、第三者への情報漏洩を防ぎます。
M&Aを行うことを売り手企業の従業員や得意先企業に伝わると、モチベーションや信頼関係に支障をきたす可能性があります。
それらのリスクを防ぐためにも、開示された情報の取り扱いには注意が必要です。
秘密保持契約を締結した後は、トップ面談に移ります。
トップ面談の際は、マッチング相手が信頼のおける人物なのかを見極めることが大切です。
M&Aを成功させるためには、マッチング相手との協力はかかせません。
主な条件交渉は仲介会社が行うため、トップ面談の時点では良好な関係を築き、相手の経営者が経営に対してどのような意識をもっているのかを確認しましょう。
トップ面談を行い、M&Aを進めていきたいと感じたら基本合意書を締結しましょう。
基本合意書とは、譲渡価格やM&A実施後の待遇などを記載した書類で、その後の交渉をスムーズに進めるために締結します。
注意点として、基本合意書に記載した内容には法的な拘束力はありません。
最終的な契約内容は、後述するデューデリジェンスの実施後に決定します。
基本合意書の締結が完了したら、デューデリジェンスの実施に移りましょう。
デューデリジェンスとは買収監査のことであり、売り手企業を買収するにあたってリスクは無いかを調査します。
デューデリジェンスに実施によって新たな負債などが発覚した場合は、M&Aが成立する可能性が下がるかもしれません。
売り手企業はM&Aを成約させるためにも、負債などがあれば事前に売り手企業に伝えておきましょう。
デューデリジェンスが完了したら、M&A相手との交渉を再度行いましょう。
デューデリジェンスによって問題点が上がらなかった場合は、基本合意契約の内容に基づいて最終条件を決めるのが一般的です。
また、最終契約書は基本合意書と異なり法的な拘束力があります。
最終契約を締結する際は、M&A後に後悔しないためにも、契約内容を入念に確認することが大切です。
最終契約を締結した後は、契約内容に基づいてクロージングを実施しましょう。
クロージングとは、譲渡対価の引き渡しや受け取りによる経営権の移行作業です。
クロージングが終わったら、M&Aは完了です。
M&Aを成功させるためには、以下の3つのポイントを抑えておきましょう。
M&Aを行う際には、シナジーを発揮できる企業を選定することが大切です。
シナジーの発揮は業績の向上に繋がる大事な要素であり、M&Aを行う一番のメリットともいえます。
企業を選定する際には、自社が求める条件を元に統合後のイメージを具体的に考えましょう。
また、信頼のおけるアドバイザーにM&Aのサポートを依頼することも、シナジーを生み出せる企業を見つける上での一つのポイントです。
PMIを適切に実施することは、M&Aを成功させるための大切なポイントです。
PMIとは、相手企業とのシステムや業務体制のすり合わせを行う経営統合プロセスです。
統合を失敗すると、社員の離職やシステム障害などが発生し、業績悪化に繋がる恐れがあります。
M&Aを実施する際には、交渉の成立に注目してしまうこともありますが、大切なのは統合後にシナジーを生み出すことです。
統合後に素早くシナジーを発揮するためにも、PMIについては事前に相手企業と話し合っておきましょう。
M&Aの手法を決める際には、それぞれの違いを把握して適切なものを選択しましょう。
例えば、株式譲渡は手続きは簡単ですが、売り手の負債を引き継いでしまうといった特徴があります。
反対に、事業譲渡の場合は負債を切り離すことができますが、手続きが複雑なため時間を要します。
先述したM&Aの手法をもとに、自社にとってどの手法がよいのかを考えて選ぶことが大切です。
M&Aを行う際には、以下の3つのポイントに注意しましょう。
企業の売却価格は、企業価値評価で算出された金額を元に、買い手企業と売り手企業の交渉によって決まります。
売り手企業側にとって、企業をより高く売却したいと考えることは当然のことです。
反対に、買い手企業側は、可能な限り資金を抑えて買収したいと考えるでしょう。
しかし、企業価値評価に見合わない金額を提示してしまうと、相手企業との交渉は難航してしまいます。
交渉をスムーズに行うためにも、企業価値評価を適切に行いましょう。
企業価値評価について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
自社をより高く売却したい場合は、実施するタイミングに注意しましょう。
先述の通り、売却価格の基準は企業価値評価によって決められます。
業績が悪化しているタイミングで売却してしまうと、企業価値評価は下がるため、思っていた利益を獲得できない恐れがあります。
事業を売却する可能性がある場合は、適切なタイミングを見極めることが大切です。
M&Aを行う際は、実施することを従業員に伝えるタイミングにも注意が必要です。
事業を売却することが従業員に伝わってしまうと、モチベーションの低下に繋がる恐れがあります。
労働条件なども確定していなかった場合は、それが原因で離職する従業員が発生するかもしれません。
企業経営にダメージを与えないためにも、従業員に伝えるタイミングや情報漏洩には注意しましょう。
また、売却することを従業員に伝えるタイミングはクロージング後などが一般的です。
M&Aにはさまざまな手法があり、それぞれに異なるメリットやデメリットがあります。
自社がM&Aに望むものを考えて、最適なM&A手法を選択しましょう。
また、自社にはどの手法が適しているかわからない場合は、ACコンサルティングにご相談ください。
お客様からのヒヤリングを元に、最適な手法をご提案いたします。