投稿日:2022/03/31
更新日:2022/08/08
近年、少子高齢化の影響などによって、後継者がいない中小企業が増えています。
後継者がいない事によって事業が継続できなくなり、廃業という選択肢をとる経営者も少なくないでしょう。
また、不況による経済的損失によって、事業を存続できないといったケースも存在します。
さまざまな理由によって事業の継続が難しい場合、M&Aによる事業承継は有効です。
M&Aによって事業を第三者に譲渡することで、廃業せずに事業を存続させることができます。
この記事では、M&Aを検討する際に知っておきたい基礎知識を紹介します。
目次
M&A(えむあんどえー)とは、「企業の合併・買収」という意味があり、Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略称です。
広義の意味としては、合併と買収以外にも、資本業務提携を含む企業戦略全般を意味します。
買収という言葉には企業の乗っ取りというイメージがあるため、あまり良い印象を抱かない方も多いでしょう。
しかし、近年では買収側・売却側の両社にメリットがあり、企業戦略として有効であることから、中小企業を中心に幅広く行われています。
M&Aを行う手段は、株式譲渡や事業譲渡、株式の交換など幅広く存在します。
基本的に資本の移動を伴う提携全般を指すため、共同で出資して企業を立ち上げる合弁会社の設立や、株式の持ち合いも含むことがあります。
手法によって異なるメリットやデメリットがあるため、自社の経営戦略に合った選択を選ぶことが大切です。
ここからは、M&Aにおいて用いられることが多い「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割」に焦点を絞り紹介していきます。
また、M&Aの手法について詳しく知りたい方は、下記の記事もご参照ください。
株式譲渡とは、譲渡企業が発行している株式を譲受企業へ全て譲渡し、対価として金銭を支払う手法です。
株主が変わるだけで譲渡企業は存続するため、企業自体に大きな変化は起きません。
従業員や許認可などは存続できるため、対外的に変化はなくそのまま事業を継続することができます。
株式譲渡によるM&Aは、株式を譲受企業に譲渡するというシンプルな方法で行えるため、他の手法と比較すると手続きが容易です。
そのため、非上場企業がM&Aを行う際には最も多く使用されている手法です。
また、株式譲渡は会社譲渡と同じ意味で使われることもあります。
株式譲渡のメリット | ・M&Aの手法の中では手続きが容易であるため実施しやすい ・許認可や従業員をそのまま承継できる ・譲渡企業は負債も解消できる ・譲受企業は短時間で企業を獲得できる |
株式譲渡のデメリット | ・譲受企業は、譲渡企業が抱えている負債も承継してしまう ・譲渡企業の負債が多い場合、譲受企業が見つからない可能性がある |
【関連記事】会社譲渡とは?メリットとデメリット、相場や事例などを解説!
事業譲渡とは、譲渡企業が行っている事業の一部、または全てを譲受企業に譲渡する手法です。
譲渡の対象は、土地や設備などの固定資産、人材なども含まれます。
事業譲渡では、譲渡の対象とする内容を選択することができるため、譲受企業は売りって企業の負債を切り離して買収することもできます。
譲渡企業が複数の事業を運営している場合、特定の事業のみを切り離して売却し、売却益を他の事業に回すことも可能です。
譲渡企業に譲渡する内容が選択できるという強みを持つ反面、手続きを一つ一つ行う必要があるため、株式譲渡よりも時間がかかってしまうというデメリットもあります。
事業譲渡のメリット | ・譲受企業に譲渡する範囲を選択できる ・負債を切り離すことができるため、譲受企業を見つけやすい ・譲渡企業が事業を複数行っている場合、他の事業に集中できる |
事業譲渡のデメリット | ・譲渡企業は負債を承継できないこともある ・株式譲渡と比較すると手続きが煩雑 |
【関連記事】事業譲渡とは?メリット・デメリット、相場や事例などを解説!
会社分割とは、譲渡企業が営んでいる事業を切り離し、譲受企業に包括承継させる手法です。
事業譲渡と似ていますが、会社分割では資産と負債を包括して承継できるため、スムーズに手続きを進めることができます。
加えて、事業譲渡と異なり消費税が課税対象外となるため、買収にかかる資金を抑えることができます
また、会社分割の方法は、「新設分割」と「吸収分割」に分けることが可能です。
新設分割は、新たに企業を設立して、その企業に経営権や資産を譲渡する手法で、対価は株式を使用します。
吸収分割は、既存の法人に権利などを譲渡する手法であり、対価として株式や現金を使用することができるという違いがあります。
会社分割のメリット | ・事業の一部を切り離して譲渡できる ・事業譲渡よりも比較すると税金を抑えることができる ・事業譲渡よりも手続きが容易 ・譲渡対価として株式を使用できる |
会社分割のデメリット | ・簿外債務などの負債を引き継ぐリスクがある ・一部の事業は許認可の再取得が必要 ・株式を対価とした場合、株価が変動する恐れがある |
M&Aを実施することによって、売却側・買収側の双方にさまざまなメリットがあります。
しかし、当然ながらM&Aの実施によって生じるデメリットも存在します。
どちらの要素も確認して、M&Aを行うかを判断しましょう。
ここからは、M&Aのメリットとデメリットを、売却側・買収側の目線に分けて解説します。
事業を売却する事によって獲得できるメリットは、主に以下の7つが挙げられます。
事業を第三者に譲渡することで、株式を所有しているオーナーは、対価として創業者利益を獲得することができます。
獲得した資金を活用すれば、新たな事業の立ち上げなどを行うこともできるでしょう。
譲渡価格によっては、獲得した資金を運用しアーリーリタイアを狙うこともできるため、第二の人生を歩むことも可能です。
最近では、M&Aによる事業売却を前提として、新たにビジネスを立ち上げる起業家も増えています。
事業を第三者へ譲渡することで、後継者問題を解決することが可能です。
近年、経営者が高齢となったことによって、事業の存続が困難になった中小企業が増えています。
M&Aを実施することによって第三者へ事業を譲渡すれば、廃業せずに事業の存続を図ることができます。
加えて、自社で後継者を育成する手間を削減できるため、後継者問題をスムーズに解決することができるでしょう。
中小企業におけるM&Aが活発化した理由は、後継者問題の解決ができるという利点があるからであると言われています。
経営不振や後継者の不在によって廃業した場合、従業員は新たな働き口を探す必要があります。
経営者にとっては、廃業によって従業員が仕事を失うことは避けたい事項といえるでしょう。
M&Aによって事業を譲渡すれば、廃業をせずに済むため、従業員の雇用を守ることが可能です。
注意点として、M&Aの手法によっては従業員を譲渡対象から外すことができるため、事前に譲受企業と交渉をしましょう。
経営状況が安定した企業に売却をすれば、労働環境の改善を狙うこともできます。
大手企業に自社を売却することによって、傘下グループとして事業を営むことができます。
大手企業の傘下であれば、資金や資材などの援助を受けることができるため、自社の利益を増やすこともできるでしょう。
傘下に加わることで自社のブランド力が向上すれば、取引企業の増加を図ることも可能です。
事業を売却する際は、譲受企業の事業規模を確認することも大切な要素です。
会社を廃業する際には、最低でも7~8万円程度の費用がかかります。
この程度の資金であれば、捻出できないといったケースは少ないでしょう。
しかし、事業運営のために施設を借りていたり、多数の資材を抱えていた場合は、それらを撤去するための資金が必要になります。
M&Aによって事象を第三者へ譲渡すれば、それらの処分にかかるコストを削減することが可能です。
M&Aによって事業を売却すれば、譲受企業が所有している設備やノウハウなどの経営資源を活用することができます。
加えて、資本での援助を受けることができれば、事業を安定して行うこともできるでしょう。
資材を譲受企業と共有すれば、スケールメリットによるコストダウンを図ることも可能です。
また、事業譲渡や会社分割によって一部の事業を譲渡すれば、売却益を他の事業に回して運営活動を安定させることもできます。
長年経営を続けている企業には、高い技術力や蓄積されたノウハウが存在します。
事業を続けてきたことによって積み重ねた技術などを、廃業によって消失させることに抵抗を覚える経営者も少なくないでしょう。
M&Aによって事業を承継すれば、それらを失うことなく引き継ぐことが可能です。
中小企業の場合は、個人保証によって金融機関から融資を受けて事業を行っているケースが多く存在します。
このような場合は、個人保証がネックとなるため、挑戦的な経営を行うことは容易ではありません。
しかし、経営に失敗した場合は自己の資産も失うため、プレッシャーに悩まされている経営者も少なくないでしょう。
M&Aによって個人保証や担保を承継すれば、経営に関する負担から開放されます。
事業を売却することによって生じるデメリットは、主に以下の5つが挙げられます。
M&Aによって自社を売却するためには、譲受企業の存在は必須です。
しかし、必ずしも自社の買収を希望する譲受企業が現れるとは限りません。
自社の買収を希望する企業が現れない場合は、自社独自の強みを探して、譲受企業に適切なアプローチを行いましょう。
譲受企業は買収によるシナジーの発揮を狙ってM&Aを行うことが多いため、他社にはない強みを持っていることは大きなアドバンテージです。
自社の買収を希望する企業が見つかった場合でも、自分が希望している価格で売却できるとは限りません。
企業の価値は将来生み出す利益によって算出されるため、それらが少ないと判断された場合には、売却価格は低く見積もられることもあります。
自社をなるべく高く売却したい場合は、M&Aを実施する以前から、多くの利益を獲得できる企業に育て上げておく必要があります。
また、自社が生み出している利益がピークのタイミングで売却することも、多額の売却益をかくとくするための有効な手段です。
M&Aによって経営主体が変わってしまうと、取引先や顧客から不信感を抱かれてしまい、契約が打ち切られてしまう可能性もあります。
付き合いのある取引先・顧客との繋がりを保つためにも、適切なタイミングで事情を説明する必要があります。
注意点として、M&Aの方針が定まっていない状況で伝えてしまうと、経営に対する不信感を高めてしまう恐れがあります。
取引先・顧客に伝える際には、譲受との交渉が進み、経営方針などが定まってから行いましょう。
事業譲渡などでM&Aを行った場合は、従業員との雇用契約を再度結び直す必要があります。
交渉時に雇用条件について話し合いを進めていなかった場合、労働環境が悪化する恐れもあるでしょう。
最悪のケースでは、従業員の集団退職を招く可能性もあります。
譲受企業・譲渡企業ともに、人材の流出は避けるべき項目であるといえます。
M&Aを行う際には、売却価格の交渉だけではなく、労働環境などの条件についても入念に話し合っておきましょう。
企業同士を統合した後は、企業文化のすり合わせを行う必要があります。
統合作業の準備に時間がかかってしまった場合は、従業員から不満を集めてしまうリスクがあるでしょう。
売却後、スムーズに事業を行うためにも、統合作業の事前準備は入念に行うことが大切です。
システムの統合だけではなく、業務の進め方や企業の文化など、細かくすり合わせておきましょう。
事業を買収するメリットは、主に以下の5つが挙げられます。
自社と同じ業種の企業を買収した場合は、既存事業の収益拡大を図ることができます。
例として、自社が関東内での顧客を中心にシェアを獲得していた場合、異なるエリアの顧客を獲得することができれば、収益の拡大を図ることもできるでしょう。
使用している資材を共有することで、発注のコストを抑えることも可能です。
同じような商流で収益を獲得している企業であれば、事業の強化を素早く行うこともできます。
既存事業の規模をスピーディーに拡大する方法として、M&Aは有効です。
新たに事業を立ち上げるためには、利益を挙げるためのシステム構築や、該当事業に対する知見を深めるために時間がかかります。
M&Aによって参入予定の事業を行っている企業を買収すれば、スムーズに新規参入を図ることが可能です。
また、譲渡企業が所有している資材も取得できるため、参入コストを抑えることもできます。
時間やコストを抑えながら新規事業に参入できることは、M&Aの大きなメリットです。
関連業種の企業を買収した場合は、一貫した事業の取り組みを行うことができます。
例として、自社が運送業を営んでいる際には、倉庫会社などを買収することで、効率的な物流戦略を図ることができるでしょう。
既存事業を強化する方法は、競合企業の買収だけではありません。
どのようなシナジーを生み出せるかを考えて、最も利益を生み出せる企業を選択することが大切です。
近年、業界を問わず、人材の不足に悩まされている企業は増加し続けています。
新たな人材を確保した後でも、育成には時間がかかるため、早急な戦力の確保は難しいでしょう。
即戦力になる人材を大量に確保したい場合は、M&Aによる人材取得が有効です。
資格が必須な業界でも、競合他社を買収することで技術を持つ有資格者を獲得し、利益の向上をはかることもできます。
M&Aの買収対象となる企業は、「競合他社」「同業種の企業」「新規参入を図っている業界の企業」などさまざまです。
対象となる企業の選定は希望する条件によって異なりますが、共通した目的は、買収によるシナジーの発揮でしょう。
M&Aによって生み出せるシナジーには、技術の共有による新製品開発や、バリューチェーンの強化による効率化などが挙げられます。
買収する企業を選ぶ際は、統合によってどのようなシナジーを発揮できるかを考えることが大切です。
企業を買収することによって生じるデメリットは、主に以下の4つが挙げられます。
M&Aが完了した後は、企業を統合するために時間を要します。
システムの統合などはM&A前に話し合ったスケジュール通りに進めれば良いですが、企業文化などのすり合わせに関しては、感情も絡むため簡単には進まないでしょう。
すり合わせの失敗によって内部分裂が起きてしまうと、M&Aによる成果を感じられずにモチベーションが低下する恐れがあります。
M&Aの実施後は、社員のモチベーションを高めM&Aを行って良かったと思わせることが大切です。
成果の出やすいプロジェクトから進めるなどをいった対策を行い、仲間意識を高めるように取り組みましょう。
株式譲渡などによってM&Aを実施した場合は、譲渡企業の簿外債務を引き継ぐことになります。
簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない債務のことで、未払い分の残業代などが該当します。
譲渡企業が多額の簿外債務を抱えていた場合、譲受企業は思わぬ損失を受けることになるでしょう。
簿外債務を確認するためにも、譲受企業は企業監査であるデューデリジェンスを入念に行う必要があります。
企業を買収するためには、譲渡企業の価値に対応した資金を用意する必要があります。
算出される企業価値には、企業が生み出す将来的な収益も含まれるため、想定していた以上の資金が必要になるケースもあるでしょう。
買収後に支払った分の利益を回収できるとは限らないため、買収する企業の選定は慎重に行うことが大切です。
M&Aを行う目的として、最も多く挙げられるのはシナジーの発揮であると考えられます。
買収後にシナジーを得られないことは、譲受企業にとって避けたい要件でしょう。
シナジーを得られない場合の原因は、事前調査の不足や社内システ厶の統合失敗などが挙げられます。
M&Aを行う際は、どこかに見落としている要素がないかを確認し、統合をするための事前準備を入念に行いましょう。
M&Aを成功させるためには、以下の3つのポイントを抑えることが大切です。
M&Aを成功させるための最も重要なポイントは、最適なマッチング相手を選定することです。
自社とのシナジーが発揮できることはもちろん、自社の弱みを補填できる特徴を持っていることや、企業文化が近しいことも、最適なマッチング相手を選ぶ基準になります。
それらの基準から最適なマッチング相手を決めるためにも、自社について把握しておくことは重要です。
自社にはどのような強みや弱みがあるのか、自社が抱えている課題はどのようなものが挙げられるのかを考えて、適切な相手企業を選びましょう。
適切なマッチング相手を見つけられた後でも、事前準備や交渉が適切に行えなければ成立するのは難しいでしょう。
譲渡企業は、譲受企業が自社に魅力を感じるように、強みなどを適切にアピールする必要があります。
譲受企業も、譲渡企業の思いが詰まった企業を譲り受けるということを忘れてはいけません。
また、買収後にリスクを抱えないためにも、譲渡企業の実態調査は適切に行いましょう。
マッチング後に適切なプロセスを踏むために、M&Aを実施する流れを把握しておくことも大切です。
M&Aが成立したからといって、すぐに安心してはいけません。
成立後には、企業を統合するためにさまざまなプロセスを進める必要があります。
企業の統合に失敗してしまうと、シナジーを発揮することができないため、M&Aによる恩恵を授かることができません。
M&Aによって利益を獲得するためにも、統合のプロセスについては相手企業と入念に話し合っておきましょう。
譲渡企業の売却価格を決めるためには、企業価値評価は重要なポイントとなります。
企業価値評価とは、所有する資産や将来性、市場での株価を元に企業の価値を算出することです。
算出した企業価値を元に、譲受企業と譲渡企業は交渉進めていきます。
企業価値の評価方法は、企業の将来性を元に算出する「インカムアプローチ」、企業の資産をベースに算出する「コストアプローチ」、株式市場などを参考にして算出する「マーケットアプローチ」の3種類に分けることができます。
それぞれの算出方法を把握して、適切な譲渡価格を把握しましょう。
また、企業価値評価について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!
インカムアプローチとは、企業が将来的に生み出すと予測される収益を予測して、企業の価値を算出する手法です。
将来生み出す価値を予測に使われるものは、企業のキャッシュフローや事業計画書、配当金など手法によって異なります。
M&Aでは企業の将来性が重要視されており、インカムアプローチは将来性も加味する評価方法であるため、使われる機会が多い手法です。
インカムアプローチによる算出方法は、主に以下の3つに分けることができます。
DCF法 (ディスカウントキャッシュフロー方式) | ・企業が将来生み出す利益を、自由に使える資金であるフリーキャッシュフローから推測し、現在価値に直して算出する方法 ・企業の将来性が計算に含まれていることから、合理的な算出方法であるといわれている ・将来性を加味することから、算出結果に主観が含まれてしまう恐れがある |
収益還元法 | ・事業計画書をべースとして、将来的に生み出す価値を算出する方法 ・事業計画書があれば算出できるため、目安となる評価額をスムーズに求めることができる ・企業の価値が一定のペースで上っていくと仮定するため、精度の高い算出結果は得られない |
配当還元法 | ・株主へ還元される配当金を元に企業価値を算出する方法 ・配当金が評価の基準となっているため、客観性に優れている ・配当金額が多い企業の場合は、必要以上に企業価値が高く算出されてしまう |
マーケットアプローチとは、市場での買収事例や株式の取引価格などを参考にして企業価値を算出する方法です。
市場での評価が価値の算出に組み込まれているため、客観性の高い算出結果を求めることが可能です。
また、上場企業の場合は、市場株価を把握することが容易であるため、素早く企業価値を算出することができます。
非上場企業の場合でも、類似企業が多い業種であれば、それを参考に企業価値を算出することもできる手法です。
ただし、株式市場の動きによって算出価格が大きく変動するため注意が必要です。
マーケットアプローチの種類には、主に以下の4つが存在します。
類似企業比較法 | ・類似した企業の株価などを参考にして企業価値を評価する方法 ・上場企業の評価額を参考にするため、情報が集めやすい ・類似の基準は選定者によって異なるため、評価額がブレやすい |
類似取引比較法 | ・類似した企業のM&A取引事例を参考にして評価する方法 ・取引事例を参考にするため、客観性の高い評価ができる ・類似企業の取引事例が見つからない場合は実施できない |
市場株価法 | ・直近1~6ヶ月の市場株価をベースにして平均した値から企業価値を評価する方法 ・客観性が高く公平な企業価値を評価できる ・市場価格を参考にするため、非上場企業は使用できない |
類似業種比較法 | ・譲渡企業と同じ業種の株価を参考にして評価する方法 ・他社の株価を参考にするため、譲渡企業の意思に左右されない ・企業の将来性が評価に反映されない |
コストアプローチとは、企業が所有している純資産をベースにして評価する方法です。
純資産を元に計算を行うため、他の手法と比較すると算出が容易でわかりやすいという特徴があります。
評価がブレにくく客観性の高いため、素早く企業価値を算出したい場合に有効な手段です。
ただし、コストアプローチによる企業価値評価には、将来性が計算に含まれていないというデメリットも存在します。
他の手法にもいえることですが、M&Aにおいて企業価値を評価する際は、他の評価方法と組み合わせて行いましょう。
コストアプローチの手法は、主に以下の2つが挙げられます。
簿価純資産法 | ・帳簿に記されている純資産を基準に企業価値を評価する方法 ・株価が不透明な中小企業でも客観性のある株価を算出できる ・時価ではないため、現状の企業価値は算出できない |
時価純資産法 | ・資産や負債を時価に直して企業価値を評価する方法 ・簿価純資産法とは異なり、現時点での企業価値を評価することができる ・企業の将来性は計算内容に含まれない |
M&Aを実施する際は、主に上記の流れで進めていきます。
M&Aをスムーズに進めるためにも、どのような手順で行うかを把握しておきましょう。
ここからは、M&Aの進め方について個別に紹介していきます。
M&Aを行う際には、事前にさまざまな準備を進めておきましょう。
事前に行う準備の項目は、主に以下のものが挙げられます。
また、企業価値評価を含めて、M&Aの実施には専門知識が必要不可欠です。
統合の際には法的な手続きも必要になるため、仲介会社などの専門家にサポートを依頼しましょう。
ACコンサルティングでは、着手金・月額報酬0円の成果報酬型でサポートを行っています。
M&Aの相談にも無料で対応しているので、お気軽にお問い合わせください。
事前準備が完了したら、M&Aを行うマッチング相手を選定しましょう。
譲渡企業がマッチング相手を探す際には、ノンネームシートを作成する必要があります。
ノンネームシートとは、企業名が特定されない範囲で情報をまとめた資料です。
仲介会社に依頼した場合、アドバイザーはノンネームシートを元に譲受企業を探すため、特定されない範囲で自社のアピールポイントを記載することが大切です。
また、譲受企業が自社に興味を示した場合は、秘密保持契約を結んで情報を開示します。
情報を開示して、両企業が話し合いを希望した場合はトップ面談に進みます。
トップ面談の際には、相手企業との信頼関係を築くことが大切です。
M&Aを進めていく場合は、長期にわたってやり取りを行うため、協力が必要になる場面が多数あります。
早期に信頼関係を築いておくことで、統合後のシナジーも最大限に発揮することが可能です。
M&Aを成功させるためにも、トップ面談の際には相手企業との相性を見極めましょう。
トップ面談後にM&Aを進めていく意思が固まったら、基本合意書の締結を行います。
基本合意書とは、買収価格やM&Aの手法、後ほど解説するデューデリジェンスを実施する権利などを項目として盛り込んだ書類です。
基本合意書は、双方がM&Aを進めていく意思を確認するための書類であるため、法的な拘束力はありません。
そのため、買収価格などは最終契約の締結時に変わる可能性があるので注意が必要です。
基本合意書を締結した後は、譲受企業は譲渡企業に対してデューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスとは企業監査のことであり、法務や税務などの観点から譲渡企業の調査を行い、買収するリクスがないかを確認する作業です。
デューデリジェンスの実施には専門的な知識が必要なため、仲介会社などに依頼して進めることになります。
また、デューデリジェンスの実施によって買収リスクが判明した場合、基本合意書で締結した買収価格が変わることもあります。
デューデリジェンスの実施が完了したら、最終契約の締結に進みます。
最終契約の内容は、基本合意書で締結した項目に、デューデリジェンスによって判明した情報を組み合わせて決めます。
従業員の労働条件などを含めて、両社が納得するような契約を結びましょう。
また、最終契約で結んだ内容は、基本合意書とは異なり法的な拘束力があります。
最終契約を締結したら、クロージングを実施します。
クロージングとは、最終契約で締結した内容に基づいて経営権などを譲渡する作業です。
クロージングが完了した後は、PMIという企業の統合効果を最大限に発揮するためのプロセスを進めていきます。
PMIを適切に実施することによって、統合後のシナジーを発揮し最大限の効果を得ることができます。
【関連記事】PMI(経営統合作業)とは?プロセスや成功・失敗事例などを解説!
M&A仲介会社に依頼する際には、主に下記の費用がかかります。
手数料の種類 | 目安となる相場 | 説明 |
相談料 | 0~1万円 | M&Aに関する相談を仲介会社にする際の費用 |
リテイナーフィー (月額報酬) | 0~100万円/月 | 仲介会社との契約後に毎月発生する費用 |
着手金 | 0~200万円 | 仲介会社と契約する際にかかる費用 |
中間報酬 | 50~200万 | 相手企業と基本合意契約を締結した際にかかる費用 |
成功報酬 | 取引価格に準ずる | M&Aが成立した際に仲介会社へ払う費用 |
最低報酬 | 500~2000万 | 成約時に発生する最低限の費用 |
デューデリジェンスの費用 | 50~200万 | 売り手企業を調査する際に発生する費用 |
その他報酬以外の費用 | 内容に準ずる | 企業価値評価や税金など報酬とは別で発生する費用 |
基本的に、発生する費用は取引価格が高いほど手数料も向上します。
仲介会社によって発生する費用は異なるため、依頼する際には事前に確認しておきましょう。
ACコンサルティングでは、手金・月額報酬0円の成果報酬型でサービスを提供しています。
また、仲介会社が行っているサービス内容や手数料について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
M&A仲介について解説!FAとの違い、サービス内容やメリットは?
譲受企業側は、企業を買収することで、事業領域の拡大や新規事業への参入などを図ることができます。
譲渡企業側に関しても、売却資金の獲得や後継者不足の解消といったメリットを獲得できます。
近年では中小企業の事業承継を目的としたM&Aが頻繁に行われており、今後も増えていくことでしょう。
M&Aを検討している方は、ぜひ一度ACコンサルティングにお問い合わせください。