投稿日:2022/05/03
更新日:2022/09/26
サービス業のM&Aにはどんなメリットや注意点があるのでしょうか。
これからサービス業の事業拡大をしたい経営者もいるでしょうが、上記のような問題を抱えているかもしれません。
そこで本記事ではサービス業のM&Aについて、メリットや注意点を中心に解説します。
目次
サービス業界は、何らかのサービスを提供した対価として売上を生み出す事業を分野としている業界です。
非常に幅が広く、第三次産業に含まれる業種は全てと考えていいでしょう。
接客業のような直接顧客と接する仕事だけと考えている人もいるかもしれませんが、情報サービスなども含まれるので決してその限りではありません。
そのため、無形のサービスを提供している業界ともいえます。
サービス業界は、総務省の「日本産業標準分類」では下記のように
と9つの業種に分けられています。
上記の通り非常に幅広く、多くの分野の無形サービスを販売・提供している業界です。
サービス業界が無いと生活が成り立たない分野もあるため、国内でも大きな市場となっています。
リクルートホールディングスは、人材を中心とした事業を行っているリクルートグループの持株会社です。
新卒・転職の求人採用では日本最大手の1社で利用者も多いことで知られています。
資本金 | 400億円 |
売上 | 2兆2,693億円 |
代表取締役 | 出木場久征 |
利益 | 1,628億円 |
時価総額 | 8兆1,711億3,500万円 |
従業員数 | 46,800名 |
オリエンタルランドは、東京ディズニーリゾートを経営する京成グループの企業です。
日本国内で最も有名なテーマパークである「ディズニーランド」の運営元として知られています。
資本金 | 632億112万7,000円 |
売上 | 1,705億8,100万円 |
代表取締役 | 吉田謙次 |
利益 | △459億8,900万円 |
時価総額 | 7兆1,919億7,300万円 |
従業員数 | 5,409名 |
日本郵政は、日本郵政グループの持株会社で、全国の郵便局ネットワークを用いた郵便や貯金、保険事業を行う企業です。
2007年の日本郵政公社の民営化によって設立した企業ですが、現在も総務省に所管されています。
資本金 | 3兆5,000億円 |
売上 | 11兆9,501億8,500万円 |
代表取締役 | 増田寛也 |
利益 | 8,644億5,700万円 |
時価総額 | 3兆4,344億1,400万円 |
従業員数 | 2,031名 |
上述の通り、サービス業界にはさまざまな業種があるため、ビジネスモデルが多彩です。
ただし、ヒトやモノといった経営資源を活かして、無形サービスを提供して売上を立てる点は共通しています。
在庫がないことはサービス業界のメリットです。
一方で在庫はしておけず、対応する人やタイミングによって提供できるサービスが変わる点はデメリットになります。
サービスを提供して収益を上げる事業なので、ロボットなどを用いてモノを製造して売る業界とは違い、ヒトに依存している点もサービス業界の特性といえるでしょう。
また、生産と消費が同時に起こるのもサービス業界の特性です。
そのため、サービス業を事業とする企業は、臨機応変な対応が求められます。
サービス業界の取引は、内容によっては前金で請求するケースもありますが、何らかのサービスを提供した後に売上を立てる流れとなります。
顧客は一般消費者が目に見えやすいですが、たとえば通信や郵送などは企業間取引となるケースもあるので、個人も法人もすべてが対象です。
そのため、個人と法人相手でサービス内容を変える場合もあり、取引の流れも企業間で決めることとなります。
矢野経済研究所によると、2020年調査では前年比 99.2%の1,098兆円とマイナス成長でした。
2021年になっても売上は戻らず、理由としては新型コロナウイルスの影響があります。
営業自粛が原因となり、人と直接接する機会の多いサービス業は直接売上に響いてしまいました。
今後も新型コロナウイルス対策によって近々の見通しは不透明ですが、イベントや旅行が自由になれば、対面による接客や営業自粛もなくなるため売上も戻るでしょう。
無形サービスの提供を商品とするサービス業界は、今後も時代に合わせて変化させていけばいくらでも売上アップを考えられる業界です。
少子高齢化により人口は減っていきますが、高齢者向けにシフトや外国人をターゲットにするなど、事業の変更をして生き残っていけるでしょう。
変化していくことを恐れずにチャレンジングな経営をしていける企業ならば、さらなる発展を望めます。
引用元:矢野経済研究所
サービス業界の課題を人、業務、未来の観点から見てみましょう。
サービス業界においても人手不足は大きな問題となっています。
少子高齢化も原因の一つですが、労働環境も背景にあるでしょう。
非正規雇用者が多く、低賃金にも関わらず重労働やサービス残業などの労働者にとって働きたくないと思われてしまう条件が揃っています。
労働環境の改善はサービス業界の人手不足改善のため、喫緊の要件といえるでしょう。
また、人手不足の解消に外国人労働者の採用も増えており、自国民にこだわっている必要もありません。
人手不足も関係しますが、デジタル化を進めることで業務の短縮化も望めます。
初期費用が必要ですが、いつまでも人に依存した仕事をしていては競争相手に負けてしまうでしょう。
店舗であればキャッシュレスにして支払いをスムーズにし、顧客対応に力を入れるなどの工夫が必要です。
コロナウイルスの影響がいつまで続くかもわかりませんので、直接人と接する場面を減らすようにすることもサービス業界の課題といえるでしょう。
サービス業界の将来は成長の可能性がまだまだあると考えられており、高齢者向け事業などは今後も発展していくでしょう。
人が資源となる業界なので、その時代に合わせて変化できれば成長の余地があります。
柔軟に考えてデジタル化などを積極的に取り入れていく企業が生き残っていくでしょう。
しかし、少子化により若者向けサービスは縮小していくと予想されるので、競合との生き残りをかけてM&Aによる企業統合が進んでいくと考えられます。
サービス業界のM&Aを行うメリットを見てみましょう。
サービス業界同士のM&Aは、規模の拡大が見込めます。
これまで競合企業として争っていた先と一緒になるため、相手が持っていた顧客をそのまま抱え込めるため、売上増を見込めるでしょう。
また、経験あるスタッフを従業員にできるため、新たな求人や教育コストも必要ありません。
とくにサービス業界は人によって売上が作られるため、労働環境を整備して長く働いてもらうようにすれば、売上にも貢献してくれるでしょう。
他業種からサービス業の企業をM&Aする場合は、新たなマーケットへの進出が実現できます。
これまでとは違う市場へ進出するとなると、従業員の育成だけでなく営業やマーケティングなどに時間を要してしまいます。
M&Aならばサービス業界への進出を短時間で実現できるでしょう。
また、これまでの事業との相乗効果も狙えるので、自分たちにしかないサービスを提供できる可能性もあります。
売り手のメリットは、後継者問題に悩む必要がなくなることです。
中小企業になると少子化によって継ぐ人がいなくて困っている経営者も多いでしょうが、M&Aはその問題を解決できます。
自分で廃業するとしてもコストがかかりますし、従業員を残してしまい心苦しい場合は、M&Aによる企業売却を検討するといいでしょう。
優良企業に自社事業を任せられれば、従業員や顧客を心配することなく安心してリタイアできます。
サービス業の企業を買う場合、事業拡大が一番のメリットです。
競争の激しい業界なので、技術やノウハウ、経験あるスタッフ、不動産などの有形・無形の資産を取り込むことで事業規模拡大を図れるでしょう。
事業拡大を考えない企業はあまりないでしょうが、簡単にできるものではありません。
M&Aであれば買収先が持っている顧客や市場をそのまま取り込めるため、事業拡大の時間を大幅に短縮できます。
新規マーケットの創出もいいのですが、人が資産となるサービス業界の場合は、同業同士のM&Aの方が効果も高いでしょう。
M&Aによって企業を売却する場合、その企業が持つ将来性や資産を加味した金額を元に、両企業の交渉によって最終的な売却価格が決定します。
資産や将来性は企業によって異なるため、相場となる金額は一概に決めることができません。
ただし、売却時の目安となる金額は、時価純資産に2〜5年分の営業利益を足した値であるといわれています。
実際には他の手法なども組み合わせて算出するため、より正確な売却価格を知りたい場合はM&A仲介会社などの専門家に依頼すると良いでしょう。
売却価格について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
サービス業界では、以下のようなM&Aが行われてきました。
ケンタッキーを運営している日本KFCホールディングス株式会社は、飲食店を営むビー ワイ オー株式会社と資本業務提携を行うことを発表しました。
両社が持つ飲食業のノウハウをかけ合わせ、さらなる成長を目指すことを目標としています。
2018年に、コミュニケーションアプリを運営するLINE株式会社と、トラベルジェイピーを運営している株式会社ベンチャーリパブリックは、業務提携契約を締結したことを発表しました。
業務提携契約を結んだことにより、LINE株式会社は、国内外の旅行を検索予約できるLINEトラベルをスタートしました。
2018年12月、明光義塾を運営している株式会社明光ネットワークジャパンは、フランチャイジー企業である株式会社ケイエムジーコーポレーションを完全子会社化することを発表しました。
子会社化を行うことで、競争力の強化や企業価値の向上を図っています。
2021年11月、人材紹介業で有名な株式会社マイナビは、不動産業を営んでいるリヴォート株式会社と資本業務提携契約を締結しました。
提携によって、不動産業界が抱える問題の解決や、ビジネスモデルの変革を図っています。
2018年1月、レストラン運営などを行っているクリエイトレストランツホールディングスは、複合施設を運営している株式会社イクスピアリの株式をすべて取得することが発表されました。
連結子会社化することによって、事業価値の向上を目指しています。
サービス業界の場合、M&Aが成功した後の従業員への対応を事前に考えておくといいでしょう。
人が資源となる業界なので、優秀なスタッフに退職されてしまうと売上にも響きます。
せっかくM&Aをして獲得した人材を簡単に手放してはいけません。
M&Aの情報が公開となってから、しっかり話し合う時間を作って離職されることを防ぐ努力をしてください。
また、急な統合もついていけない人が出てくるため、じっくり時間をかけて実施しましょう。
その他、サービス業界もBtoCなのでSNSなどで評価が悪い先を買収すると、その悪評を引きずってしまうため、これから買収しようとする企業の評判を事前に調べてください。
非正規雇用者も多い業界でどこでどんな評判が立っているかわかりません。
そのため、M&A前の事前調査は入念に行うといいでしょう。
本記事をまとめると、
サービス業界はまだまだ発展できる余地があるが、中小企業の承継問題は他業界同様あるのでM&Aが活発になると予想されます。