運送業のM&A動向やメリット、売却・買収の事例などを紹介!

投稿日:2022/05/03

更新日:2022/09/26

運送業の需要増加によりM&Aによる企業統合が注目されています。

自社だけで競争に勝っていくには難しいことが背景にあり、今後さらに加速する可能性も高いです。

そこで今回は運送業のM&Aの動向やメリット、注意点を解説します。

運送業界とは

運送業界とは

運送業界は、商品や人を目的地まで届ける運搬を事業とする業界です。

目的地まで運ぶための手数料が主な収入源となります。

BtoB取引だけでなく、BtoCや最近ではCtoCでも運送業は利用されており、高齢化社会を迎える中、今後の発展も予想される業界です。

運送業界の定義

運送業界はサービス業の1つであり、日本標準産業分類では、「運輸業、郵便業」に分類され、中分類には

  • 鉄道業
  • 道路旅客運送業
  • 道路貨物運送業
  • 水運業
  • 航空運輸業
  • 倉庫業
  • 運輸に附帯するサービス業

に分けられます。

運輸だけで見ると「陸運」「空運」「海運」の3つに分類され、スーパーマーケットなどの小売店に野菜などの生産物を運ぶのは主に陸運です。

長距離には「空運」と「海運」が利用されますが、大型の機械や原材料などは「海運」が利用されます。

また運輸だけでなく電車などの旅客も運送業界に含まれるため、しっかり覚えておきましょう。

運送業界の大手3社

送業界の大手3社

日本郵船

日本郵船は、三菱財閥の中核企業であり、国際的な海上輸送業を中心とした総合物流や客船事業を運営している企業です。

日本の3大海運会社の1つで、石油や天然ガスなどの資源を海外から運送している企業としても知られています。

資本金1,443億1,983万3,730円
売上1兆6,084億1,400万円
代表取締役長澤仁志
利益2,153億3,600万円
時価総額1兆6,087億2,100万円
従業員数35,165名

日本通運

日本通運は、NIPPON EXPRESSホールディングスの子会社であり、国内物流企業の最大手として知られています。

国内だけでなく海外との取引実績も多く、法人から個人まで利用者も幅広いです。

資本金701億7,500万円
売上2兆791億9,500万円
代表取締役齋藤充
利益781億円
時価総額6,633億6,000万円
従業員数34,449人

ヤマトHD

ヤマトHDは、宅配便の国内シェア1位であるヤマト運輸株式会社などを傘下に持つ持株会社です。

「クロネコヤマト」の愛称でも知られており、ロゴマークをつけたトラックを見たことがある人もたくさんいるでしょう。

資本金1,272億3,400万円
売上1兆6,958億6,700万円
代表取締役長尾裕
利益921億2,100万円
時価総額9,500億6,700万円
従業員数224,945名

運送業界の特性

運送業界は、インターネット販売の普及と共になくてはならないインフラのような存在となっています。

しかし、規制緩和により参入が容易となり業界内の競争は激しくなる反面、高速道路費用アップや環境への配慮などの問題もあり、利益確保が難しい業界です。

また、海外との取引を行う海運や空運は国際情勢の影響を受けやすく、コンテナ不足や石油価格上昇により、コストが急激に上がっています。

決して無くならない業界ですが、海運や空運はすでに大企業が抑えているため、新たな参入が難しいです。

また、多重下請け構造となっているので適正価格で取引されているかも見定めなくてはなりません。

陸運はまだ参入余地はありますが、先述の通りすでに競争が激しい状態なので、新規に進出できたとしても独自サービスを打ち出して差別化を図る必要があるでしょう。

運送業界の取引の流れ

運送業界の取引は生産者が消費者に商品を届ける「貨物輸送」と、人を目的地に運ぶ「旅客輸送」の2つに分けられます。

商品を届ける貨物輸送は、生産者から運送会社に依頼を受けて、運送費用や仲介手数料、輸送料などを見積もり後に受注し、商品輸送後または輸送前に費用請求となります。

人を届ける旅客輸送は、輸送費用を得て収益化する仕組みです。

輸送手段は双方ともに

  • 陸運
  • 空運
  • 海運
  • 鉄道

のいずれかとなります。

費用は距離や運ぶものによって変わり、冷凍食品や生鮮食品などの場合は、特別な処置も必要なので追加費用も取れるでしょう。

運送業界の市場規模

運送業界の市場規模

矢野経済研究所によると2020年度の物流17業種総市場規模は、前年度比0.8%減の20.2兆円で、2022年度は21.6兆円と右肩上がりです。

また、全日本トラック協会の「日本のトラック輸送産業現状と課題2021」によると、トラック運送事業の市場規模は年間約16兆円まで伸びると予想されています。

宅配数が右肩上がりに増えていることが背景にあり、今後も拡大が予想される業界といっていいでしょう。

引用元:矢野経済研究所

引用元:日本のトラック輸送産業現状と課題2021

運送業界の課題

運送業界の課題

運送業界の課題を人、業務、未来の観点から見てみましょう。

人の課題

運搬するのはドライバーや運転手になるため、長時間労働を強いられる環境を嫌がり、希望者が少なく人材不足の課題があります。

少子高齢化の流れもあり、若手ドライバーが減少し高齢化が進んでいる状況で、人手不足の解消は運送業界が早急に考えなくてはならない事項です。

ドライバーに負荷がかかる業界なので、今後無人自動車やドローンによる配達などが、テクノロジーの進歩と法改正で実現できれば、一気に解決できるかもしれません。

ただ、すぐできるわけではないので、労働環境の整備を行い、少しでも改善していくぐらいしか即対処できる術が見つかりません。

業務の課題

荷待ち時間が長い、道路渋滞による就業時間の長期化など、ドライバーにかかる負担が大きく労働時間が不規則になりがちな点は、業務面での課題です。

人を運ぶ旅客輸送も運転士に対する責任が重く、プレッシャーを感じながらの仕事となるため、従業員へのケアが十分でなくてはなりません。

それでも宅配物の数は年々増えているし、ジャストインタイムで持ってきてほしい要望も多いため、負担が減ることはないでしょう。

人手不足の解消が業務の負担解消につながるので、給与アップや労働環境改善により就業者を増やす動きも検討すべきと考えられます。

未来の課題

少子高齢化により国内マーケットは縮小していくと考えられるため、海外市場へ進出は必須事項ですが、中小企業ですぐできるものではありません。

競争力をつけるためには事業統合などを検討しなければならないでしょう。

また、業務効率化を進めるため、IoT技術の活用も大きな課題です。

倉庫業などの物流センターであればロボットを活用した業務効率化を実現できますが、やはり初期投資が大きなものとなるため、導入を躊躇う中小企業も多いでしょう。

しかし、参入企業も多い業界なのでいつまでも人に頼って業務をしていると利益が逼迫され、競争に負けてしまいます。

運送業界のM&Aを行うメリット

運送業界のM&Aを行うメリット

それでは、運送業界でM&Aを行うメリットを見てみましょう。

同業種間でのメリット

運送業界同士のM&Aは、経営基盤を強化できます。

同業なので仕事内容が変わることもなく、すぐに事業を進められる点は同業ならではのメリットです。

資源であるドライバーを獲得できるため、人手不足を解消して仕事量を増やして対応できる点は、M&Aで経営をさらに強化できるでしょう。

他業種間でのメリット

他業種から運送業のM&Aを行う場合は、今後も売上が見込める業界へ進出できる点です。

新規参入がしやすい業界ですが、すでに競争が激しいため実績ある企業を買収した方が早く結果を出せるでしょう。

とくに海外市場を相手にしている企業を買収するのであれば、更なる売上アップも見込めます。

売り手のメリット

会社売却によって資金獲得と債務からの解放が大きなメリットです。

これは運送業界に限った話ではありませんが、M&Aで自社を売却すれば利益を生み出せます。

その資本で新たな起業をするのもいいですし、セカンドライフをゆっくり過ごすのもいいでしょう。

会社を経営していると債務に悩まされますが、しんどいと感じている場合は、事業売却を検討してみてはいかがでしょうか。

廃業するとそのコストもかかってしまうため、事業継承もできるM&Aがおすすめです。

買い手のメリット

買い手のメリットは、事業規模拡大もありますが、ブランド獲得も大きなメリットです。

運送業は一般消費者が目にすることも多い事業なので、とくに知られている起業を買収できればブランド力も一緒に手に入れられます。

ブランド力を活かした広告宣伝も可能ですし、これまで続いてきた安心感を活かした新たな顧客獲得もできるでしょう。

運送業界のM&Aを行う注意点

運送業界のM&Aを行う注意点

運送業界でM&Aを行う際の注意点は、運搬に使う車両や船などの資産をどのぐらい持っているか確認することです。

運送に使える車両の対応年数は短いため、台数だけでなく更新時期などのチェックもしてください。

そのため、タイミングもしっかり見定めましょう。

運送業界は外的事情に左右されるため、景気や原油価格が高騰している時にM&Aで売却するとより高い金額で売れるかもしれません。

また、季節によっても利益が変わる業界なので、売上は年次ではなく毎月の細かい単位で確認して企業を見定めてください。

丸めて見てしまうと本当に業績がいい会社なのか判断ができません。

運送業の売却相場

運送業を営んでいる企業を売却する際、経営者が気になるのは売却価格の相場でしょう。

結論からいうと、運送業を営んでいる企業の事業規模などによって売却価格は異なるため、相場となる金額を一概に決めることは出来ません。

ただし、おおよその目安となる金額は、時価純資産に2〜5年分の営業利益を足した値であるといわれています。

実際の売却価格は他の方法なども組み合わせて求めるため、あくまで目安であることは把握しておきましょう。

他の算出方法などを知りたい場合は、下記の記事もご参照ください。

【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!

運送業界でのM&A・会社売却の事例

運送業界では、どのようなM&Aがおこなわれてきたのでしょうか。

1.サカイ引越センターによるSD ホールディングスの子会社化

2016年4月、自動車運送・引越業を運営している株式会社サカイ引越センターは、クリーンサービス業を手掛けている株式会社 SD ホールディングスを子会社化することを発表しました。

SD ホールディングスを子会社化することによって、引越し時のクリーンサービス需要を満たすことを目指しています。

2.センコーグループホールディングスによるAirRoad Pty Ltdのグループ化

2021年4月、物流企業であるセンコーグループホールディングス株式会社は、オーストラリアを中心に輸送業を営んでいるAirRoad Pty Ltdをグループ化しました。

AirRoad Pty Ltdが持つ物流サービスの技術と、センコーグループホールディングスが持つノウハウを融合させ、事業の拡大を図っています。

3.SBSホールディングスによるリコーロジスティクスの連結子会社化

2018年5月、運送業・不動産業を営むSBSホールディングス株式会社は、リコーの子会社であるリコーロジスティクス株式会社の普通株式を一部取得し、連結子会社化させることを発表しました。

株式取得により、SBSグループは物流サービスの強化を図りました。

4.ビックカメラによるエスケーサービスの完全子会社化

2018年4月、大手家電量販店を経営する株式会社ビックカメラは、運送業を営む株式会社エスケーサービスを完全子会社化しました。

エスケーサービスの子会社化によって、商品の運送や設置の品質向上を目指しています。

5.日本通運と名鉄運輸の資本業務提携

2015年12月、物流事業を営んでいる日本通運株式会社は、同じく物流事業を行っている名鉄運輸株式会社と資本業務提携を締結しました。

業務提携を行うことによって、物流サービスの強化や事業の拡大などを目指すと公表されました。

運送業界M&Aのまとめ

送業界M&Aのまとめ

本記事をまとめると

  • 運送業界は需要が高まっており業績は安定しているが、少子高齢化により国内マーケットは縮小すると考えられる
  • 最大資源はドライバーなどの人であり、人手不足は大きな課題となっている
  • 参入しやすい業界だからこそ競争が激しいため、M&Aによる企業統合は検討材料となる
  • 今後はIoT化による業務改善と労働環境の整備が運送業界で利益を上げるために必要である。

運送業界はインターネット販売の普及で運送が需要が堅調な市場ですが、コスト面、人材面での競争が激しくなっている事を留意する必要があります。

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