薬局の売却について解説!メリットや相場、M&A事例なども紹介

投稿日:2022/08/26

更新日:2022/09/26

現在、薬局業界では事業の売却が頻繁に行われています。

売却事例が増えている背景には、薬剤師の不足や店舗数の増加などの要因が挙げられます。

反対に、買収を希望する企業の数も増えていることから、今後も薬局の売却事例は増加していくでしょう。

この記事では、薬局業界の現状・売却のタイミング・売却相場・高く売る方法などを紹介していきます。

目次

薬局の売却について

薬局とは、薬剤師が常駐し、処方箋に基づいて医療医薬品などの販売・受け渡しを行っている事業所を指します。

ここでは、薬局の売却について解説していきます。

赤字でも売却できることがある

個人経営の薬局の場合、さまざまな要因から利益が充分に出でおらず、赤字経営を行っていることも少なくないでしょう。

しかし、薬局の売却は、赤字経営を行っていても売却できるケースがあります。

薬局が赤字経営になる理由には、薬剤師の人材不足や設備の導入不足などが挙げられます。

大手薬局の場合、それらを解消するための資金力があるため、赤字経営からの脱却を図ることが可能です。

つまり、薬局は赤字経営を行っている場合でも、状況によっては充分な利益を挙げられることから、経営状況に関わらず一定のニーズがあります。

また、買い手企業は調剤基本料が高い薬局を求めている傾向があるため、需要がマッチしていれば、売却できる確率も高まるでしょう。

薬局の売却を検討している際は、買い手にアピールできるポイントを見つけることも大切です。

薬局の買収事例は増えている

買い手企業側は薬局を買収することによって、店舗数の拡大や薬剤師の獲得などの恩恵を得ることができます。

そのような理由から、薬局業界では大手企業による小規模薬局の買収事例が増え続けています。

また、薬局の売却を希望している経営者が増えていることも、買収事例が増えている一つの要因といえるでしょう。

売却を希望する薬局が増えている理由には、経営者の高齢化などの理由が挙げられます。

経営者が高齢になったことにより経営が難しくなった場合、自社を売却することで後継者を確保することが可能です。

売却・買収を希望する企業がどちらも増えていることが、事例が増えている要因であると考えられます。

薬局の現状

薬局を運営するためには、薬剤師の存在が必要不可欠です。

しかし、薬剤師の資格を得るためには時間がかかることから、人材不足に陥っているという傾向があります。

加えて、店舗数は年々増加し続けていることから、新規参入が難しい業界であるといえるでしょう。

ここからは、薬局業界の現状について解説していきます。

薬剤師の確保が難しい

薬局の経営規模を拡大するためには、薬剤師をより多く確保する必要があります。

しかし、薬剤師になるためには、6年制の薬学大学に通い、国家試験に合格しなければいけません。

薬剤師として働くためには多大な時間を要するため、新たに有資格者を獲得することは困難であるといえるでしょう。

そのため、中小規模の薬局などでは、薬剤師が不足していることにより規模の拡大ができないというケースが多く見られます。

また、事務などを行うスタッフは充分に確保していても、承継できる相手がいないという薬局が多いことも課題の一つです。

通常の中小企業は、息子などに事業を承継するといったケースが一般的です。

同じように薬局を承継しようとした場合、息子を薬学部に入学させて、資格を獲得してもらう必要があります。

息子自身が薬剤師になることを希望していないことも考えられるため、他業界よりも事業承継が難しい業界であるともいえるでしょう。

店舗数は飽和状態 大手への参入がカギ

現在、薬局の店舗数は、全国で約60,000件存在しています。

この店舗数は、国内にあるコンビニの店舗数を上回る値であり、飽和状態であるといえるでしょう。

高齢化により薬局の需要は高まっていますが、店舗数を増やし利益の拡大を図ることは容易ではありません。

そのため、大手の薬局チェーンなどは、買収による利益の拡大を目指すケースが多く見られています。

また、店舗数の多さから薬局業界の競争は激化しており、中小規模の薬局が経営を安定させることは困難であるいえるでしょう。

中小規模の薬局は、競争力を高めるために大手チェーンに売却をして、生存を図る事例も増えてきています。

傘下に加わることで、資金援助による収益増加や、スケールメリットの獲得によって競争力の向上を図ることが可能です。

大手チェーンによる中小規模の薬局の売却事例は、今後も増えていくことが予測できます。

薬局の売却を検討するタイミング

以下のような状況が続いている場合は、薬局の売却を一度検討してもよいでしょう。

【薬局の売却を検討するタイミング】

  • 1.薬局事業の採算が取れていないとき
  • 2.一部の薬局に採算が取れていないとき
  • 3.人材が不足しているとき
  • 4.廃業を検討しているとき
  • 5.後継者がいないとき

1.薬局事業の採算が取れていないとき

1つ目は、事業を複数行っている状態で、薬局事業の採算が取れていないタイミングです。

会社を売却する手法にはさまざまな種類があり、その中の一つに「事業譲渡」というものがあります。

事業譲渡とは、事業の一部または全てを買い手側に承継するM&A手法の一つです。

自社がさまざまな事業を行っている状態で、薬局事業のみが利益を挙げられていない場合、切り離して売却することを検討してもよいでしょう。

利益が見込まれない事業を売却することで、収益が出ている事業に資金や人材を回すことが可能です。

事業を売却しても会社は存続し続けるため、事業の集中化を図りたい場合に有効な手段であるといえるでしょう。

【関連記事】事業譲渡とは?メリット・デメリット、相場や事例などを解説!

2.一部エリアの薬局の採算が取れていないとき

2つ目は、複数のエリアで薬局事業を行っていた場合に、特定エリアの薬局事業のみ収益が出ていないタイミングです。

上記で解説した事業譲渡では、自社が行っている事業のうち一部を売却することが可能です。

そのため、特定地域で行っている薬局事業のみを売却することもできます。

採算が取れていない地域の薬局を売却することで、他の地域の薬局事業に資源を回せば、収益の拡大を図ることもできるでしょう。

3.人材が不足しているとき

3つ目は、人材不足によって薬局の経営が難しくなっているタイミングです。

薬局を運営するためには薬剤師の存在が必要不可欠ですが、資格を有している人材を確保することが難しいでしょう。

薬剤師一人あたりが受領できる処方箋の枚数には限りがあるため、人材不足が継続していると収益を充分に増やすことができません。

人材不足によって経営が困難になっている場合は、薬局の売却を一度検討してもよいでしょう。

4.廃業を検討しているとき

4つ目は、さまざまな理由により廃業を検討しているタイミングです。

通常、薬局を廃業する際には、テナントの回復費用や資材の撤去費用などが発生します。

薬局に規模によって撤去費用は異なりますが、中には百万円以上かかるケースも見られています。

廃業時にかかる費用を抑えたい場合、事業の売却は有効な手段であるといえるでしょう。

薬局を売却すれば、テナントや資材は買い手へと引き継がれます。

加えて、薬局の価値に応じた資金を獲得できるため、金銭的な負担を大きく抑えることが可能です。

事業の売却には廃業と比較すると多くのメリットがあるので、買収を希望する相手がいないかを探しましょう。

5.後継者がいないとき

5つ目は、年齢の問題などにより引退を検討しているが、薬局を引き継ぐ後継者がいないタイミングです。

薬局を承継するためには、承継者が薬剤師の資格を有している必要があります。

しかし、従業員の中に資格を持っていて承継を希望している相手がいるとは限りません。

薬局業界では、一般的な中小企業のように親族内で承継できないこともあるでしょう。

薬局を承継する相手がいない場合は、事業売却によって第三者に引き継ぐことで解決できます。

第三者が薬局を引き継ぐことで、廃業することなく経営を続けることができます。

地域に根づいて経営を行っている薬局は、廃業することによって近隣住民に迷惑がかかると考えて、事業を続けているケースもあるでしょう。

そのような負担を解消できることも、事業売却をするメリットの一つです。

薬局の売却相場

薬局の売却価格は、保有している資産や利益などを基準にして算出されます。

それらの値は薬局の規模によって大きく異なるため、業界全体での相場を一概に決めることができません。

しかし、自身が経営している薬局を売却する際の目安は、以下の基準をもとに算出することができます。

時価純資産額や営業利益

中小企業の売却時には、多くの場合「時価純資産額に2~5年分の営業利益を足した金額」が売却価格の目安になります。

時価純資産額とは、自社が抱えている時価資産から、時価負債を引いて算出した値です。

営業利益とは、売上高から原価や販売費を引いた値で、本業で稼いだ利益のことを指します。

基本的には、この算出方法によって求めた値をベースにして売却価格の算定を行います。

調剤技術料や処方箋応需枚数

薬局業界では、調剤技術料や処方箋応需枚数を基準にして売却価格を算出するケースも見られます。

これは、調剤技術料と処方箋応需枚数をかけ合わせれば、目安となる売上を把握できるためです。

自社の売却価格の目安を知りたい場合は、それらを基準に算出してみましょう。

薬局の売却価格を求める方法

上記にて、価格の目安を求める方法を紹介してきました。

しかし、実際の売却価格は、さまざまな企業価値の評価方法を組みわせて算出した値を基準に、買い手との交渉によって決められます。

企業価値の評価方法は、主に「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」「コストアプローチ」の3つに分類することが可能です。

ここからは、基準となる売却価格を求める際に使用される、企業価値の評価方法について解説していきます。

【関連記事】M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)とは? 種類やメリットも解説!

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、事業によって生み出される将来的なキャッシュフローを予測し、それを指標として企業価値を算出する手法です。

インカムアプローチは、企業の買収・売却において重要視されている企業の将来性が加味されているというのが特徴です。

ただし、将来性という不確実なものを基準にするため、算定者によって値に幅が出やすいというデメリットも存在しています。

インカムアプローチの方法は、主に以下の3つが挙げられます。

DCF法将来的に生み出す利益から買収リスクを差し引いて評価を行う手法
収益還元法企業が一定のペースで成長すると仮定して評価を行う手法
配当還元法将来的な株式の配当金を予測し評価を行う手法

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、株価や市場での取引事例などを基準に企業価値の評価を行う手法です。

マーケットアプローチは市場を基準とするため、客観性が高く誰でも容易に評価ができるというメリットがあります。

しかし、市場環境に大きく影響されることから、値が変動しやすいというデメリットも存在します。

マーケットアプローチによる評価方法は、主に以下の3つが挙げられます。

類似企業比較法類似している企業の株価をもとに評価を行う方法
類似取引比較法類似している企業の取引事例をもとに評価を行う方法
市場株価法市場で公開されている株価をもとに評価を行う方法

コストアプローチ

コストアプローチは、企業が所有している資産などを基準にして企業価値評価を行う手法です。

純資産をベースに算出されるため、マーケットアプローチと同じく客観性の高い算出方法であるといえるでしょう。

ただし、企業の将来性は計算内容に含まれないというデメリットも存在します。

コストアプローチによる評価方法は、主に以下の2つが挙げられます。

簿価純資産法帳簿に記載されている純資産をベースに評価を行う手法
時価純資産法純資産を時価に直して評価を行う手法

薬局を高値で売却する方法

薬局を高値で売却したいと考えている場合は、以下のポイントを抑えておきましょう。

【薬局を高値で売却する方法】

  • 1.近隣住民からの評判を高める
  • 2.多くの薬剤師を雇用しておく
  • 3.経営状況を把握しておく
  • 4.売却による離職を防ぐ
  • 5.市場環境を把握しておく
  • 6.専門家に相談する

1.近隣住民からの評判を高める

地域密着型の薬局を運営している場合は、固定客の多さが収益を決める大きな要素です。

近隣住民からの評判が高ければ、固定客の増加に繋がる上に、買い手企業からの印象も高まるでしょう。

また、企業価値を評価する際には、将来的に見込まれる収益も評価基準に含まれています。

継続して収益を挙げられることが買い手企業に伝われば、相場以上で薬局を売却できる可能性が高まります。

薬局の評判を高めるためにも、日頃から顧客の対応方法を見直し、印象が良くなる環境作りを行うことが大切です。

2.多くの薬剤師を雇用しておく

薬局業界では、薬剤師の資格を持った人材の不足が問題視されています。

企業の買収は人材不足の解消を目的として行われることもあるため、薬剤師の雇用人数が多ければ、売却価格も高まるでしょう。

しかし、大手企業も薬剤師不足に困っている環境では、薬剤師を確保することは容易ではありません。

薬局を高く売りたいと考えている際には、薬剤師の募集を早期のうちから始めておくことが重要です。

また、自身が運営している薬局の収益が充分に出ていなくても、薬剤師をより多く雇用していれば、売却できる確率も増えるでしょう。

3.経営状況を把握しておく

事業を売却する際には、買い手企業との交渉を行うフェーズがあります。

自社の経営状況を把握していなければ、買い手企業との交渉を充分に行うことは難しくなるでしょう。

交渉時に不利な立場にならないためにも、経営環境を把握して資料を作成しておくことも大切です。

また、経営状況をまとめる際には、他の薬局と比較してどのような強みが有るのかを探すことも、高く売るために重要なポイントです。

独自の強みを買い手企業にアピールできれば、相場以上の価格でも買収を希望するかもしれません。

自社を高く売りたいと考えている際には、第三者の目線に立ち、適切な分析を行いましょう。

4.売却による離職を防ぐ

企業の買収は、人材の獲得を目的として行われるケースがあります。

薬局を売却することに対して従業員が不安を感じた場合、離職を招いてしまうこともあるでしょう。

売却によって人材がいなくなってしまうと、売却価格が大きく低下することも考えられます。

スタッフや薬剤師を含めて、買収をきっかけに離職をしないように対策を行うことも大切です。

従業員に不安を感じさせないためにも、薬局の売却を検討していることは直前まで秘密にしておきましょう。

薬局を売却することを伝えるのは、売却することが確定したタイミングがベストです。

売却を行う目的や、従業員側に生じるメリットなどを正確に伝えることで、離職を招く確率は下げられるでしょう。

5.市場環境を把握しておく

薬局を高く売却したい際には、市場環境などを把握しておきましょう。

法改正などによって薬局業界の利益が大きく低下すると予測されている場合は、本来よりも売却価格が安く算定される恐れがあります。

買収を希望する企業が少ない状態では、売り手の数のみが増え続けるため、買い手が現れる可能性も低下します。

将来的に薬局を売却する可能性があるならば、市場環境はこまめにチェックしておくことで、より高く売却できる可能性が高まるでしょう。

6.専門家に相談する

薬局を売却する際には、法的な知識なども必要になるため、個人で進めることは容易ではありません。

手続きに不備があった場合、売却・買収の取引自体が破談になる恐れがあるため、M&A仲介会社などの専門家に依頼することをオススメします。

また、自社を売却する際には、企業価値の評価を正しく行う必要があります。

自社の価値を安く算出してしまった場合、相場以下の価格で薬局を売却することになるでしょう。

反対に、相場よりも高く見積もってしまった際は、買収を希望する企業が現れにくくなります。

そのようなリスクを回避するためにも、企業価値の算定も含めて専門家に依頼しましょう。

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薬局を売却する時の流れ

薬局を売却する際には、主に以下の流れで進めていきます。

【薬局を売却する時の流れ】

  • 1.M&A仲介会社などに依頼する
  • 2.秘密保持契約を結びトップ面談を実施
  • 3.基本合意契約の締結
  • 4.デューデリジェンスの実施
  • 5.最終契約の締結
  • 6.クロージング
  • 7.PMI

【関連記事】M&Aの流れ・フローを解説!スケジュールや確認事項は?

1.M&A仲介会社などに依頼する

まず最初は、M&A仲介会社などの専門家に売却のサポートを依頼しましょう。

M&A仲介会社には、事業売却に関する豊富な知識を有したスタッフが在籍しているため、一貫してサポートを受けることが可能です。

仲介会社は多くの企業との繋がりがあるので、買い手企業の選定も依頼することができます。

売却時には必要な手続きも多岐にわたるため、売却を始めて行う際には仲介会社などの専門家に依頼することをおすすめします。

また、買い手企業を探す際には、企業名が特定されない範囲の情報を記載した「ノンネームシート」を使用して行います。

ノンネームシートを作成する理由は、売却を検討していることが外部に広まることを回避するためです。

売却を検討していることが顧客などに広まった場合、経営がうまく行っていないというイメージを抱かれて、固定客を失う恐れがあります。

従業員に広まった場合は、将来性が無いと捉えられて離職してしまうといったこともあるでしょう。

そのような不利益を回避するために、ノンネームシートを作成して買い手企業の選定を行います。

2.秘密保持契約を結びトップ面談を実施

買い手企業がノンネームシートの内容に興味を示した場合は、秘密保持契約を結び情報を開示します。

秘密保持契約とは秘密事項の取り扱いに関する契約であり、主に情報の漏洩を抑止することを目的として締結されます。

秘密保持契約を締結した後は、経営者同士の顔合わせであるトップ面談に進みましょう。

トップ面談では、買い手側の経営者と信頼関係を結ぶことが大切です。

交渉がスムーズに進んでいった場合は、相手企業の経営者と長く関わっていくことになります。

交渉が進んだ段階ですれ違いを生じさせないためにも、誠実な態度でトップ面談を行い、信頼関係をきついでいきましょう。

【関連記事】M&Aの秘密保持契約(NDA)とは?目的や記載項目などを解説

3.基本合意書の締結

トップ面談後に両企業が取引を進めていく意思を持った場合は、基本合意書の締結に進みます。

基本合意書とは、取引を進めていくことに関して同意していることを示すための書類です。

基本合意書の内容には、買収価格や取引の手法などが含まれています。

注意点として、基本合意書には、一部の内容を除き法的な拘束力がありません。

そのため、基本合意書に記載されている内容は、後述するデューデリジェンスの結果次第では変更される可能性があります。

4.デューデリジェンスの実施

基本合意書の締結が完了したら、デューデリジェンスの実施に移ります。

デューデリジェンスとは企業の内部監査のことを指しており、買い手企業側が売り手企業側に対して行う調査です。

買い手企業側は、デューデリジェンスによって把握できていない負債や訴訟リスクの有無などを確認します。

このような問題点を把握できていなかった場合は、買い手側が買収後に想定外の不利益を承継する恐れがあります。

買収に対するリスクを抑えるために、デューデリジェンスは実施されます。

【関連記事】デューデリジェンスとは?目的や種類、流れや費用などを解説

5.最終契約の締結

デューデリジェンスが完了した後は、再度交渉を行い最終契約の締結に移ります。

デューデリジェンスによって買収リスクが見つからなかった場合は、基本合意書の内容を基準に取引を進めていきます。

従業員の雇用についても、最終契約の締結前に話し合っておきましょう。

また、仮にデューデリジェンスによって買収リスクが発覚した際には、買収価格の調整や取引手法の変更などによって調整をします。

万が一リスクが大きすぎた場合には取引が中止になることもあるため、売り手側は事前に自社の情報を把握しておきましょう。

交渉によって取引が成立した場合は、最終契約を締結します。

6.クロージング

最終契約の締結が完了した後は、クロージングに進んでいきます。

クロージングとは、最終契約の内容に基づいて、経営権の移転や対価の支払いなどを進めていくことです。

クロージングの方法は、スキームと呼ばれる取引の手法によって異なるため、多くの場合は専門家にサポートを受けながら進めていきます。

選択した手法に合わせて、適切にクロージングを進めていきましょう。

【関連記事】M&Aのクロージングとは 手続きや流れ、必要書類などを解説!

7.PMI

統合によるシナジーを最大限に発揮するためには、経営統合プロセスである「PMI」を入念に行う必要があります。

統合後にPMIが不十分だった場合は、利益の低下を招く可能性もあるため注意しましょう。

PMIでは、主に「経営体制」「経営システム」「組織編成」「社内文化」などを統合していきます。

早期のうちからPMIについて話し合いを進めていき、スムーズに経営を行えるように環境を整えておきましょう。

【関連記事】PMI(経営統合作業)とは?プロセスや成功・失敗事例などを解説!

薬局の売却事例

薬局の売却について知識を深めるためにも、実際にどのような取引事例があったのかを把握しておきましょう。

ここでは、薬局の売却・買収事例を5つ紹介していきます。

【薬局の売却事例】

  • 1.ソフィアホールディングスによるわかば薬局の孫会社化
  • 2.メディカルシステムネットワークによる永冨調剤薬局の子会社化
  • 3.ツルハホールディングスによる杏林堂グループ・ホールディングスの子会社化
  • 4.キリン堂ホールディングスによるメディスンショップ・ジャパンの孫会社化
  • 5.アインホールディングスによる葵調剤の子会社化

1.ソフィアホールディングスによるわかば薬局の孫会社化

2019年、ソフィアホールディングスの子会社であるルナ調剤株式会社は、わかば薬局の株式を取得し子会社化することを発表しました。

ルナ調剤は、調剤薬局の運営や薬剤師の派遣などを手掛けている企業です。

わかば薬局の子会社化によって、調剤薬局事業の拡大を図りました。

取得価額の総額は約9200万円です。

2.メディカルシステムネットワークによる永冨調剤薬局の子会社化

2018年、調剤薬局の運営などを手掛けている株式会社メディカルシステムネットワークは、永冨調剤薬局の全株式を取得し子会社化することを発表しました。

永冨調剤薬局は、大分県に調剤薬局を23店舗展開している企業です。

メディカルシステムネットワークは、株式の取得によって、より質の高い地域薬局作りを図りました。

取得価額の総額は34億9400万円です。

3.ツルハホールディングスによる杏林堂グループ・ホールディングスの子会社化

2017年、ドラックストア運営企業を傘下に持つ株式会社ツルハホールディングスは、株式会社杏林堂グループ・ホールディングスを子会社化することを発表しました。

杏林堂グループ・ホールディングスの子会社である杏林堂薬局は、静岡県を中心に調剤薬局を運営している企業です。

ツルハホールディングスは、杏林堂グループの子会社化によって、ドラックストア事業及び調剤薬局事業のシナジー発揮を図りました。

4.キリン堂ホールディングスによるメディスンショップ・ジャパンの孫会社化

2017年、キリン堂ホールディングスの子会社である株式会社キリン堂は、メディスンショップ・ジャパン株式会社の株式を取得し子会社化することを発表しました。

メディスンショップ・ジャパンは、調剤薬局であるメディスンショップをフランチャイズ展開している企業です。

株式の取得によって、キリン堂グループは調剤薬局のフランチャイズ事業に関してさらなる飛躍を目指しました。

該当企業の取得価額は1億円です。

5.アインホールディングスによる葵調剤の子会社化

2016年、調剤薬局などのチェーン店舗を運営している株式会社アインホールディングスは、株式会社葵調剤の全株式を取得し子会社化することを発表しました。

葵調剤は、調剤薬局115店舗を全国展開している大手企業です。

アインホールディングスは、株式の取得によって調剤薬局の店舗数拡大及びサービスの拡充を図りました。

取得価額の総額は53億9600万円です。

まとめ

調剤薬局の店舗数は全国で約60,000件も存在しており、飽和状態であるといえるでしょう。

大手調剤薬局会社は、中小規模の薬局を買収することで事業エリアの拡大を図るケースが多く見られています。

後継者不足に悩む薬局が増えていることから、今後も売却事例は増え続けることが予測できます。

また、薬局を高く売却したい際には、以下のポイントを抑えておきましょう。

  • 1.近隣住民からの評判を高める
  • 2.多くの薬剤師を雇用しておく
  • 3.経営状況を把握しておく
  • 4.売却による離職を防ぐ
  • 5.市場環境を把握しておく
  • 6.専門家に相談する

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