投稿日:2022/06/16
更新日:2022/09/26
2020年に環境省が行った調査では、年間に発生するゴミの総排出量は4000万トンを超えているとされています。
世界的にもごみ問題は深刻であると考えられており、SDGsでも取り組むべき課題として挙げられています。
国内外問わず問題視されているごみ問題を解決するためには、リサイクルを行う業者の存在は欠かせないでしょう。
この記事では、リサイクル業界のM&A動向やメリット、事例などを紹介します。
目次
リサイクル業界は、大きく分けると「再資源化事業」と「リサイクルショップ」に分類できます。
再資源化事業は不要になった廃棄物や金属を粉砕して分別し、新たな製品として利用することで、持続可能な社会の実現に貢献しています。
リサイクルショップは、買い取った中古製品を適切な価格で再度販売している企業です。
販売する製品は古本や衣類、自動車などが挙げられます。
近年では店頭での販売を行っている業態のみではなく、インターネットを用いた顧客同士でのやり取りで中古品販売を行うフリマアプリやネットオークションなどが増えています。
また、リサイクルショップ等での中古品販売業は、資源の再利用を行っていることからリユース業界に分類されることもあります。
中古品の再販売などを行うリサイクル業界では、市場規模が年々増加しています。
特にその中でも、市場が急拡大しているのが個人間で取引を行うフリマアプリなどのCtoC市場です。
経済産業省か発表したデータによると、2018年度には1兆5891億円だったCtoC市場は、2020年度には1兆9586億円となっており、約23.3%も上昇しています。
現状、ネット型での中古品販売がリサイクル業界を牽引しているため、店頭での販売を行っている企業は厳しい状況にあるといえるでしょう。
ただし、市場全体でみれば中古品市場は拡大しているため、他者が使用した製品に抵抗を感じるユーザーは減少し続けていると考えられます。
店頭での販売を行っている企業は、インターネット販売などの新たな取り組みを行うことによる事業拡大が課題といえるでしょう。
近年では、店頭での販売を行っている企業が、ネット販売に力を入れている傾向があります。
中古品販売などを行っているリサイクル及びリユース業界は、景気に左右されにくく安定しているという特徴があります。
中古製品は相場より安い価格で製品を手に入れられるため、不況が続いている市場でも顧客のニーズが大きく減少することはないでしょう。
実際に、コロナ禍においてもリサイクル業界の市場規模は伸び続けています。
また、廃棄物の回収などを行っている再資源化事業に関しても、SDGsの観点から注目が集まっています。
リサイクル業界は、全体で見ても将来性がある業界であるといえるでしょう。
近年、リサイクル業界でのM&Aは増加しています。
中古品販売企業がM&Aを行う場合は、新規エリアへの参入や販売を行う製品の拡充などが目的で行われています。
フリマアプリの市場拡大が続いている現在において、事業存続のための戦略としてM&Aは有効であることから、売却を希望する売り手企業も増えることでしょう。
再資源化事業を行っている企業の場合は、環境関連サービスの拡大や技術獲得を目的としたM&Aが行われている傾向があります。
近年、リサイクル業界でのM&A需要は増え続けています。
では、リサイクル業界でM&Aを行うメリットはどのようなものが挙げられるのでしょうか?
ここからは、買い手企業と売り手企業の各視点から、M&Aを行うメリットを紹介します。
買い手企業がM&Aを行うメリットは、主に以下の3つがあります。
ここでは、リサイクル業界において買い手企業が買収を行うメリットについて個別に解説します。
リサイクル業界への新規参入を考えている場合は、M&Aを行うことで業界への参入がスムーズに行えるでしょう。
事業を新規に立ち上げる際には、市場のリサーチからノウハウの構築、従業員の確保及び教育などに膨大な時間がかかります。
加えて、中古品の販売を行う場合は、商品を確保するための時間や資金が必要になります。
店頭での販売メインに行うには、棚などの備品や出張買取などを行うための軽トラックなども必要になるでしょう。
オンライン上で販売を行う場合に関しても、サイトをゼロから立ち上げなければなりません。
再資源化事業を行う場合に関しても、リサイクルを行うための施設の作成及び重機などの購入に膨大な時間や資金が必要になるでしょう。
M&Aを行うことで、これらにかかる時間を大幅に短縮することが可能です。
新規事業立ち上げようとしている企業にとってを、参入の障壁を軽減できることは大きなメリットです。
リサイクル業界で事業を行う企業が同業種の企業を買収することで、事業の拡大を図ることができます。
中古品販売事業を手掛けている企業にとって、新たなエリアでの店頭販売を始めるのは容易ではないでしょう。
店舗を新たに立ち上げる必要があるため、地域の選定や顧客からの認知を高めるといったことに時間や資金を要します。
これらの問題は、同業種の企業を買収することによって解決できます。
また、買取を行う商品の種類を増やすためには、その商品に関する知識が必要になります。
自社では買取を行っていない商品を中心に扱っている企業を買収することで、取扱商品の幅を増やすこともできるでしょう。
新規エリアへの参入や買取製品の拡充を図っている場合、M&Aによる企業買収は有効な手段の一つと言えます。
中古品販売業を行う上で避けて通れないのは、在庫商品のストックの処理でしょう。
売れ残っている商品が多いと、充分な利益の確保ができません。
在庫をストックしておくための場所も必要になるので、店頭に出せない商品が多いというのは大きな損失です。
こういった店頭に並ばない在庫を販売する方法として、M&Aでの店舗数拡大が挙げられます。
店舗数が増えることで商品を販売する機会が増えれば、在庫を大量に抱えるリスクは低減できるでしょう。
売り手企業が持つ販売ノウハウを取り入れることで、より効率的に商品を売却できる可能性もあります。
同じような商品を大量に買い取った際にも、別店舗に商品を流すことで、販売できる機会を増やすことも可能です。
買取点数の制限も緩和できるため、一人の顧客から多くの商品を買い取ることもできるでしょう。
店舗ごとの連携によって買取や販売の機会を増やす事により、さらなる事業拡大を図れます。
買い手企業は、企業を買収することでさまざまな利益を得ることができます。
では、売り手企業は売却することでどういった利益を得ることができるのでしょうか。
売り手企業が売却を行うメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
ここからは、企業を売却するメリットについて個別に解説します。
リサイクルショップを経営する上で、従業員を雇っている企業は多いでしょう。
再資源化事業を行っている企業も同様です。
事業の存続ができない・後継者がいないなどの理由で廃業をしてしまうと、従業員は新たな働き口を探す必要があります。
従業員の生活を守る手段として、M&Aによる企業売却は有効です。
企業を売却すれば、その事業は買い手企業が引き継ぐため廃業することはありません。
後継者を育成する必要もないため、スムーズに事業を承継することも可能です。
売上不振や後継者問題などから廃業を検討している方は、一度企業売却を検討してみてもよいでしょう。
中古商品販売を事業としている企業にとって、インターネット販売を行っている企業の存在は驚異といえるでしょう。
自社も同じようにインターネット販売を行おうと考えていても、充分な利益を出すためには知識やノウハウが必要になります。
現段階では十分な利益を確保できていても、将来的のことを考えると、店舗型の企業が生き残るには事業の拡大はかかせません。
そういった企業が存続するための経営戦略として、M&Aによる企業売却が挙げられます。
ネットでの販売に強い企業のノウハウを得ることで、現在のリサイクル業界の流れにも充分に対応することができるでしょう。
ゲームや本などの取扱商品が限定されている企業であれば、異なる中古製品の販売を行えるようになるため、顧客数も増えると考えられます。
これはM&A全般におけるメリットですが、企業を売却することで企業価値に応じた売却利益を獲得することができます。
一度に大きな資産を確保できるため、売却利益を元手に新たな事業を始めることも可能です。
売却利益を資産運用などによって増やすことができれば、セミリタイアなども狙えるでしょう。
注意点として、M&Aによる企業売却を行うにはさまざまな手続きが必要になります。
専門的な知識も求められるため、初めて企業を売却する方は、仲介会社や専門家に依頼することをおすすめします。
近年注目を集めているリサイクル業界ですが、現在抱えている課題や、将来的に期待されていることには、どのようなものがあるでしょうか?
ここでは、リサイクル業界の課題や展望について解説します。
日本が所有している技術の中で、世界的にも注目されているのがメタルリサイクル技術です。
現在の日本において、金属資源のほとんどは海外からの流入によるものです。
金属の価値は年々増加しているため、自国での金属資源の確保は必須といえるでしょう。
日本が持つメタルリサイクル技術は世界にも通用するとされており、今後もさらなる発展が期待されています。
また、金属以外では木材やガラス、プラスチックのリサイクルは充分な利益を生む可能性があると考えれています。
リサイクル業界においては、既存技術の向上及び新規技術の獲得が望まれています。
中古製品の店頭販売を行っている企業にとっては、インターネット販売を行っている競合他社との差別化が課題といえるでしょう。
一部の大手企業では、オンラインでの製品販売に積極的に取り組んでおり、市場規模の拡大を図っています。
オンラインでの販売は取り扱う製品の種類が多く、金額の比較が容易に行えるため、他社との差別化が難しい状況に置かれています。
一部の企業では、オークション形式の採用や出張買取の強化によって他社との差別化を図っています。
インターネット販売への参入はもちろん、他社との差別化がリサイクル業界で生き残るための鍵となるでしょう。
M&Aによる企業の売却価格は、固定資産や将来性、従業員の人数などによって大きく異なります。
それらは企業によって違いがあるため、リサイクル業界に限らず相場となる価格を一概に決めることはできません。
ただし、一般的な中小企業の場合、売却価格の目安となる金額は時価純資産に2〜5年分の営業利益を足した値であるといわれています。
例を挙げると、時価純資産が5000万円で年間の営業利益が1000万円の企業は、6000万〜1億円程度が売却価格の相場となります。
注意点として、実際の売却価格は他にも様々な方法によって求めた値を組み合わせて算出します。
より正確な値を知りたい場合は、M&A仲介会社などに企業価値の算定を依頼しましょう。
【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
ここからは、リサイクル業界で行われたM&Aの事例を5つ紹介します。
2019年4月、リユース事業やオフプライス事業などを手掛けている株式会社ゲオホールディングスは、ブランド品などのリユース事業を展開している株式会社おお蔵の全株式を取得し子会社化することを発表しました。
ゲオホールディングスが運営しているセカンドストリートでは、主に衣類や雑貨の販売を行っています。
おお蔵を子会社化することで、セカンドストリートにおけるブランド品販売において他社との差別化を図りました。
2022年4月、リサイクル事業などを手掛けるTREホールディングスは、子会社である株式会社タケエイを通じて、JWガラスリサイクル株式会社の株式を取得したことを発表しました。
JWガラスリサイクルはガラスの再資源化などを得意としており、子会社化に伴い再資源化事業の拡充を図りました。
2020年5月、リユース事業を手掛けている株式会社ハードオフコーポレーションは、フランチャイズ加盟契約を締結している株式会社エコプラスを完全子会社化することを発表しました。
エコプラスは東北や北海道を中心に店舗を運営しており、子会社化によって営業基盤の強化及び事業の拡大を図りました。
2021年10月、リサイクル事業などを手掛けている北日本紡績株式会社は、金井産業株式会社の株式を取得することを発表しました。
企業の買収によって本格的なリサイクル事業への参入を図り、グループ内での設備共有によるアドバンテージの獲得を目指しました。
2014年4月、環境エネルギーや金融、不動産など数多くの事業を手掛けているオリックス株式会社は、子会社を通じてネットジャパン及び関連会社の株式を取得することを発表しました。
ネットジャパングループは貴金属を中心としたリサイクル事業で大きなシェアを締めていました。
子会社化によって、オリックスが持つノウハウを活かし、企業価値の向上を目指しました。
リサイクル業界は、主に「再資源化事業」と「リサイクルショップ」の2つがあります。
どちらの持続可能な社会の実現に貢献しており、今後も発展が望まれているでしょう。
また、市場の動きが早いため、企業存続のためには競合他社との差別化や新たな技術の獲得が必要です。
廃業を検討している方は、ぜひ一度M&Aによる事業承継を検討してみてはいかがでしょうか。