投稿日:2022/07/11
更新日:2022/07/11
近年、売却益の獲得や事業承継を目的としたM&Aが活発に行われています。
M&Aの手法は多数存在しており、その中の一つとして事業譲渡があります。
事業譲渡によるM&Aを検討している場合は、メリットやデメリット、流れなどを把握して計画的に進めていきましょう。
この記事では、事業譲渡を検討している方に向けた情報を紹介していきます。
目次
事業譲渡とは、会社が営んでいる事業の一部または全てを売買するM&A手法です。
事業譲渡の最大の特徴は、契約内容によって譲渡する対象を選択できるという点でしょう。
株式譲渡のように自社を完全に売却するわけでは無いため、事業を売却した後でも、経営権は譲渡側の企業に残り続けます。
また、事業譲渡を行う際には、希望に応じてすべての事業を譲渡することも可能です。
事業譲渡によって得られるメリットを、譲渡側・譲受側の目線に分けて紹介します。
譲渡(売り手)企業が得られるメリットは、以下の4つが挙げられます。
事業譲渡によってM&Aを行う際には、特定の事業のみを選択して売却することが可能です。
自社が複数の事業を展開している場合、利益を生み出せていない部門を抱えていることもあるでしょう。
事業譲渡によってその事業を第三者に売却すれば、利益を生み出せている事業に集中することができます。
売却で獲得した利益を他の事業に回せば、豊富な資金の元で事業を行えます。
採算不良の事業を切り離し、特定の事業に集中できることは、事業譲渡の大きなメリットです。
事業譲渡では、譲受企業に譲渡する対象を選択することができます。
負債を切り離して事業のみを譲渡することもできるため、譲受企業を見つけやすいというメリットもあります。
通常、譲受企業が事業買収を試みる際は、譲渡企業が抱えている負債も譲渡されてしまうため、そのようなリスクを嫌いM&Aを実施しないこともあるでしょう。
事業譲渡では負債を引き継ぐリスクを抑えられるため、多額の負債を抱えている企業でもM&Aを実施する相手を見つけやすくなります。
事業譲渡では特定の事業を切り離して売却することができるため、M&A後も会社経営を存続させることができます。
譲渡した対価をもとに、新たな事業の立ち上げを図ることもできるでしょう。
多額の負債を抱えていた場合、売却益を利用して債務を解消することで、財務環境を整えることも可能です。
取引先や従業員との関係も存続できるため、労働環境を変えずに事業を存続することができます。
事業譲渡によって第三者に事業を承継することで、後継者がいない企業でも事業を存続させることができます。
近年、少子高齢化の影響などによって、経営者が事業の存続をできない年齢になった場合でも、承継者がいないという中小企業が増えています。
事業を承継する相手がいないことで、廃業という選択をとるケースも少なくないでしょう。
後継者がいない場合は、M&Aによる事業承継は有効な手段です。
承継者を育成する時間を抑えることもできるため、事業に集中しながら後継者問題を解決することができます。
譲受企業が獲得できるメリットは、以下の3つが挙げられます。
事業譲渡を選択することによって、自社が取得したい事業のみを譲り受けることができます。
譲り受ける人材を選ぶこともできるので、自社が必要としている資産のみを効率的に獲得したい場合に有効な手段といえるでしょう。
自社が強化したい事業や、人員などが足りない事業があった場合は、それらを事業譲渡によって補填することが可能です。
承継する事業を選択できることは、譲渡企業・譲受企業ともに、大きなメリットであるといえるでしょう。
株式譲渡などによって事業を承継した際には、譲渡企業が抱えている負債もあわせて引き継がれます。
譲渡企業が多額の負債を抱えていた場合、買収によって経済的なダメージを負う可能性もあるでしょう。
事業譲渡によって譲渡対象から負債を外せば、資金損失のリスクを回避して事業を引き継ぐことが可能です。
事業譲渡によって引き継ぎたくない負債などがあった場合は、あらかじめ譲渡企業との交渉時に話をしておきましょう。
事業譲渡によって自社が運営していない事業を獲得することで、新規事業への参入をスムーズに進めることができます。
自社のみで新規事業を立ち上げようとした場合は、人材の補充やノウハウの構築などに、多大な時間を要するでしょう。
業界の動きが活発な事業の場合、早期の参入ができなかったことで、充分な利益を獲得できない可能性もあります。
事業譲渡によって事業や人材を獲得すれば、立ち上げにかかる時間を抑えて事業を立ち上げることができます。
また、譲渡企業が複数の事業を展開していた場合は、獲得したい事業のみを取得できるため、より効率的に参入を図ることができるでしょう。
事業譲渡にはさまざまなメリットがありますが、反対にデメリットも存在します。
メリットとデメリットを比較して、自社にあったM&A手法を選択しましょう。
ここからは、事業譲渡を行うデメリットについて解説していきます。
譲渡企業が事業譲渡を行うデメリットは、以下の3つが挙げられます。
株式譲渡などによって事業を承継する場合、包括的に譲渡を行うため手続きがシンプルです。
事業譲渡を行う際は、それぞれの事業を別々に承継するため、手続きが煩雑というデメリットがあります。
取引先や提携企業からも同意を得る必要があるため、承継のために時間やコストを割く必要があります。
譲渡する事業が多い場合は、手続きがさらに増えるため注意が必要です。
事業譲渡によって事業を承継した場合、譲渡企業側は競業避止義務を負います。
競業避止義務の規定によって、同一の市町村および隣接する市町村の区域内では、20年間譲渡事業と同じ事業を行うことができません。
譲渡後に同事業を行う可能性がある場合は、その事業を譲渡していいのかを慎重に検討しましょう。
また、事業譲渡以外の方法で事業を引き継いだ際にも、両企業の合意があれば同様に定められることもあります。
事業譲渡によって従業員も承継する場合は、それぞれ契約を結び直さなければなりません。
労働環境が変わってしまうことによって、譲渡の際に従業員た退職する可能性もあるでしょう。
事業譲渡後にリスクを負わないためにも、雇用条件などは買い手企業と事前に話し合っておくことが大切です。
また、従業員の数が多い場合にはそれだけ手続きも増えるため、それらに時間がかかるというデメリットがあることも把握しておきましょう。
譲受企業が事業譲渡によって事象を承継することには、以下のデメリットがあります。
事業譲渡を行う場合、資産や負債をそれぞれ個別で移転手続きを進める必要があるため、それらを実施するための手間や時間がかかります。
担保によって資産を所有していた場合などは、さらに時間がかかることが予測できるでしょう。
また、事業譲渡によって事業を承継した場合は、許認可や権利を再度取得する必要があるため、事業の立ち上げにも時間を要します。
事業譲渡を行う際は、事前の準備を入念にすすめて、実施にかける時間を確保した上で行いましょう。
事業譲渡によって従業員も引き継ぐ場合は、再度雇用契約を結ぶ必要があります。
雇用条件によっては、従業員が離職を選択することも充分に考えられるでしょう。
優秀な人材を失ってしまった場合は、M&Aによるシナジーを発揮できない恐れがあります。
従業員の離職を防ぐためにも、譲渡企業や従業員との交渉はしっかりと進めておくことが大切です。
M&Aを行うための手法は、株式譲渡や会社分割など多岐にわたります。
では、事業譲渡によるM&Aが向いているケースは、どのような場合が挙げられるのでしょうか?
ここでは、事業譲渡がおすすめなケースを3つ紹介します。
1つ目は、事業を複数運営していた上で、採算の取れていない事業も運営していたケースです。
利益を挙げられない事業を展開していた場合には、それらの赤字を解消するために他の事業で獲得した利益を回す必要があるでしょう。
利益を出している事業に回す資金が減少してしまうと、成長戦略を取ることも難しくなることが予測できます。
採算が取れない事業を行っている場合は、事業譲渡によって切り離すことも有効な経営戦略です。
2つ目は、存続させたい事業があるけれど、資金難によって経営が難しいケースです。
企業を運営している際に、メインとなる事業とは異なる事業を展開していることもあるでしょう。
メインで行っている事業の業績が傾いた場合は、他の事業を売却して資金を回すことができます。
事業譲渡によって資金を獲得し、経営環境を整えることができれば、事業の再建をはかることも可能です。
事業譲渡は実施後も企業を存続させることができるため、経営資金を獲得したい場合に有効な手段といえるでしょう。
3つ目は、事業の存続を図りたいけれど、後継者がおらず廃業を検討しているケースです。
事業譲渡によって全ての事業を外部に譲渡すれば、事業の存続を図ることが可能です。
事業に対して強い思い入れがある場合は、外部企業への事業承継を検討してもよいでしょう。
中小企業で頻繁に行われてる事業承継を目的としたM&Aでは、株式譲渡や事業譲渡が有効です。
4つ目は、買い手企業がリスクや買収資金を抑えてM&Aを行いたいと考えているケースです。
事業譲渡では、譲渡企業側の簿外債務を引き継ぐ恐れがないため、リスクを抑えたM&Aを行うことが可能です。
また、承継する事業を選択して引き継ぐことができるため、全てを買収する資金がない場合でも、特定の事業を獲得することができます。
それらのメリットを獲得したいと考えている場合は、事業承継によるM&Aを検討してもよいでしょう。
ここからは、実際に事業譲渡を行う際の進め方を、譲渡企業側の目線を軸に紹介していきます。
事業譲渡を行う際は、以下の流れで進めていきます。
事業譲渡を行う際には、事前の準備はかかせません。
自社が持つ強みや弱み、経営状況や希望譲渡価格などを事前に考えておきましょう。
自社を入念に分析しておくことで、買い手企業との交渉をスムーズに進めることができます。
また、譲受企業も買収を行う目的を明確にして、条件に合う企業を見つけられるように準備しておくことも大切です。
事前の準備が完了したら、譲受企業の選定を行いましょう。
譲受企業を個人で探すことは難しいため、一般的には仲介会社などに依頼して企業を探します。
M&A仲介会社では、相手企業の選定から、M&Aに関するサポート全般を受け持っています。
法務的な手続きにも対応しているため、スムーズなM&Aを実施することが可能です。
M&A仲介会社に依頼する場合は、希望する相手企業の条件を明確に伝えましょう。
希望条件を満たす企業が見つかった場合は、秘密保持契約を結んでトップ面談を行います。
トップ面談とは、譲渡企業と譲受企業の代表が直接面談を行うことです。
両企業はトップ面談の際に初めて顔を合わせることになるので、事前に疑問点がないかを把握して確認を行いましょう。
また、トップ面談で重要なことは、相手企業との信頼関係を構築することです。
面談後にM&Aを進めていく場合は、両企業間での協力はかかせません。
企業経営に対する考え方や、経営者の人間性を把握し信頼関係を構築することで、統合後の手続きもスムーズに行うことができるでしょう。
トップ面談によって条件に納得ができた場合は、基本合意書の締結を行います。
基本合意書とは、後述するデューデリジェンスを行うための権利や、買収の条件など記載した書類です。
注意点として、基本合意書は交渉条件の確認書類といった立ち位置であるため、法的な拘束力はありません。
基本合意書の作成は、両企業間で合意した内容を把握するために作成します。
基本合意書の作成が完了した後は、デューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスとは企業監査のことであり、譲受企業が譲渡企業を買収することに関してリスクがないかを確認するために行います。
結果次第では、基本合意書の作成時に決めた譲渡価格などが変化することもあるので注意しましょう。
実施後は、デューデリジェンスで確認できた内容を元に、取締役会での承認を得ます。
取締役会での承認を得たら、事業譲渡契約の締結を行います。
事業譲渡契約書の項目に規定はありませんが、事業内容・目的・譲渡価格・譲渡日・従業員の雇用条件など、必要事項を記載するのが一般的です。
個人で作成した場合、記載事項に漏れが生じる恐れがあるため、仲介会社や専門家などに作成を依頼しましょう。
また、事業譲渡契約書は、基本合意書とは異なり法的拘束力があるため注意が必要です。
事業譲渡契約書を締結した後は、各所への届け出といった手続きを進めなくてはいけません。
届け出が必要になるケースは条件によってことなるため、ここでは代表的な届け先を2つ紹介します。
1つ目は、公正取引委員会への届け出です。
公正取引委員会への届け出が必要になるのは、国内での売上高が200億を超えている譲受企業が、以下の条件に当てはまっていたケースです。
また、公正取引委員会が届け出を受け取った後、30日間は事業譲渡を行っては行けないため注意が必要です。
2つ目は、臨時報告書の届け出です。
臨時報告書は、有価証券報告書の提出義務がある企業が、条件に該当した場合、内閣総理大臣へ提出する必要がある書類です。
提出が求められるのは、以下のケースに該当しているときです。
両企業は、事業譲渡の効力が発生する20日前までに、株主へ通告を行う必要があります。
この通告は、事業譲渡に反対している株主に対して、株式買取請求をする機会を与えるために行います。
また、効力が発生する前日までには、株主総会の特別決議で承認を得なければなりません。
特別決議によって3分の2以上の賛同を得られた場合は、事業譲渡を行うことができます。
事業譲渡では資産を個別に譲渡するため、名義変更の手続をそれぞれ行う必要があります。
基本的に手続きは譲受企業側が行いますが、必要に応じて譲渡企業は情報の提供を行いましょう。
また、事業譲渡では許認可が承継されないため、譲受企業は事業を行うために取得する必要があります。
許認可の手続きは要件によって時間がかかるので、余裕をもったスケジューリングを行いましょう。
事業譲渡を行う際には、以下のポイントに注意して行いましょう。
事業譲渡では、必要に応じて従業員を承継することも可能です。
ただし、従業員を譲渡する際には一人ひとりの同意を得なければなりません。
事業譲渡の場合は、譲渡後の事業運営のために、譲受企業へ移転するケースが一般的です。
雇用条件が希望に合わなければ、従業員が一斉に離職する恐れがあるため、給料・賞与・労働時間などに関しては事前に話し合っておきましょう。
また、従業員が希望する場合は、自社の別事業に移転させるなどの対応を取ることも可能です。
事業譲渡を行う際は、必要であれば免責登記を行いましょう。
免責登記とは、「譲受企業が譲渡企業の商号や屋号を使用する際に、譲渡側の事業によって発生した債務について責任を負わない」という登記です。
免責登記を行わず商号などを使用した場合、譲受企業は譲渡企業が抱えていた債務の責任を負わなければなりません。
そのようなリスクからは、免責登記にて債務を負わないことを明記しておけば回避することが可能です。
M&Aを実施する際には、情報の開示を行う前に秘密保持契約を結びます。
秘密保持契約を結ぶ理由は、M&Aを行うことが外部に漏れてしまった場合、さまざまなリスクを負ってしまうためです。
例えば、社内にM&Aを行うことが伝わってしまった場合、不安に思った従業員が交渉前に離職する恐れがあります。
顧客や取引先に伝わってしまえば、不信感を抱かれてしまい収益が低下する可能性もあるでしょう。
そのような不利益を得るリスクを減らすためにも、秘密保持契約の締結は必須です。
事業譲渡では、売却益を獲得できる譲渡企業だけでなく、譲受企業にも税金が発生します。
事業譲渡は税制面で優遇されるといったことは無いため、株式譲渡よりも税負担が大きくなることもあります。
ただし、株式譲渡と異なり事業譲渡には譲渡対象を選択できるといった強みがあるため、税金以外にも注目して手法を決めましょう。
ここからは、譲渡側・譲受側の目線から、発生する税金について解説していきます。
譲渡側に発生する税金は、「法人税」と「消費税」の2つが挙げられます。
事業譲渡を行った場合、譲受企業は法人税の支払いが発生することがあります。
法人税を支払うケースは、譲渡資産から負債額を引いた結果、譲渡資産が上回り利益が生じた場合です。
法人税は、獲得した利益から約30%の税が課されます。
例として、事業の売却金額が5億円、負債が2億円、法人税の税率が30%だった場合は、以下の金額を納税する必要があります。
(5億円-2億円)× 税率30% = 9000万円
事業譲渡の際には、課税対象となる資産に消費税が課されます。
法人税とは異なり、消費税は利益に対して課されるわけではありません。
そのため、事業譲渡によって赤字が生じた場合でも、消費税を支払う必要があるため注意が必要です。
また、株式譲渡の場合は消費税が発生しないため、手法を株式譲渡から事業譲渡に変更した際には、再度発生する税金の計算を行いましょう。
譲受企業が支払う税金は、「不動産所得税」「登録免許税」「消費税」の3つが挙げられます。
不動産所得税は、事業譲渡によって不動産を譲り受けた場合に発生する税金です。
不動産の対象には、土地と建築物が当てはまります。
不動産所得税の税率は4%であり、不動産の評価額に対して課されます。
事業譲渡によって不動産を引き継いだ場合は、登記の書き換えを行う必要があるため、不動産所得税だけではなく登録免許税も支払う必要があります。
課税額は、不動産の評価額に対して2%です。
前述した通り、事業譲渡を行う際には消費税が発生しますが、実質的に消費税は買い手企業が負担することになります。
これは、事業譲渡の対価を支払う際には、課税対象の消費税を上乗せして譲渡企業に渡すためです。
消費税の納付は譲渡企業側が行いますが、納税金額の負担は譲受企業に発生するため注意しましょう。
M&Aの手法は、事業譲渡以外にも多数存在します。
ここからは、M&Aにおいて使用される機会が多い「株式譲渡」「会社分割」と、事業譲渡の違いについて解説していきます。
また、その他の手法について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
株式譲渡とは、譲渡企業の株式を譲受企業に引き継ぐことで、経営権を譲渡するという手法です。
株式譲渡は株式の移動のみで行うことができるため、事業譲渡よりも手続きが容易という特徴があります。
M&Aを素早く行うことができるため、中小企業のM&Aを行う際には最も選ばれている手法です。
ただし、株式譲渡では事業譲渡と異なり譲渡する事業を選択することができません。
包括して事業を承継するため、譲渡企業が抱えている負債も譲受企業に引き継がれます。
特定の事業のみを承継したい場合や、負債が大きく買い手企業が見つからない場合は、事業譲渡による承継を検討しましょう。
会社分割とは、特定の事業を切り離して承継する手法です。
会社分割の方法は「新設分割」と「吸収分割」に分けることができます。
新設分割とは、既存の会社が行っている事業などを、新規に設立した企業に承継する手法です。
吸収分割とは、既存の企業同士で交渉を行い、事業を承継する手法です。
どちらも事業譲渡と似ていますが、会社分割では許認可や債務などが譲受企業に包括して承継されます。
個別に手続きを行わないため事業譲渡よりもスムーズに進めることができますが、株式譲渡と同じく負債が大きい場合は買い手企業が見つからない可能性があります。
状況に応じて、自社にあった手法を選択しましょう。
M&Aによって獲得できる資金は、売却する事業や契約内容によって大きく異なります。
そのため、事業譲渡に限らず、M&Aによって獲得できる資金の相場は一概にいえません。
ただし、おおよその目安となる金額は、純資産に2~5年分の経常利益を足した金額であるといわれています。
実際には、さらに複雑な計算を行った上で、両企業間の交渉によって企業価値が決定されることになります。
より正確な譲渡価格を算出したい場合は、仲介会社などの専門家に依頼するとよいでしょう。
また、企業の譲渡価格を算出する手法のことを、企業価値評価といいます。
企業価値評価について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
事業譲渡によるM&Aは数多く行われており、今後も増えることが予想できます。
ここからは、実際に行われた事業譲渡の事例を5つ紹介します。
2017年10月、東芝は自社が運営している東芝病院を、医療法人社団緑野会へ譲渡しました。
東芝病院は、1945年に設立し、地域密着型の病院として社会貢献を行っていました。
東芝は、医療業界で実績の高い緑野会に事業を譲渡することで、より充実した地域医療への貢献を図っています。
2014年1月、大手電機メーカーであるソニーは、ルネサス山形セミコンダクタ株式会社が所有している鶴岡工場を取得し、ソニーセミコンダクタ株式会社へ譲渡することを発表しました。
事業譲渡によって、ソニーはイメージセンサーの生産性の強化を図りました。
2010年4月、大手飲料メーカーであるアサヒビールの子会社であるアサヒ飲料株式会社は、ハウス食品株式会社の事業の一つである六甲のおいしい水事業を譲り受けました。
事業の譲り受けによって、アサヒ飲料は業界内でのブランド力の向上を図りました。
2016年2月、動画配信サービスで有名な株式会社U-NEXTは、アルテリア・ネットワークス株式会社が手掛けているブロードバンド回線事業を一部取得したことを発表しました。
アルテリア・ネットワークスは、事業譲渡によってIoTサービスの事業拡大などを図りました。
2012年3月、「L-eeDo」というLEDのレンタル事業を行っている株式会社エフティコミュニケーションズは、株式会社電通ワークスからLED事業を譲り受けることを発表しました。
L-eeDoの商標は電通ワークスが所有していましたが、電通ワークスが事業から撤退するため、事業譲渡によって商標権を譲り受けました。
事業譲渡は株式譲渡などと異なり、特定の事業を切り離して譲渡することができます。
負債を切り離して譲渡することもできるため、負債が多い企業でも譲渡先を見つけることが可能です。
また、譲受企業も負債を引き継ぐリスクを抑えられるといったメリットがあります。
事業譲渡を含めたM&A手法の特徴を把握して、自社にあった選択をしましょう。